【河内長野市】長野高校の居候、羊の太郎の家が間もなく完成!ダッシュ里山体験授業も見てきました。
12月に入り、まもなくクリスマス♪キリストの誕生日を最初に知ったのは羊飼いと言われています。そんな羊がいるところといえば、オーストラリアやニュージーランド、国内なら北海道を思い出すかもしれません。
しかし、実は河内長野にも羊がいます。それも市役所の北側にある大阪府立長野高校に、太郎という羊が居候(いそうろう)していて、彼の家がまもなくできるそうです。
長野高校に許可をいただいて太郎に会いに行くことに。ちょうどNPO法人森林ボランティアトモロス(外部リンク)さんのサポートによるダッシュ里山体験授業が行われる日でした。
ということで、長野高校に来ました。以前ランニングパトロールの開始式の時に来ましたが、今回はまず、羊の太郎のいるところに入ってみます。
すでにトモロスの堀さんが入り口で待っていてくださって、ちょうど鍵を開けるところでした。
太郎は居候と言いましたが、実は学校内の雑草を食べてきれいにしてくれるというれっきとした仕事を持っています。
門のカギを開ける音を聞きつけたのか、太郎が一声「メー」と鳴いて、走って姿を見せました。
太郎の母親も河内長野の石見川にいます。母親の名前はもも。夏に石見川で会いましたが、とにかく周辺の草を食べ続けて周りの山をはげ山にしてしまうほど食欲が旺盛でした。
羊の食欲が予想以上に旺盛だという事実、これが太郎が長野高校に居候をするきっかけとなります。
長野高校の香月孝治校長によれば、これまで高校内の里山の草の処理を業者さんに依頼していたそうです。
ところが太郎が代わりに食べてくれるおかげでその必要が無くなり、経費が節約できたばかりか、在校生のアイドルのような存在となり、みんなが可愛がってくれるため教育面でもとても貢献しているそうです。
その貢献が認められたためか、当初9月までの予定だったのが来年3月まで延長となりました。そこでビニールシートで作った簡易テントから、本格的な家を建てようとなったのです。
太郎は今年の3月から4月にかけて誕生し、現在生後8ヵ月。しかしすでに繁殖期に入っているそうです。調べると羊は10月ごろが最も発情するそうで、自らの母親に対しても、ということすらあるほど。
そのときです!あろうことか太郎が突進して堀さんを後ろから頭で突いて、押し倒してしまったのです。太郎は噛みつきこそはしませんが、油断するとすぐにそういうことをするので、注意してほしいと言われました。
柔らかい土の上での出来事だったので、堀さんにけがもなかったので安心しましたが、横で見ていてハラハラしました。
後で調べると、羊の生態特徴として、コミュニケーションを取るために、頭突きのように後ろから勢いよく押してくるそうです。だから太郎は、大好きな堀さんに頭突きしたのですね。
そんな太郎は、7月ごろに母親のももと一緒に長野高校に来ました。校長先生によれば、以前から里山の木を切ってもらう関係で、トモロスさんとの付き合いがあったそうなのですが、そのときにヤギを飼いたいと話が出たそうです。
トモロスさんの知り合いでヤギやロバを飼っている人が千早赤阪村にいるということだったのですが、ヤギは角があるため本当に危険で、一般の高校で飼うのには無理がある。だったら羊の方が良いのではという話になったそうです。
こうして太郎と母親のももを含めて3頭で長野高校に来ました。母親のももともう1頭は石見川に帰りましたが、当初2ヵ月の予定で太郎だけが残りました。
「太郎に良い相手が見つかれば」とは言っていましたが、すぐに相手が見つかるわけもなく、当面は単身赴任のように長野高校で住み続ける事になりました。
こちらが新しく作られた太郎の家です。まだ完成ではないそうですが、見たところほぼ家になっていますね。
ただ隙間だらけで、これからの時期寒いのではと心配しましたが、堀さんによれば、羊は常に羊毛を身にまとっているから雪の上でも平気だとのこと。むしろ夏の暑さの方が心配ということでした。
太郎の家は高校の文化祭で使ったイラスト入りの板で作られていて、とてもカラフル!
