どんな企業でも求められる人材要件「主体性」って一体何?
■主体性を求める企業はとても多いが
辞書によれば、「主体性」とは「自分の意志・判断で行動しようとする態度」と定義されています。この「主体性」あるいは、「自分から」という語感を含む似た言葉として「自発性」「自走」「自律」などは、採用や評価のシーンでは大変よく使われる言葉です。
これらの言葉は先の定義のようにあまり議論の余地のない言葉のようにも思えますが、しかしながら、私の限られた経験ではありますが、様々な人事の方にその意味を伺ってきたところ、そうではありませんでした。こんなポピュラーな言葉でもそうなのか、と思うかもしれませんが、例を挙げて説明してみます。
■それを主体性と言うのか?
卑近な例ですが、私の息子が以前小学校受験の際に受けた模試で、行動観察(子ども達が遊んでいる様子を観察する)という科目がありました。その評価項目に「主体性」があったのですが、息子は恥ずかしながら「聞かん坊」で、やりたいようにやりたいという子どもでしたので、「この項目の評価は高いだろう」と思っていました。
ところが模試の結果、「主体性」は0点でした。「そんなわけないだろう」と、定義を調べたところ、そこには「目の前の課題に対して積極的に前向きに取り組む姿勢」と書かれてあったのです。
私は、「それは、主体性というよりは、むしろ『他者の設定したものを受け入れる』といった適応力や従属性ではないか。それはそれでよいが、それを主体性と言うのはどうか」と思ったものです。
■似たことが企業でも起こっている
実は、これと同じ現象が多くの企業で起こっています。「主体性、主体性」と言いながら、本当は「適応力」「従属性」、もっと平たく言えば「素直さ」「とりあえずやる」ということを求めている企業が多いのです。
特に、カリスマトップのいるベンチャー企業や、事業において勝ちパターンの決まっている企業に多い現象です。と言うのも、それらの会社では、本当の意味での主体性(冒頭の定義とします)など、非効率を生み出すものでしかないのです。「余計なことを考えずに、黙って言われた通りにやればよい」というのが本音なのでしょう。
しかし、それはある意味合理的なことで、即問題ということではありません。ただし、それを「主体性」と表現してしまっては、混乱が生じます。
■皆さんの会社ではどういう意味で使われていますか?
「主体性」を持っている人は、言い換えれば、「生意気」「言うことを聞かない」「自分勝手」「わがまま」な人です。「主体性」という言葉が「社会的望ましさ」の高い言葉なので、こういうことが生じます。自分の意志や判断を大事にする人なのですから「素直」とは正反対かもしれません。
しかし、フロンティアだらけのベンチャーや、従来の勝ちパターンが陳腐化して変化を求められている企業には必要な人材でしょう。さて、皆さんの会社では、どちらの「主体性」が重要でしょうか。是非、ご検討ください。