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アン・ヘイシュの長男と元恋人、遺産の管理をめぐって法廷争い

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
アン・ヘイシュとジェームズ・タッパー(写真:ロイター/アフロ)

 今年8月、悲劇的な車の事故で亡くなったハリウッド女優アン・ヘイシュの長男と元恋人が、遺産の管理などをめぐって争いを続けている。今週、判事は、ヘイシュの長男ホーマー・ラフーンに一時的管理権の延長を与えたが、来月末にも双方はまた裁判所に出廷する予定で、決着はついていない。

 ヘイシュの遺産は、およそ40万ドル(約5,900万円)。出演作の再使用料や著書の印税などで、将来も継続的にお金が入ってくると見られる。ホーマーが遺産を管理することに反対しているヘイシュの元恋人は、ヘイシュの次男アトラス・ヘイシュ・タッパーの父親である俳優ジェームズ・タッパー。ホーマーは、アンの元夫コールマン“コーリー”・ラフーンとの間に生まれた子供で、現在20歳だ。アンとジェームズは2018年に破局している。

 先に遺産の管理人になりたいと申し出たのは、ホーマー。彼は母に遺書がないことを根拠にしたが、それに対してジェームズは、2011年にアンから送られてきたメールが遺書に当たると言い出した。ジェームズが提示したそのメールで、アンは、自分が死んだ場合、ジェームズに遺産の管理人になってほしいと書いている。しかし、ホーマーと彼の弁護士は、そのメールにアンの手書きの署名がないこと、また、遺書に必要なふたりの証人がいないことから、無効だと主張する。

 ホーマーが遺産の管理をする人物にふさわしくないとするジェームズの一番の根拠は、ホーマーがまだ20歳で、大学を中退し、仕事もしていないこと。「遺産の管理をするのはもっと経験と知恵のある人であるべきだ」と、自分こそ適任であるとジェームズは言い張る。加えて、ホーマーに遺産を管理させれば、弟であるアトラスとの関係に悪い影響が出るとも、ジェームズは警告した。

 だが、判事は、「カリフォルニア州では、大学を出ていなくても、読み書きができなくても、遺産の管理人になれる」と、ホーマーが現在どんな状況にあるのかは遺産の管理人になる資格があるかどうかに関係ないと一蹴。弟との関係についても「それを理由に、遺産の管理人になりたいと言っている人の申し出を拒否し、優先順位の低い人にその権利をあげるというわけにはいかない」と否定した。

 ジェームズはまた、13歳の実子アトラスの後見人になることも申請している。これに対し、ホーマーは、「利益相反に当たる」とし、中立な立場にある人をアトラスの後見人につけることを要求。ジェームズが後見人になると、アンの遺産のアトラスの取り分が入った場合、それをどう使うかを彼がコントロールすることができるのだ。ジェームズは「家族の中でやったほうが良い」と主張するが、ホーマーは、そうなるとアトラスに不利益が生じると述べている。

「ボルケーノ」「6デイズ/7ナイツ」「サイコ」などの映画で知られるアンは、今年8月5日、猛スピードで運転していた車を民家に突っ込むという大きな事故を起こした。そこから大きな火事が起こったが、アンは車に閉じ込められ、消防隊員が駆けつけてからも救出に長い時間がかかっている。病院に運ばれた時は昏睡状態で、12日に脳死を言い渡され、14日に生命維持装置を外された。享年53歳。カメラマンの元夫コーリー・ラフーンとは、アンが当時の恋人エレン・デジェネレスについてのドキュメンタリー番組を作っている時に、監督とクルーとして知り合った。ジェームズとはテレビドラマ「Men in Trees」の共演で知り合い、元夫との離婚が成立したのと同時期にアトラスを出産している。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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