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トラックと箱根駅伝を両立させる佐藤圭汰①米国で室内日本新を連発「5000mで12分台を出します」

寺田辰朗陸上競技ライター
トラックでも快走を続けている佐藤圭汰。写真は昨年の金栗記念選抜中長距離熊本大会(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 佐藤圭汰(駒大2年)が陸上競技の室内競技会で快走を続けている。1月26日にボストンの5000mで13分09秒45の室内日本新、屋外を含めても大迫傑(Nike)の日本記録13分08秒40に次いで歴代2番目のタイムをマークした。2月11日にはニューヨークシティの2マイル(約3219m)で8分14秒71の室内日本新記録で走った。2マイルの途中計時(公認)の7分42秒56も室内日本新、屋外を含めても歴代3番目の好記録だった。

 箱根駅伝3区(21.4km。1月2日)では1時間00分13秒の区間歴代3位、日本選手としては歴代2位の好記録をマークした。昨シーズンは5000mでアジア大会出場、12月に10000mで27分28秒50の学生歴代2位&U20日本新記録と、屋外トラックでも結果を残している。

▼5000m日本歴代リスト

                                      <世界陸連サイトから>
                                      <世界陸連サイトから>

▼室内5000m日本歴代リスト

                                      <世界陸連サイトから>
                                      <世界陸連サイトから>

 佐藤がトラックと駅伝を両立できている背景を、3本(予定)の記事で紹介していく。1本目の今回は、ボストンの5000mで室内日本新を出した後のインタビュー内容を紹介する。

「(室内日本新は)まったく嬉しくありません」

Q.ボストンの室内5000mに出場した狙いは何でしょう?

佐藤 ボストンは記録が出やすいと聞いていました。箱根駅伝後でしたが、記録を狙ってみようと思い出場しました。出場するメンバーの記録や実績も、だいたい把握していました。

Q.どんなレース展開になりましたか?

佐藤 ペースメーカーが3000mを7分50から52秒で行くと聞いていましたし、自分が参加しているチームのメンバーと一緒に付いて行こうと考えていました。3000mまで流れに乗って、3000m以降が勝負になる。プラン通りに3000mまでは進められたのですが、3200mくらいから離され始めてしまって。記録を狙うレースではあっても、3000m以降で仕掛けられたときに対応できなかったのは、まだまだ弱いな、と思いました。

Q.室内競技場は会場によって弾み方が違う、ということも聞きますが、走りにくいことはなかったですか?

佐藤 今まで走ったなかで一番スピードを出しやすいトラックだったな、という印象です。カーブの部分のバンク(傾斜)が曲がりにくいかな、と思ったのですが、全然そんなことはなくて。トラックが狭いので位置取りが難しいところはありましたが、集団の流れに入ってしまえばすごく走りやすかったです。

Q.今回のタイミングで13分09秒45を出したことの意味をどう考えていますか?

佐藤 目標が13分7秒の日本新記録だったので、100点の走りではありませんでした。自分の責任なのですが、試合当日にお腹の調子が良くなくて、走っている時も気になっていました。そういった失敗がなければもっと上のタイムを出せると思います。

Q.室内にはなりますが、日本新を出した喜びは?

佐藤 まったく嬉しくないですね。そのレース(スカーレット組)で10番でしたし、アメリカの学生やジュニア(U20)の選手も走っていました。現場にいて、全然まだまだだなって感じました。日本では良いタイムかもしれませんが、世界と比較すると全然まだまだだなって感じました。もっと速いタイムを出さないといけないな、と思っています。

「箱根駅伝への取り組みでベースを上げられる」

Q.しかし、調整なしで出したことを考えると、評価もできるのでは?

佐藤 ちゃんとしたスピード練習をし始めたのが1週間前くらいでした。それまでは箱根駅伝の疲労もあって、練習量も落としています。5000mに向けた練習はまったくやっていませんでした。調整して仕上げて出たレースではありませんでした。

Q.その練習の流れでも13分10秒を切ることができたのは、中期的、長期的にスピードとスタミナの両方をやっていたからでしょうか?

佐藤 そうですね。箱根に向けて長い距離を踏むことによってベースが上がった、体が丈夫になった、地力が付いたっていう感覚があります。ベースが上がったことでスピード練習をポンとやるだけで、良い感じで動けていけると思いますね。

Q.箱根駅伝は佐藤選手にとって特別なものではなく、競技力自体を上げていくために箱根駅伝もあればトラックもある、という考え方ですか。

佐藤 そんな感じで自分は思っています。箱根があるから普段から応援してもらえることには本当に感謝しています。駒大ファンの方たちや、後援会の方々からエネルギーをもらえる大切な大会です。競技的な視点で見れば箱根に取り組むことによってやはり、自分のベースを上げられるので、有効、なんて言うんでしょう……

Q.手段とか、ツールとか?

佐藤 はい。そういったものになると思います。

Q.米国のチームでは1500m、5000mの選手も長い距離を走っているのですか? ポイント練習でも10何kmという距離走が?

佐藤 あります。距離走は普通に、トラック・シーズンでもやっています。最長で30kmも走りました。1500mの選手でもやっています。以前は箱根を走ったらスピードがなくなるんじゃないか、という懸念もありましたが、色んな方法で世界トップ選手の練習を調べたり、実際にアメリカに来てトップレベルの選手の練習を間近で見たりすると、トラック選手でも距離を踏んでいます。箱根を目指す選手と同じくらいのボリュームです。それはなぜかと言えば、シンプルに、地力を上げないとトラックでも戦えないからだと思います。高いレベルでベースを高めるには、距離走とか、長い距離の練習は絶対に必要になってくる。トラックに向けても、箱根に向けての取り組みは本当にプラスになると思います。

Q.その一方で150mなど短距離選手のようなメニューもあると、聞いています。

佐藤 そうですね。練習の終わりに軽く加速走みたいな感じでやっていますね。

Q.これからトラック・シーズンに本格的に入っていきます。パリ五輪参加標準記録の13分05秒00への手応は?

佐藤 13分05秒ではなく、12分台も見えてきました。アメリカのチームの合宿に参加させてもらう期間が3月中旬まであるので、色々なことを吸収して持ち帰って、トラック・シーズンでもしっかり結果を出せるように、高いレベルの練習を継続していければ出せると思います。高校3年の時も高校記録を全部出す(1500mと5000m)といった目標を立てたことで、色々なことをレベルアップできました。今年も12分台という高い目標を立ててやっていきたいと思っています。

※佐藤圭汰選手記事の2~3本目は箱根駅伝で好走するまでの強化の流れを、駒大・大八木弘明総監督へ取材した内容も含め紹介する。

陸上競技ライター

陸上競技専門のフリーライター。陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の“深い”情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことが多い。地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。座右の銘は「この一球は絶対無二の一球なり」。同じ取材機会は二度とない、と自身を戒めるが、ユーモアを忘れないことが取材の集中力につながるとも考えている。

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