日本の対米感情の現状と推移、そして世界の一員としての認識の実情
対米好感度は高水準
最大の友好国である米国に、日本国民はいかなる感情を抱いているのか。そして世界の一員として日本はどのようにあるべきかの認識を有しているのか。その実情を米国の民間調査会社PewResearchCenterが2016年10月に発表した、定点観測による国際調査から日本に関わる項目を抽出分析した報告書「Japanese Back Global Engagement Despite Concern About Domestic Economy」(※)から確認する。
日本にとって最大の友好国である米国に、今の日本人はいかなる感情を抱いているのか。いくつかの質問を投げかけた結果が次のグラフ。
好印象を抱いている人は72%。後述するが否定的な意見を持つ人は23%でしかない。そして力と影響力は絶大だとの認識を持つ人は61%である一方、10年前と比べると世界のリーダーとしての影響力は減っているとの認識も過半数に達している。大よそ首を縦に振りそうな話ではある。
このうち好感度的なものについて、経年変化を確認したのが次のグラフ。
ほぼ毎年行われている日本の内閣府による世論調査の結果と大きな違いは無い。2011年春に好感意見が急増しているのは、震災における米軍の大規模な救助活動が影響したものとみて間違いはない。他方、2008年春の減退ぶりは、2007年夏以降に体現化した金融危機の火元との認識によるところか、あるいは大統領選挙の選挙戦における対日批判辺りの影響だろうか。
日本の対外意識を諸外国と比較すると
日本の対外感は諸外国と比べると大きな違いを見せるところが少なくない。いくつかの項目に関して回答者の自国がどのような対応をすべきか、いかなる状況にあると認識しているのかを質問し、同意を示した人の割合をグラフ化したのが次の図。なお中国では国防費に関わる質問の回答は無い。またEUとはEU諸国(10か国、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、オランダ、スウェーデン、イギリス、イタリア、ポーランド、スペイン)それぞれの中央値である。
他国への助力に関する積極姿勢は日本が一番高い値を示して、世界経済への注力も他国同様、むしろ高い水準にある。一方で軍事的方面での積極性は低く、自国の影響力の増加実情にも否定的。他国の動きと合わせ見ると、方向性の微妙な軸の違いが受け止められる。
米国はいずれも中庸だが、10年前と比べて影響力が拡大したとの意見は少数派。他方中国やインドでは軍事力方面の意見にも同意派が多く、影響力の増加にも自信を持っている。ただし他国への取り組みには消極的で、むしろ自国の勢力拡大に従事したい意向が透けて見えてくる。
あくまでもこれらの意見は、それぞれの国の大人による集約であり、その国自身の対外的戦略、外交方針とは直結しない。しかしながら国民の意図は少なからず政策に反映され、時として理由づけにされることもあるため、十分以上の注意を払うべきものであることは言うまでもない。
■関連記事:
安倍外交をアジア・アメリカはおおむね評価、反発するは中韓のみ
※Japanese Back Global Engagement Despite Concern About Domestic Economy
日本国内において2016年4月26日から5月29日にかけて都道府県別に仕切り分けされた上での固定電話番号7割、携帯事業会社の構成比率を元にした携帯電話番号3割に関して、日本語による通話を行い、応答した人が18歳以上であればインタビューを実施した結果によるもの。サンプル数は1000件。年齢、性別、教育、居住地域の人口密集度合いによるウェイトバックが実施されている。