「また一緒に」 アイススレッジホッケーに励む北海道と大阪の少年がリンクで再会の約束
極寒のアイスリンクに、ポッと心が温まるような出会いがあった。
「こんにちは」「はじめまして」
ふたりの少年が、少し恥ずかしそうに顔を見合わせる。12月19日、長野県岡谷市のやまびこスケートの森アイスアリーナで開催された、アイススレッジホッケークラブ選手権でのひとこまだ。リンクサイドで挨拶を交わしたのは、北海道の繁泉鯉句(りく)君(小学6年)と大阪の岡田樹(いつき)君(小学4年)。全国でも小学生のアイススレッジホッケー競技者は彼ら二人のみ。まだ競技を始めたばかりで試合に出ることはできないが、今回は日本アイススレッジホッケー協会の計らいで対面が実現した。
アイススレッジホッケーは下肢に障がいを持った人たちのスポーツで、スレッジと呼ばれる専用のそりに乗ってプレーする。ルールはアイスホッケーとほぼ同じで、2010年バンクーバーパラリンピックでは日本代表が銀メダルを獲得している。
繁泉君はアイスホッケーが盛んな苫小牧市在住。父と兄はアイスホッケー競技者だ。脳性まひでうまく足が動かせないため、アイスホッケーに挑戦することは難しかったが、1年ほど前にアイススレッジホッケーと出会い、日本代表キャプテンの須藤悟選手も所属する北海道ベアーズに所属して練習を重ねている。
岡田君は東大阪市在住で、アイスホッケー経験者。臨海ジュニアアイスホッケークラブでプレーをしていたが、昨年、交通事故により車いす生活になった。大阪にはアイススレッジホッケーのチームがないため、現在はクラブが練習するリンクの端で、臨海ジュニアOBでアイススレッジホッケー日本代表の元アシスタントコーチの青木栄広さんの指導を受けながら滑っている。
現在、国内には長野、北海道、東京、八戸の4チームがあるが、競技人口は全国でも30人前後と極めて少なく、競技の普及と人材育成が急務となっている。そうした背景もあり、選手も彼らを全面バックアップする。たとえば今年6月には、岡田君の話を聞いた長野チームのメンバーが特別に大阪での練習を実施。当時はまだうまくスレッジを乗りこなせず、バランスを崩しがちだった岡田君を、メンバーが優しくも厳しく指導した。
今大会の初日に行われた体験会の時間を利用して、繁泉君と岡田君はそろって氷に乗った。大阪での練習にも参加した日本代表の熊谷昌治選手がスケーティングの見本を見せると、ふたりは「速い!」と感嘆しながらも、同じ動きに挑戦した。後半には須藤選手も参加して、パックを打ち合ったりして交流を深めた。
リンクの外では、プレゼント交換するなどして、少しずつ距離を縮めた繁泉君と岡田君。二日目の試合を観戦したあとは、ロビーで仲良く宿題に向かう場面も見られた。岡田君は繁泉君の存在に刺激を受けた様子。「むっちゃ楽しかった!」と話し、再会を心待ちにしていた。岡田君に手紙を渡した繁泉君も、「また一緒に氷に乗れたら嬉しい」と笑顔。また、リンクサイドで真剣な表情で観戦していた試合について聞くと、「動きが速くてみんなすごい。とくに須藤選手が格好いい」と、目を輝かせて答えてくれた。
協会によると、来年2月にはビッグハット(長野市)で日本を含め4カ国が参加する国際大会や、神戸での体験会が開催される予定とのこと。アイススレッジホッケーを国内で観戦・体験する貴重な機会になる。「多くの人にアイススレッジホッケーの魅力に触れてもらいたい。ぜひ会場に足を運んで」と観戦や参加を呼びかけている。
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