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全仏オープンに日本人3選手が出場! 車いすテニスの初採用「クァード」クラスに注目!

荒木美晴フリーランスライター
全仏オープン初採用の「クァード」の菅野浩二(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

パリのローランギャロスで行われている全仏オープンテニスは、いよいよ佳境に突入。現地時間の6日からは、車いすテニスの部がスタートする。

今回、日本から3人の選手が出場する。男子の国枝慎吾(ユニクロ)、女子の上地結衣(三井住友銀行)、そして全仏では今年初めて実施される「クァードクラス」の菅野浩二(すげの・こうじ/リクルート)だ。クァードは、英語で四肢まひを意味する「Quadriplegia」(クァードリプリジア)の略称で、男女の区別なく、上肢にも障害がある選手のクラス。パラリンピックでは男子、女子とともに採用されている。

握力がなかったり弱かったりしてラケットが握れない場合は、ラケットと手をテープで固定することが認められている。電動車いすを使用してプレーする選手もいる。クレーコートは車いすの車輪の轍が残るなどして、よりチェアワークが難しくなるといったことから、これまでテニスの4大大会において、クァードはハードコートの全豪と全米でのみ開催されてきた。

しかし、2018年にオランダで開催された国別対抗戦(ワールドチームカップ/WTC)はクレーコートで実施され、クァードクラスも大いに盛り上がったように、彼らは問題なくプレーできることを証明している。選手たちの「すべての4大大会でクァードも実施してほしい」という願いが直接主催者に届いたかどうかはさておき、今年からローランギャロス、そしてグラスコートのウィンブルドンでも実施が決まった。

そんな記念すべき2019年の赤土に出場するのが、世界ランキング3位の菅野だ。頸椎損傷の菅野は手にも障害がありながら、もともと男子でプレーしていたが、東京2020パラリンピックを見据えて2017年にクァードに転向。そこからぐんぐんと成長し、昨年のアジアパラ競技大会ではダブルスで優勝し、シングルスで銀メダルを獲得している。

手にも障害があるクァードクラスの魅力は、なんといっても創意工夫だ。車いすを漕ぐのが遅くスピードが出にくい分、展開の「予測」と「駆け引き」で試合を構築する。相手のプレーの先を読み、逆回転や外に逃げるサーブなどさまざまなショットを戦略的に駆使して攻め込む。そのショットの正確性も必見だ。

クァードクラスは世界上位3人とワイルドカード1人の計4人で頂点を争う(男子・女子は7人+ワイルドカード1人の計8人)。今年のローランギャロスは、ぜひ奥の深いクァードクラスにもご注目を!

フリーランスライター

1998年長野パラリンピックでアイススレッジホッケーを観戦。その迫力とパワーに圧倒され、スポーツとしての障がい者スポーツのトリコに。この世界の魅力を伝えるべく、OLからライターへ転身し、障がい者スポーツの現場に通う日々を送る。国内外における障がい者スポーツの認知度向上と発展を願い、2008年に障がい者スポーツ専門サイト「MA SPORTS」を設立。『Sportsnavi』『web Sportiva』などスポーツ系メディアにも寄稿している。パラリンピックは2000年のシドニー、ソルトレークシティ、アテネ、トリノ、北京、バンクーバー、ロンドン、ソチ、リオ大会を取材。MA SPORTS代表。

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