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4月の決定会合議事要旨からみた、日銀による7月の利上げの可能性

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は4月25、26日に開催された金融政策決定会合の議事要旨を公表した。先行きの金融政策運営についての議論のなかで、一人の委員は、「国際金融のトリレンマなどを踏まえると金融政策を為替の安定に割り当てるべきではないが、為替の変動が、企業の中長期の予想インフレ率や企業行動に影響を及ぼす場合には、物価に影響を及ぼすリスクが高まるので、金融政策での対応が必要となると述べた。」

 為替の安定のために金融政策を変更する必要はないとしても、物価が上昇しているなか、あまりに慎重にしすぎる対応は市場に隙を与えかねない。日銀は動けない、動けないといった意識を持つ市場参加者に対し、日銀は動けることを示すことも重要かと思う。

 「委員は、先行き、見通しに沿って基調的な物価上昇率が高まっていけば、金融緩和度合いを調整していくことになるほか、経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、金利を動かす理由となるとの認識を共有した。」

 少なくとも現在の日銀の方向性が利上げに向いていることはたしかである。これは3月にマイナス金利解除を決めてから、緩和方向しか向いていなかった姿勢を完全にあらためている。問題はさらに一歩踏み出すタイミングとなろう。

 「ある委員は、政策金利の引き上げについて、そのタイミングや幅に関する議論を深めることが必要であるとの認識を示した。」

 果たしてこの4月の会合と6月の会合で議論が深まっていたのか。6月にも利上げを決定する可能性はなかったのか。

 「一人の委員は、緩和度合いの調整ペースは経済・物価見通しの確度に応じて変化するが、先行きの急激な政策変更を避けるために、確度が十分に高くなる前から、経済・物価・金融情勢に応じて、緩やかな利上げにより緩和度合いを調整することも考えられると述べた。」

 緩和度合いの調整とあるが、物価が上がっている以上は緩和から引き締めへ転じることを示しても良いのではなかろうか。日銀は物価の番人ではなかったのか。

 「別の一人の委員は、経済にストレスを与えないように緩和度合いを調整するには、今後、見通しの確度の高まりに合わせて、適時適切に、政策金利を引き上げていくことが必要であると指摘した。」

 適時適切なタイミングが果たしていつなのか。6月ではなかった。そして、7月の金融政策決定会合では国債の減額という重要課題もあり、利上げまで議論するのは難しいとの見方もある。しかし、国債の減額については市場参加者との議論を通じて7月の会合までにある程度論点がまとまっている可能性がある。

 市場参加者との議論の内容も透明化させることでその進み具合も公表させれば良いと思う。最終的な落とし所としては、月額買入をどこまで減額するかという点にあると思う。その数値が会合前にある程度固まれば、1年から2年かけてそこまで削減するスケジュールを組めば良い。細かいスケジュールまで政策委員が決めることではないであろう。

 ということで7月の会合では最終的な国債減額の金額を決めるとともに、利上げも議論されて決定する可能性はあるとみている(いろいろと勢いで当初、7月利上げを予測していたのを6月に前倒ししてしまったことは反省している)。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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