「源泉掛け流し」の問題点を知っていますか?
記事を開いてくださりありがとうございます。温泉バカひかさでございます!
さて、今回は「源泉掛け流し」の問題点というテーマになります。もし源泉掛け流しってなんですか?という方はぜひ以下の記事をご覧ください!
前回の記事はこちら!
よく聞く「源泉掛け流し」って結局なに?
前回の記事をご覧いただいた皆様は、「えっ!源泉掛け流し100%が絶対いいでしょ!」と思われた方も多いかと思いますので、今回のタイトルを見て驚かれた方もいらっしゃると思います。
源泉掛け流しの定義
前回の記事で源泉掛け流しはこんな定義で覚えておくといいですよとお話ししました。
源泉掛け流し
「源泉をそのまま湯船に流し、循環ろ過せず溢れたものは流していること。」
源泉掛け流し100%
「源泉をそのまま湯船に流し、加水や加温、入浴剤の使用をせず、循環ろ過せず溢れたものは流していること。」
特に源泉掛け流し100%の定義をご覧いただくとわかると思いますが、非常に厳しい条件になっています。この条件を満たす温泉がどの程度あるのか。そこをぜひ考えていただきたく思います。
問題点① 提供できる温泉施設が減少する(温度編)
もし源泉掛け流し100%の温泉だけを存在させるとすると、確実に温泉施設が減り、かつ温泉地も多くが潰れることになるでしょう。その理由を「温度」の視点と「湧出量」の視点で考えていきます。まずは温度編です。
温泉法では温泉は「冷たいもの」もOK!
考えるにあたって温泉の定義を考えていただくと良いと思います。温泉の定義は温泉法第2条に定められています。
温泉法第二条
この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。
別表
一 温度(温泉源から採取されるときの温度とする。) 摂氏二十五度以上
二 物質(左に掲げるもののうち、いづれか一)
(以下、略)
ご覧ください!温泉は「別表に掲げる温度又は物質を有するもの」とされています。この定義から考えられるのは次のことです。
①物質は含んでいなくても温度が25度以上なら温泉
②温度は25度未満でも、物質を含んでいれば温泉
ということが言えるのです。
つまり、温泉はどれだけ冷たくても物質を含んでいれば温泉として認められるのです。
問題点はこれ!
温泉は冷たくてもOK、熱さについても規定がないのでどれだけ高温でもOKということになります。しかし、その中で一切の加水・加温をせずに人間が入浴できる温度で温泉が沸いていないと「源泉掛け流し100%」は実現しないのです。
水風呂として使用するならまだしも、温泉を求めてくる人のためにはやはり39度〜45度あたりで提供するのが理想です。したがって、このくらいの温度で湧き出ていない場所では加水か加温をしなければ提供できないのです。
問題点② 提供できる温泉施設が減少する(湧出量編)
さて、次は湧出量編です。そもそも湧出量とは、温泉が湧いている量のことになります。この視点からも問題が発生するのです。
循環・ろ過をする理由
源泉掛け流しの話で散々出てきました「循環、ろ過」。これをしなくても良い条件とはどのようなものなのでしょうか。
これは単純な話です。皆さんのお家にある洗濯機の例で考えてみましょう。よく湯船のお湯をそのまま洗濯に再利用される方がいらっしゃると思います。これは一つの節水術ですよね。しかし、水が一生なくなることはありません!と言われたらこの手段を取るでしょうか?普通に新しい水を使って洗濯をするのではないでしょうか。
これと同じ考え方です。温泉が湧く量が多ければ、捨ててもまた次の新しい温泉がすぐ入ってくるのでいいですが、温泉が湧く量が少なければ再利用しないと温泉施設は湯船にお湯を溜め続けることができないということになるのです。
問題点はこれ!
循環・ろ過については、湧出量が関係していることをお伝えしました。しかし、湧出量が十分にないと源泉掛け流しは実現しないということです。湧出量が多いというのは火山性の温泉であれば見込まれますが、非火山性(海洋性など)は相当厳しい条件になってしまいます。
問題点③ 成分が強すぎて体に影響が出過ぎる
最初にお伝えしておきます。日本にそんな温泉は数えられるほどしかないと思います。ですが、現実に面白い理由で加水をしている温泉地・施設があるのです。
それが玉川温泉です。
玉川温泉とは
秋田県にある湯治を目的とした温泉地です。施設としては「玉川温泉」と「新玉川温泉」に2つがありますが、この2つともは温泉好きからも評価は高く、湯治を目的とする訪問者や滞在者も数多い有名な温泉地です。
しかし、ほとんどの浴槽では「加水」をしています。源泉掛け流し100%出ないといけないのであれば、この温泉地はNGですよね。
玉川温泉で加水をしないといけない理由
実は、玉川温泉特有の加水理由があります。それは「酸性が強いため」です。
僕の知る中では日本で最も酸性である(pH値が低い)温泉で、pH値は1.13と驚愕する酸性泉です。源泉100%だと少しの切り傷があるとヒリヒリが止まらず、1分も入浴できないレベルです。僕は髭剃りの少し切れた部分に強い痛みを感じました。人によっては体全体が痛痒くなるかもしれません。
ちなみに玉川温泉は飲泉もできますが、水で相当薄めないと法令上で飲んではいけない酸性度になるようです。飲んだ後もうがいをすることというルールが書いてありました。
そのくらい体への影響が強い温泉なのです。
玉川温泉の対策
「玉川温泉」「新玉川温泉」両方とも源泉100%の加水なしの浴槽と源泉50%に薄めた浴槽があり、後者がほとんどを占めるものの、両方をしっかり用意してくださっています。
また、各施設それぞれ50%と100%両方を使った入浴法を提示されており、かつ、入浴に関する相談をすることもできる状態です。
玉川温泉はダメなのか?
これだけ温泉の成分としてはとても良い状態かつ湯治にもとても良いわけですが、源泉掛け流し100%だと半分以上の浴槽はダメということになります。もちろんこだわりはいいのですが、このような特殊な理由がある場所もあるということはぜひ知っておいてほしいと思います。
最後に
ということで、問題点を3つ(ほぼ2つ)挙げました。まとめますと
・加水なし
・加温なし
・入浴剤使用なし
・循環せず
・ろ過せず
・消毒せず
・成分が強すぎない
というような超好条件を満たす温泉が源泉掛け流し100%となります。
もちろん、このような温泉である方が好ましいのは事実ですが、源泉掛け流しじゃなければ温泉としてダメということではないかと思います。
好みなところではありますが、温泉が源泉掛け流し100%じゃないからといってがっかりするのではなく、その温泉の良さの方にぜひ注目していただきたく思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました!