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【猛暑】人の皮膚病「マラセチア毛包炎」が増加中 犬のマラセチアは、人に感染する?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

30度を超える暑さと湿気の日々が続く中、カビによって皮膚が炎症を起こす「マラセチア毛包炎」の患者(人)が相次いでいるとFNNプライムオンラインが伝えています。

皮膚の弱い犬を飼っている人は、マラセチア皮膚炎という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

今日は、犬のマラセチア皮膚炎が、人に感染するかなどを見ていきましょう。

人のマラセチア毛包炎の症状

FNNプライムオンラインでは、

マラセチア毛包炎は、胸や背中といった汗をかきやすい場所にプツプツとした、白や赤、または少し光沢を持った発疹がたくさんできます。ニキビにとてもよく似ているので、「治りにくいニキビができた」と思って来院される方が多いです。

と伝えています。

人のマラセチア毛包炎は、治りにくいニキビのようなものだそうです。

日本の夏は高温多湿なので、人と同じように犬も皮膚病になりやすいのです。そのため「うちの犬から感染したかも?」と思う飼い主も多いでしょう。

犬のマラセチア皮膚炎は人に感染するのか?

マラセチアとは、人や犬を含む動物の皮膚や粘膜に常在している酵母(カビの一種)です。マラセチアは脂質を必要とするため、脂っぽい環境を好みます。

現在、犬の皮膚炎に関与していると考えられているマラセチアは、人の皮膚炎やフケ症に関わるマラセチアとは異なるものです。

さらに、多くの犬にもマラセチアは常在しているため、健康な犬や人、その他の動物にマラセチアが感染することはありません。

つまり、飼い犬がマラセチア皮膚炎にかかっても、飼い主がマラセチア毛包炎になることはないのです。

犬のマラセチア皮膚炎

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犬のマラセチア皮膚炎は、比較的よく見られる皮膚病の一つで、痒みや赤みが生じます。慢性化すると、黒く色素沈着し、皮膚が肥厚します。また、脱毛やフケが見られることもあります。

起こりやすい部位

・口の周り

・手足の先

・指の間

・わき

・陰部周囲

・オッポの付け根の下側

など皺の多い部分です。

犬のマラセチアによる外耳炎

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マラセチア皮膚炎以外にも耳の疾患を引き起こします。

症状は、耳の赤みや痒み、特有の臭いで茶色~黒っぽい耳垢が大量に見られる場合があります。

犬は痒いので、絶えず耳をひっかいたり、頭を振ったり、耳付近をカーペットにこすりつけたりします。

犬のマラセチア皮膚炎・外耳炎の診断

犬が皮膚や耳などを痒がる、赤み見られるなどの症状がある場合は、病変部分の組織や耳垢をサンプルとして採取し、顕微鏡で観察します。

犬のマラセチア皮膚炎の治療

マラセチア皮膚炎に対する治療は、シャンプーや外用薬の塗布などが一般的です。

必要に応じて内服薬が処方されることもあります。

シャンプーや外用薬などは、それぞれ適切な使用量と使用方法を獣医師に必ず確認しましょう。

犬のマラセチア外耳炎の治療

一般的に耳の洗浄を行い点耳薬が使用されます。

外耳炎を起こしている耳道は、耳垢や皮脂成分などがたまって、さらにマラセチアや細菌が増えやすい状況になっています。

炎症の状態によって、適切な洗浄方法や洗浄液が異なるので、犬の耳のクリーニングについては、かかりつけの獣医師の指示に従いましょう。

マラセチア皮膚炎・外耳炎にかかりやすい犬種

どの犬でもマラセチア皮膚炎や外耳炎になる可能性がありますが、特に以下の犬種がなりやすいとされています。

・アメリカンコッカースパニエル

・ウェストハイランドホワイトテリア

・シーズー

・フレンチブルドッグ

・パグ

上述のような犬種は、生まれつき皮脂分泌が多い体質を持ちやすく、皮膚炎やマラセチアの増殖を起こしやすいといわれています。

犬のマラセチア皮膚炎・外耳炎の予防

病気になりやすい体質だったり、基礎疾患があったりする場合には長期にわたってケアが必要です。

定期的な健康診断に加えて、皮膚のコンディションを保つために、シャンプーやスキンケアを行うようにします。

まとめ

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犬のマラセチア皮膚炎や外耳炎は、人に感染することはほとんどありません。

しかし、最近は室内でペットを飼う家庭が増え、人と非常に密接な距離で生活しているため、咬まれたり引っ掻かれたり、また気づかずに排泄物に触れた手を口に持っていったりすることで、感染の可能性が生じることがあります。

たとえば、犬が皮膚糸状菌症や疥癬になっている場合は、飼い主にも感染することがあります。

犬が皮膚を痒がる、赤みがあるなどの症状が見られた場合は、飼い主は自己判断せずに、速やかに獣医師に相談しましょう。

犬の飼い主は、動物由来の感染症があることを頭に入れておきましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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