政府支出総額比率で主要国軍事費の動向をながめ見る(2020年公開版)
国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)の公開資料を基に、主要国の軍事費を政府支出の総額比率の視点から確認する。各国の軍事費の実情を推し量ることができよう。
そのSIPRIの発表によると直近となる2019年における各国軍事費(米ドル換算)で、トップはアメリカ合衆国、次いで中国、そしてインドの順となっている。
これは単純に米ドル換算して比較したもの。国によって内情が異なることから、単純な額面比較だけでは問題では無いかとの指摘もある。そこでそれぞれの国の政府支出総額、つまり国家予算に占める軍事費の比率を算出する。
次に示すのは2019年時点における米ドル換算による軍事費上位10か国の、それぞれの国の政府支出総額に占める軍事費の割合。例えばアメリカは9.4%とあるので、国家予算全体の1割近くは軍事費にあてられていることになる。また過去値を用い、精査可能な範囲での過去の比率推移を折れ線グラフ化する。
それぞれの国の各年における経済状況や周辺環境にも大きく影響するため、一概にどの程度が望ましい値なのかに関する基準値は無い。経済力に見合わない軍事費負担が国そのものの経済を不安定化させることも事実。
一方、同じ軍事費でも政府支出全体が増加すれば比率は下がる。政府支出総額に対する比率の低下は、単に軍縮・予算不足による削減以外に、経済力の伸張を意味する場合もある。
中東諸国は概して比率が高い傾向がある。そのため額面そのものも大きくトップテン入りしたサウジアラビアのために、グラフ全体の縦軸の最高値を引き上げる必要が生じる状況が生じている。それでもかつて示していたピーク時の約40%と比べ、直近では20.3%にまで落ち着いている。
その他の国ではロシアはいくぶん増加傾向にあるが(ここ数年では前年比で減少)、おおよその国では減少傾向にある。中国も総額比率では減少しているが、これは他国とは少々事情が異なり、経済成長による総支出額に軍事費の増加が追い付いていないため。また今件で公開されている軍事費に関して中国の値は内情が推し量りにくいため、推測値となっているのも要因だろう。
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