主要国では35%が「安心して夜に外出ができる」を否定している
自分の国の政情、治安のよし悪しを図る物差しの一つとして、夜に外出ができるかどうかが挙げられる。当然どれほど治安がよく、開発が進み、交通機関が整備され、経済的に発展していても、夜中の外出が危険となる場合は多々あるものの、一般論としては悪くない指標に違いない。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2019年4月に発表した、民主主義諸国における民主主義の浸透度合い、国民の認識に関する調査結果「Many Across the Globe Are Dissatisfied With How Democracy Is Working」(※)の内容を基に、主要国の実情を確認する。
次のグラフは「多くの人は夜中に出歩くと危険な地域に住んでいる」との問いに対する同意率。完璧に安全な地域だけの国は想定し難いが、治安がよく、交通機関などの環境整備が進み、経済的にも民意の上でも安定していれば、夜中の出歩きでも危険だと認識しなければならない場所は少なくなる。そのような場所が自国に多々あるのか否かとの問いは、治安や経済などの観点で、自国が落ち着いているか、安定しているかの認識を確認できる指標となる。要はこの値が高いほど、自国の情勢が悪いものだとの自覚を持っていることになる。
調査対象国全体の中央値は35%。おおよそ1/3が危険を覚える人が多いとの認識で、少数派に留まっている。地域的な傾向は見受けられず、むしろ国別の違いが顕著に出ていて興味深い。50%を超える区切りで確認すると、ギリシャ、イタリア、インド、チュニジア、南アフリカ、ナイジェリア、アルゼンチンが該当する。逆に30%未満ではスウェーデン、フランス、ポーランド、スペイン、インドネシア、日本、イスラエル、メキシコが該当。
それぞれの国において「多くの人は夜中に出歩くと危険な地域に住んでいる」の意味、解釈が多少は異なっている可能性もあるが(特に「危険」の度合い)、個々の国における自国の治安や社会情勢への認識が透けて見えてくる。
無論この値が低い国の方が、自国における情勢の安定感、安全さを享受していると認識していることになる。しかし低い国においても、夜中の出歩きを推奨しているわけでは無いことに注意を願いたい。
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※Many Across the Globe Are Dissatisfied With How Democracy Is Working
おおよその国では2018年3月から5月にかけてRDD方式で選出された18歳以上の1000人前後の人に対し、電話経由によるインタビュー形式で行われたもので、それぞれの国の国勢調査の結果に基づき男女別、年齢、教育、地域などの属性によるウェイトバックが実施されている。一部の国では対面方式による調査方法が用いられている。
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