それにしても長野高校の高校生、なかなか上手い絵をかきますね。でも太郎は草食性なのでこれを見て餌とは思わないのでしょう。
「太郎の家」と表札が付いています。
上になぜか干し柿がつるされていますね。これはこの後に行われる里山授業に関係するものです。
何はともあれ、立派な家を作ってもらったことで太郎がどう思っているのか、多分喜んでいるものと推測します。
さて、今から里山授業が始まります。太郎とはしばらくのお別れ。
校庭に来ると、ちょうどダッシュ里山授業が始まっていました。いちばん左側で見守っている校長先生から見て、間におられる理科の先生の隣、青い服を着た男性が、里山授業をメインで担当する宮崎先生(体育の先生)です。このように、この授業は複数の先生で行われます。
宮崎先生によると、授業の正式な名前はグローカルリサーチという名前なのだそうですが、もっとわかりやすい名前が良いと「ダッシュ里山」授業という通称を名付けました。
それは「ザ!鉄腕!DASH!!」というテレビ番組から着想を得たそうで、わざわざテレビ局に「ダッシュ」の名を使いたいと申し出たそうです。
こちらが今回の授業で使うもの、校内で採れたさつまいもを使った授業を行います。
こういう授業を始めた理由は、廃校となった長野北高校がもともとこういう授業をしていたものを受け継いだそうです。長野北高校では「郷土の歴史を学ぶ」という授業をしていたそうですが、長野高校ではそれとは少し、趣向の違ったものをやりたいと考えました。
長野高校の立地を生かして竹を切る授業などいろいろアイデアが浮かびましたが、どれも単発で終わるものばかり。「それだったら、すべて入れたら年間の授業になる」ということで決まりました。
今回の授業に使う道具です。いろんなものがありますね。目的は炭をつくるということで、それに加えて、校内で生徒さんが育てたさつまいもや校内の木からとれた栗を焼いてみようというもの。
立派な芋ですね。これをみんなで焼いて食べるとは、なんと素敵な授業でしょう!今回の授業を受ける皆さんがうらやましくなりました。
森林ボランティアトモロスさんの制服です。堀さんのほか、ふたりのボランティアスタッフの方が授業をサポートしていました。
河内長野のボランティア団体と言えば、観光協会の黄色い制服のボランティアスタッフの方をついつい連想してしまいますが、それだけではなかったんですね。
簡単な授業内容を説明した後、いよいよ実際の行動に移します。火起こしの大元こそ着火用ガスライターを使いますが、そのあとは極力自然のものを使って火をおこします。
通常、木に火をつける際には、まず新聞紙に火をつけ、そのあとアウトドア用の着火炭を使いますが、それらは一切使いません。
真ん中に見える茶色いもの。あれはメタセコイヤの葉っぱが枯れたものなのだそうです。これを新聞紙や着火炭の代わりに使って、木に火をつけていくわけですね。
木も校内で伐採したもののようです。すべて自前で出来るのは、山に囲まれた河内長野の強みですね。
さあ、火おこしが始まりました。最初は火を入れるU字型のブロックを無造作に置いていましたが、そこでいろいろ注意を受けます。まずは風向きから。U字型の横から風が入るように置けば、風の力で一気に火おこしができるわけですね。
さらにこちらは、木を細かく切っています。まさに童話や昔話で出てきそうな木こりのようなことも、トモロスさんのボランティアスタッフの指導の下、生徒たちが実践します。
この里山授業は3年生が行います。長野高校は、看護メディカルコースでは実際の病院や大学で医療の疑似体験、国際文化科もあり、韓国にある姉妹校と交流をしたりなどという海外研修があるそうです。
この韓国との交流は、コロナ禍でしばらく中断していましたが、できれば来年から再開して韓国に渡航交流する予定を検討しているそうです。
また河内長野の観光ということで、生徒が地元の着物屋さんと交渉をして、10着の着物をレンタルさせてもらえることに。これを使って観心寺などへ着物を着て観光できる仕組みができないかという試みも計画中です。
京都や浅草で観光客が着物を着て観光地を巡るということの河内長野版。これはぜひ実現してほしいですね。
さて、火おこしがずいぶんと進んできたようです。
別のところでは、四角い缶の中に炭にするものを詰めて封をしていました。
その缶を網の上に載せます。缶には小さな穴があけられていて、燻すようにして炭を作るそうです。
さらに、先ほどの芋を水道水で洗い、これを新聞紙に包みます。新聞紙の上にはアルミホイルでさらに包み、それを先ほどの網の上に置いて焼きます。
生徒同士でいろいろ相談しながら、作業を進めていきます。
宮崎先生が「太郎のところに行って干し柿を取りに行きます」というので、後に付いていきました。
再び太郎のところに来ました。太郎はこのふたりの生徒を仲間のように思っているのか、先ほどと比べてやけに嬉しそうにみえます。激しく体を動かしました。
太郎の家の上にかけてある干し柿を引き取ります。よく考えたら太郎は干し柿には目もくれないんですね。草はいくらでも食べるようなのですが。
干し柿を校庭にもっていきます。ところが、宮崎先生は「失敗した」と言います。どうやら干し柿に青カビが付いたようで食べるのは無理とのこと。
失敗は成功の母と言いますが、失敗を繰り返しながら試行錯誤して成功に持っていくというのも授業としては大事なことなのかなと思いました。
戻ってくると、すでにアルミホイルに包まれた芋、それから木でとれた栗を焼いていました。
ちなみに先ほどの干し柿は結果を見せただけで終わりました。宮崎先生は「皮を取って中だけなら」と言ったのを、理科の先生が「いや、それはやっぱりやめましょう」と慌てて止めていました。
この授業は複数の先生で分野もバラバラです。先生同士の連携プレーの一端を見た気がしました。
こちらは燻された炭です。さて無事に炭になっているでしょうか?
