オバマがイラン暦新年のビデオ・メッセージを発信
イラン暦の新年を前にした3月16日に、ホワイト・ハウスのホームページにオバマ大統領がイラン向けのビデオ・メッセージをアップした。イラン暦では新年は春分の日に始まる。つまり今年は3月20日水曜日である。正月は、「ノールーズ(新しい日)」と呼ばれる。この日は、イラン人、クルド人、タジク人などイラン系言語を使う人々によって祝われる。
この日に向けてメッセージを出し始めたのはクリントン大統領であった。しかしクリントン大統領のメッセージの内容は、アメリカ国内のイラン系市民を対象にしていた。オバマ大統領は、一期目の就任直後の2009年3月にイランの指導者と国民に向けたビデオ・メッセージを送った。このメッセージではイランを公式の国名であるイラン・イスラム共和国として言及した。これは筆者の記憶ではアメリカの大統領としては初めてである。またイランの人類の文明に対する大きな貢献を賞賛し、つたないながらもペルシア語で「新年おめでとう」と呼びかけた。このメッセージでオバマは、イランを「悪の枢軸」と決めつけたブッシュ時代と決別し対話を求めるという新しい姿勢を鮮明にした。
その後も毎年、この時期にメッセージを送り続けた。内容はイラン国内の情勢を反映し、次第に厳しくなっていた。昨年のメッセージは、インターネットの規制などの言論の自由と人権の抑圧を糾弾(きゅうだん)する内容であった。しかしながら、今年のメッセージは、イランとの核問題の交渉が進行中であるという事実を反映してか、穏やかなトーンである。
オバマ大統領は、このビデオ・メッセージを「ドルード(挨拶を申し上げます。」というペルシア語で始めた。そして問題の困難さとアメリカとイラン両国間の不信感の深刻さを率直に認めつつも、外交交渉による核問題の解決を訴えた。交渉の進展がイランの孤立を終わらせる。それがイランのためであり、同時に世界のためであるとも続けた。
オバマ大統領のビデオ・メッセージは、もちろんイランに向けられている。たが同時にイスラエルへのメッセージであった。それは、イラン核問題の外交的な決着へのオバマの決意の表明であった。20日に始まったイスラエル訪問を前に、オバマ大統領はイランに対する武力行使を少なくとも当面は考えていないと伝えたわけだ。
オバマ大統領は、約4分のビデオの終わり近くで14世紀の偉大なペルシアの詩人ハーフェズの「心の満足という実をつける友情の木を植えよう、限りない苦しみの実をつける憎悪の苗木を引き抜こう」との句を英語で引用した。最後にペルシア語で「新年おめでとう」と語った。ペルシア語の発音も5年前と比べると格段に良くなっている。