大谷翔平のDL入りが意味するもの
エンゼルスは現地8日、大谷翔平選手を右ヒジじん帯の異常により10日間の故障者リスト(DL)入りさせたことを発表した。合わせて今後はキャッチボールも控えて3週間後に回復状況を確認する予定も明らかにしており、投手として長期欠場することは確定的となった。
すでに複数メディアが報じているが、中でも地元紙の『Orange County Register』紙が詳細をレポートしており、今回の負傷は決して楽観視できるような状況ではない。
6日のロイヤルズ戦で右手中指のマメにより4回で降板していた大谷選手がクールダウン後に右ヒジの張りを訴えたため、チームの遠征には同行せず翌7日にMRI検査を受けた結果、右ヒジ内側側副じん帯に「グレード2」のダメージが確認できた。その診断を受け回復を促すため、同時にPRP注射(自分の血小板を抽出し体内に戻す)と幹細胞注射を患部に打つ治療も受けたというものだ。
今回最も注目すべき点は、損傷の度合いが「グレード2」だということだ。地元紙の記事によれば、ビリー・エプラーGMは損傷の詳細についての説明を避けているようだが、「グレード1」ならあくまでじん帯の炎症でじん帯そのものに損傷はなく、逆に「グレード3」ならじん帯断裂を意味し速やかにトミージョン手術が必要とされている。つまり「グレード2」は単純な炎症ではなく、部分断裂も含めじん帯に何らかの損傷があったことを意味しているのだ。
すでにエプラーGMも「できれば手術を避けられることを願っている」と発言しているように、現時点では3週間の経過観察後の再検査で回復状況が良くなかった場合トミージョン手術の可能性も残されているのだ。いずれにせよヤンキースの田中将大投手がMLB挑戦1年目の2014年に同じ右ヒジ内側側副じん帯の部分断裂で長期欠場を余儀なくされたように、大谷選手も投手としてマウンドに戻ってこられるのは間違いなくシーズン後半戦になりそうだ。
今回のDL入りで気になるのが今後のエンゼルスの対応だ。とりあえず経過観察中の3週間はDL入りのままだろうが、再検査後にどう判断を下すかだ。投手としての復帰を最優先させDLから外さないのか、それとも治療として並行して指名打者として起用していくためDLから復帰させるのか、二刀流選手ならではの難しい判断が待ち受けている。
エプラーGMはあくまで二刀流で起用することが理想として、今回も投手としての復帰を優先的に考えDL入りを決めたようだ。だが打撃好調だったアンドレルトン・シモンズ選手も右足首捻挫でDL入りしたばかり。さらに大谷選手まで失うとなると、打線も相当な戦力ダウンになってくる。今後3週間のチームの戦い方が悲惨な状況になってくれば。やはり指名打者としての復帰も考えざるを得なくなってくるだろう。
大谷選手はエンゼルス入団直後にも、日本ハムから提出されたメディカルレポートに右ヒジじん帯のダメージ(この時は「グレード1」)でPRP注射を受けたことが記載されていたと米メディアが報じ、大きな騒ぎとなった。当時はエンゼルスも独自の検査を実施した上で獲得を決めているので、今回のDL入りと直接の関連性はないと考えていいだろう。
だがその一方で、今回のDL入りで日本ハム時代の起用法を踏襲しても、現在の大谷選手の投球ではどうしても右ヒジに負担をかけてしまうということが判明したことになる。これで復帰後は投手としての起用にさらに神経を使わなければならなくなったし、チームが将来的に見据えていた中5日登板も厳しくなってきたといわざるを得ない。
また仮に手術は回避できたとしても、田中投手が負傷後に投球フォームや投球スタイルの見直しを迫られたように、大谷選手も再発防止のため投球そのものを見直していかねばならなくなるだろうし、場合によっては160キロの速球を封印しなければならなくなることも想定される。
大谷選手が二刀流選手として大きな岐路に立たされたといっていいのではないか。