開けたところです。見事に炭が出来ていたようです。
ただ、別のチームはまだ炭になっていませんでした。理論上では理解できても実際には火力の問題とかいろいろあって、必ずしもうまくいくとは限らないんですね。
さて、芋はいい感じで焼き芋になっていました。見た目からして美味しそうですね。
ここで、生徒の生の声を聞かせてもらおうとインタビューしました。まずは女子生徒から。
特に今回は焼いた芋や栗が食べられるので、ご褒美のような授業になったのかなと思いました。
次に男子生徒です。
確かに、バーベキューでの火おこしはこの日の授業でばっちり。家族や友達にも自慢できそうですね。
この日急に雲が出てきましたが、宮崎先生は「ここは山なので天候が変わるのが早い」と言われました。
市役所の近くで、この上に住宅が並んでいるので、てっきり町と思っていましたが、確かに長野高校はかつて雑木林に覆われた小山田丘陵の中腹にあるわけですから、山と言われればそうなんですね。
ただ住宅地との間に残っている森では今でも秋の実りが取れるわけで、河内長野の中心部近くにありながら自然に囲まれた長野高校はとても魅力的な立地の高校だと思いました。
しかし、長野高校は第二次ベビーブームのピーク時に1学年12クラスあった頃が、現在は6クラス。生徒数は半数以下となり、今年は初めて定員割れとなってしまいました。
大阪府の規定で公立高校は3年連続定員割れを起こすと再編整備の対象校になるそうで、まさかのことですが長野高校が長野北高校と同じ運命にあうと、河内長野市に公立高校が無くなってしまう事態になります。それはあまりにも悲しすぎますね。
里山ダッシュ授業の取材を通じて感じたこととして、生徒さんから聞いた地元愛、それから先生だけでなく、地域の人がこれまでの経験を教えるという大変素晴らしい授業でした。
若者が楽しく学べる河内長野にある公立高校、これからも末永く続くように、多くの中学生に入学してほしいという気がしました。
長野高校は現在587人の生徒で、全日制の普通科と国際文化科があり、全日制は2年になると総合スタンダート、看護メディカル、理解アドバンスにコースが分かれます。
3年になると総合スタンダードからさらに文系アドバンスに分かれ、高校生活を送りながら自分に合ったコースが選べんでいけるというわけです。
また国際文化科は、英語の他第2言語として、韓国・朝鮮語、中国語、フランス語、ドイツ語から選べます。大学に進学する前段階、高校生の段階で大学のような学びができるわけですね。
詳細は長野高校の公式ページに書いていますが、学校説明会が12月17日にあるそうなので、興味のあるかたは問い合わせてみてください。
帰り際、太郎がいないか柵の中を見ると、すぐに太郎が近づいてきて、校門のところまで見送ってくれました。
私は普段長野高校に来ない珍客かもしれませんが、太郎はそんな珍客をも温かく見守ってくれている。太郎の表情を見るとそんな気がしつつ学校を後にしました。
大阪府立長野高校(外部リンク)と居候の羊・太郎の家
住所: 大阪府河内長野市原町2丁目1-1
電話番号:0721-53-7371
アクセス:南海千代田駅から徒歩18分
※記事へのご感想等ございましたら、「奥河内から情報発信」ページのプロフィール欄にSNSへのリンクがありますので、そちらからお願いします。