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血液型と新型コロナとの関係 O型の人は感染しにくく重症化しにくい?

忽那賢志感染症専門医
(写真:ロイター/アフロ)

感染症と血液型との関連はこれまでも議論がなされてきました。

新型コロナウイルス感染症と血液型の関係についても複数の研究が報告されています。

新型コロナと血液型に関する、現時点でのエビデンスをご紹介します。

感染症と血液型との関係

日本では血液型と性格との関連がよく言われます。

私はB型ですが、そのことを伝えると「ああーやっぱりねー」とよく言われます。「いや、何がやっぱりなんだよッ!」って思いますけどね。だって血液型によって性格が違うわけないじゃないですか。

テレビとかでも「血液型占い」とかあって、私なんかは「血液型で運命が変わるっていうエビデンスがあんのかよッ!?」と斜に構えて見てしまいます。

だって血液型って単に赤血球の表面の糖鎖っていう糖が鎖状に繋がったものの構造の違いであって、そんなもので性格やら運命やらが変わるわけないじゃないですか。

血液型ごとの糖鎖の構造の違い(Wikipediaより)
血液型ごとの糖鎖の構造の違い(Wikipediaより)

しかし、血液型によって感染のリスクが異なるということが様々な感染症で科学的に示されています。

これまでに、

ということが分かっており、血液型と関連のある感染症が複数見つかっています。

では、新型コロナと血液型との関係はどうでしょうか。

新型コロナと血液型との関係

新型コロナウイルスと同じコロナウイルスであるSARSコロナウイルスは、2005年の時点で血液型との関連が報告されています。

SARS(重症急性呼吸器症候群)の患者に濃厚接触した医療従事者45人のうち、34人がSARSに感染していましたが、O型の人はSARSに感染するリスクが低かった、というものです。

SARSの流行から15年以上の時を経て、今度は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と血液型との検討が行われています。

中国の武漢と深センの3つの病院の新型コロナ患者2173人のABO血液型の分布と、武漢・深セン地域の一般人口の分布と比較したところ、O型の血液型の人は新型コロナに感染するリスクが低く、A型の人はリスクが高いことを報告しています。

デンマークの新型コロナ感染者と一般人口における血液型分布の比較(Blood Adv (2020) 4 (20): 4990-4993.)
デンマークの新型コロナ感染者と一般人口における血液型分布の比較(Blood Adv (2020) 4 (20): 4990-4993.)

これをさらに大規模に検証したのがデンマークの研究です。

デンマークで新型コロナに感染した7422人の血液型の分布を、デンマークの非感染者2204742人(デンマークの人口の38%を占める)の血液型の分布と比較したところ、O型の感染者が少なかった、という報告です。

デンマークではもともとO型の人が多く、比較対象の非感染者の42%がO型であったのに対して、新型コロナ感染者のO型の人は38%であったということです。

「4%しか違わないじゃないか!」と思われるかと思いますが、そうです、O型の人が感染しにくいと言っても、これくらいの差なのです。

血液型と重症化リスク

重症化するリスクに関する検証も行われています。

イタリアとスペインの重症新型コロナ患者1610人と健康な血液提供者2205人の遺伝子情報を比較した研究結果が報告されており、ヒトゲノムの2つの領域の遺伝子変異が重症化と関連しており、それによって死亡するリスクが高いことを報告しています。

この重症化に関わる遺伝子が血液型の決定に関与することがあり、この研究では、他の血液型の人と比較して、A型の人は感染すると重症化リスクが45%高く、O型の人は35%リスクが低かったとのことです。

カナダのバンクーバーで行われた別の研究では、血液型と新型コロナの重症度との間に有意な関連があることが明らかになりました。入院中の新型コロナ患者95人を検討した結果、A型およびAB型の患者は、B型およびO型の患者と比較して、人工呼吸器や腎代替療法(血液透析)を必要とする頻度が高く、集中治療室への入室期間が長かったとのことです。

まだ結論は出ていない

これまでの研究結果からは、O型の人は感染もしにくいし、重症化もしにくい一方で、それ以外の血液型の人は感染しやすい、重症化もしやすいということが示唆されています。

そもそも肥満、高血圧、男性という重症化リスクを抱えている忽那氏もB型であり、ぴえん超えてぱおんな感じですが、まだ結論を出すのは早いかもしれません。

これまでの研究とは異なる研究結果も報告されています。

例えばアメリカのボストンで行われた研究では血液型と新型コロナの重症度とは関係なかった、と報告されています。

ニューヨーク市で行われた別の研究では、O型の血液型を持つ人の感染リスクは、他のすべての血液型と比較して少なかったものの、重症者はむしろO型の人が多く、A型、B型、AB型の人の方が重症者は少なかったというものです。

これらの研究は前述のものとは異なる、あるいは真逆のものです。

まだ血液型と新型コロナとの関係についての結論は出ていないと考えた方が良さそうです。

少なくとも医療従事者が新型コロナの患者さんの血液型を調べて重症化を予測したりする段階ではありません。

また、血液型が感染リスクや重症化リスクに関連している可能性はありますが、年齢や基礎疾患などこれまでに分かっている重症化リスクよりも影響が大きいものではありませんので、ご自身がO型でないからといって過剰に心配する必要はありません。

これまで通り、三密を避ける、こまめに手洗いをするなど個人個人にできる感染対策を地道に続けていきましょう。

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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