コロナ後の社会――長期的にどう変わっていくのか(1)「不可知性」
Yahoo!ニュースでは、新型コロナウイルスがもたらす「社会変容」などへの不安解決に寄与するための特集サイト「私たちはコロナとどう暮らす」を開設している。
その中で、「第2波に備えていますか?」というアンケートがあり、すでに19万人以上の人々が回答している。
そして現時点(2020年6月18日)では、約7割もの人が「備えている」と回答している。
それだけ、回答者において「第2波」へのリスク意識が高いことがうかがえる。
興味深いのは、700件以上に上るコメントだ。
「備えるも何も…無限ループ状態じゃん
あちこちでクラスター発生のニュースが」(とよ ちびすけ きんさん)
「第二波?、日本の場合、まだ第一波の最中では…」(Masatoshi Ugajinさん)
「そもそも第1波がまだ終わっていない」と感じている人もいれば、「第何波まで続くか分からない」という無限ループを感じている人もいる。
このような不安を感じるなかで、「これからの社会が長期的にどう変化していくのか」は気になる点だ。
その点について、『感染症と文明』などの著書があり感染症の歴史に詳しい長崎大学熱帯医学研究所・山本太郎教授による話は、示唆に富んでいる。
つまり、人間による環境破壊を一因として、「新型ウイルス」の発生頻度は高まってきているという。
たしかに、大きな流行(その規模は様々だが)を引き起こした新型ウイルスは、スペイン風邪A(H1N1)(1918年発生)、アジア風邪A(H2N2)(1957年発生)、香港風邪A(H3N2)(1968年発生)、エボラウイルス(1976年発生)、ヒト免疫不全ウイルスHIV(1981年発生)、というように、かつては40年に一度から10年に一度のペースで発生していた。
しかし2000年代以降は、その発生ペースが、10年に一度どころか、10年に二度くらいのペースで発生している。
SARSコロナウイルスSARS-CoVは2002年に発生して774人以上が亡くなり、新型インフルエンザウイルスA(H1N1)は2009年に発生して1.8万人以上が亡くなり、MERSコロナウイルスMERS-CoVは2012年に発生して858人以上が亡くなり、そして新型コロナウイルスSARS-CoV-2は2019年に発生して40万人以上が亡くなっている。
ということは、もし仮に新型コロナが、ワクチン・治療薬の開発・普及や自然免疫などによって、「社会を非常事態にするウイルス」ではなくなったとしても(その社会を以下では「コロナ後の社会」と呼ぶことにする)、いずれまた「社会を非常事態にする別の新型ウイルス」が発生するかもしれない、ということだ。
なので長期的に見れば、「新型コロナ」に限らず、「社会を非常事態にする新型ウイルス」全般に対応できるように、「新しい生活様式」を模索していく必要がある。
では、「社会を非常事態にする新型ウイルス」というのは、どういうウイルスだろうか?
2000年代以降の他の新型ウイルス(SARS・新型インフル・MERS)は、現在と同じようなグローバル化の進んだ環境にありながらも、「新型コロナ」ほどには世界的な非常事態を引き起こさなかった。
その要因として、「新型コロナ」と比べると、「人間同士の感染力が弱い」(MERS)、感染力が強いとしても「潜伏期間が短い」(新型インフル)、潜伏期間が長いとしても「潜伏期間中の感染力がほとんどない」(SARS)、また「無症状率が低い」(SARS)、といった点を挙げることができそうだ。
つまり、「新型コロナ」は、従来の新型ウイルスと比べると、「人間同士の感染力が強い」「潜伏期間が長い」「潜伏期間中にも感染力が十分ある」「無症状率が高く、無症状者でも感染力がありうる」という点が、世界的非常事態の要因として挙げられそうだ。
これらの要因を、一言でいうと、「(感染力があるのに)人間には知覚できない場合が多い」、つまり、「不可知性が高い」、とまとめることができる。
「新型コロナ」によって引き起こされた世界的な非常事態を、「社会現象」として社会学的に見る場合、この「不可知性が高い」という点が、重要な鍵になるのではないかと私は思っている。
これから、この「不可知性」という概念を鍵にしながら、「コロナ後の社会」を、長期的な近代化論の視点で輪郭づけていきたい。(つづく)