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B3を退団したのは本当に元NBA選手だったのか? 釣り見出しと報道の正確性を考える #専門家のまとめ

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
ヤフーニュースのトピックスに選ばれた元NBA選手の退団を報じる記事

 選ばれるとアクセス数が飛躍的に伸びるヤフーニュースのトピックス記事。先日、そんなトピックス記事の中に、気になるものを見つけた。

 バスケットボールのB3チームに新規加入した『元NBA選手』が退団したとのニュースだが、私が気になったのは該当選手を『元NBA選手』と表記した部分。

 果たして、該当選手は本当に『元NBA選手』だったのだろうか?

▼バスケットボールBリーグ3部(B3)の鹿児島レブナイズは29日、米国出身のジェレマイア・ティルモン(24)との契約を解除したと発表した。米プロNBAでプレー経験のあるセンターで、今季加入したばかり。公式戦に出場する機会なく退団となった。(中略)ティルモンは、21-22年にNBAのマジックでプレー。

▼NBA公式サイトの21-22年シーズンのオーランド・マジック登録選手一覧にはティルモン(Jeremiah Tilmon)の名前は見当たらず

▼マジックの球団公式サイトによると、2021年10月7日にティルモンと契約

Orlando Magic Sign Jeremiah Tilmon(オーランド・マジック公式サイト)

▼しかし、契約から5日後の2021年10月12日にティルモンを解雇

 確かにNBA球団のオーランド・マジックと契約を結んだティルモンだが、契約から5日後に解雇されている。トレーニング・キャンプには参加したが、公式戦どころか、プレシーズンゲーム(オープン戦)の出場経験もなし。

 一般的に『NBA選手』として定義されるのは、公式戦に出場経験がある選手で、キャンプに参加しただけの選手は『NBA選手』とは呼ばれない。キャンプ参加選手を『元NBA選手』と言うのであれば、2014年にNBAのダラス・マーベリックスと契約を結んで、6日後に解雇された富樫勇樹(現・千葉ジェッツふなばし)も『元NBA選手』と呼ばれるべきだ。

 バスケットボールの国内3部リーグに値するB3の一外国籍選手が解雇されたニュースがトピックスに選ばれた理由をLINEヤフー株式会社の広報部に尋ねたところ、「個別のトピックスに関するご質問についてはお答えしておりません」とヤフー側は選出理由を明らかにしていない。ただし、「『公共性と社会的関心に応える』ことを編集方針に掲げ、情報提供元から配信される数多くのコンテンツの中から速報性や公益性などを勘案したうえで、編集部員が『今多くの利用者に伝えるべき話題かどうか』を総合的に判断して選んでいる」との説明は頂いた。九州のB3チームの外国籍選手が退団したニュースに「公共性と社会的関心」があるとは思えず、やはり『元NBA選手』の肩書があったからトピックスに選出されたと推測できる。そういう意味では、この記事は『釣り見出し』に該当するのではないだろうか?

 また、記事を制作した南日本新聞に、『元NBA選手』と表記した理由を問い合わせたが、こちらは期日までに回答はなかった。

 報道に携わるものとして、球団側の発表を100%信じるのではなく、事実証明の裏取りの重要性を改めて感じさせる出来事だった。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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