香取慎吾『東京SNG』とOfficial髭男dism、GWはスウィングウィークだ【月刊レコード大賞】
今月、いちばん聴いたアルバムは香取慎吾『東京SNG』でした。
と書いて、自分でも久々に書くフレーズだなぁと思ったりもします。「いちばん聴いたアルバム」って。
そうです。サブスクリプションの時代になってから、聴き方が楽曲単位になり、つまり、アルバムを頭から終わりまで通して聴くことがなくなってきたのです。
しかし『東京SNG』は、通して聴きたくなる。なぜかというと、全曲を一気通貫するコンセプトがしっかりしているから。
「タキシードが似合う音楽」――いくつかの記事によれば、これが『東京SNG』のコンセプト。「タキシードが似合うジャズ」という表記も見かけますが、意味するところは変わらないでしょう。
「コンセプトアルバム」という言葉は懐かしい。ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(1967年)あたりから世界的潮流となった、(曲の寄せ集めではなく)「アルバム全体をひとつの作品とする」という考え方。
『東京SNG』は、久々の傑作コンセプトアルバムという感じがします。ちなみに「SNG」には「SONG、SING、SWING、SHINGO」という4つの意味が込められているとのこと。
というわけで、この香取慎吾『東京SNG』というアルバムが今月の「月刊レコード大賞」。とりあえず、まずは聴いてみましょうか。
『東京SNG』
作詞・作曲:Hiroaki Yamashita・Shutoku Mukai・Shingo
『シンゴペーション(feat. Gentle Forest Jazz Band)』
作詞・作曲:Motoi Murakami・Gentle Kubota・Shingo
『Happy BBB (feat. 田島貴男)』
作詞・作曲:Takao Tajima・Naruhiro Gompa・Shingo
いかがでしょうか。スウィングのリズムと管楽器の音が、理屈抜きに気持ちいいと感じませんか?
私も50を超えて、長く音楽を聴いていることになりますが、この時代、つまり平成のデジタル・打ち込み全盛時代を超えた令和の今、アナログなスウィングと管楽器が、とても気持ちよく感じるのです。
ちょっとだけ理屈っぽい説明をすれば、Jポップでメインとなるエイトビートとは、8分音符が並ぶ「タ・タ・タ・タ」というリズム。スウィングとは8分音符の2つ分と1つが交互に出てくる「タッタ・タッタ」というリズム。
つまりエイトビートに比べてスウィングは、その名の通りリズム自体に「揺らぎ」があって、その分、人間的で肉体的なリズムと言えるのですが、そのあたりが、デジタル・打ち込み全盛時代の反動で、気持ちよく感じるのではないでしょうか。
そういえば、「複雑な世界を切り開く高速スウィングジャズナンバー」と銘打たれたOfficial髭男dismのこの曲にも驚きました。
『ミックスナッツ』
(作詞・作曲:藤原聡)
この「月刊レコード大賞」の2月度に取り上げた米津玄師『POP SONG』もスウィング系のリズム。これはもしかしたら「スウィング・ブーム」が来ているのかもしれません。もし、そんなものが日本で盛り上がったなら、それは1950年代以来ということになりますが……どうでしょうか。
今回は欲張って、もう1曲。Adoのこの歌、この歌唱力にも驚きましたね。
『永遠のあくる日』
(作詞・作曲:てにをは)
音程の高低、声量の大小の使い分けが素晴らしい。シニア的な発言をすれば「令和の岩崎宏美」という感じがします。岩崎宏美77年の名曲『思秋期』(作詞:阿久悠、作曲:三木たかし)をカバーしてくれないかしら。
今年は豊作な気がしてきました。皆さんもスウィングしながらいい休暇をお過ごしください。