開幕戦を観て「今年もスーパー耐久選手権は面白い」と断言できる、これだけの理由
2024年のスーパー耐久選手権は、スポーツランドSUGOから始まった。東北・宮城県にあるこのサーキットは高低差の大きいダイナミックなコースであるが、そもそもヤマハがオートバイのために開設したコースであるため、他の国際格式のサーキットと比べるとコース幅がやや狭い。
そのため昨年は土曜日に予選を行い、日曜日には2グループに分けてそれぞれ3時間の決勝レースを開催していた。それでは耐久レースとしてはやや短いという声があったのか、今年は土曜日と日曜日に分けてそれぞれ予選/決勝を行なう方式が採用された。これにより決勝レースはそれぞれ4時間耐久となって、よりスーパー耐久らしい戦いぶりが期待できるものとなった。
2024年になってマシンを変更したり、カラーリングを変更してきたチームもあり、ピットやコースグリッドは賑やかな雰囲気に包まれている。それもメーカー系や豪華なスポンサーがついた華やかなチームだけでなく、プライベーターらしいコンパクトなチームも親しみを感じやすく応援したくなる。そんな幅の広いエントラントもスーパー耐久の魅力だ。
それでも2グループに分かれているので、グリッド上のマシンは通常の半分程度。グリッドウォークの時間内にじっくりと全部を見て回れた。
マツダは今シーズン、マシンのカラーリングを一新してきた。昨年はホワイトにシルバーのロゴマーク、グリーンの差し色をあしらったものだったが、今年はグレーにホワイトのロゴ、差し色はオレンジとなっている。ホイールや各部のブラックアウト、ボトムのガンメタなどで精悍な印象はより強調された印象だ。
土曜日はグループ2の予選と決勝が行われた。単純にグループ1=速いクラス、グループ2=遅いクラスとはなっておらず、グループ2でもGT4マシンで争うST-Z、ST-1(現状ではKTMの1台だけだが)、ST-QのマツダとGRスープラの3台が走り、ST-5だけのレースにはなっていない。
ST-5にしてもロードスター5台によるバトルがかなり見もので、フィットやデミオ、ヤリスの力走ぶりも見ていて熱くなるものがあった。実際には混走なので、ST-ZがST-5のマシンの間を縫うように抜いて行き、ST-5はできるだけタイムロスが少ない抜かれ方をして、その上でライバルと差を付けられるかがクラス内での順位を決めることにつながるのだ。
ST-Qはメーカーの開発車両だけに、3台それぞれが異なる構成となるため速さの比較をすることはできないが、昨年から継続して参戦しているマシンばかりで、安定感のある速さを見せた。
そう思っていたらちょうどレースの半分が過ぎたあたりでセーフティカーが入るアクシデントが発生。スローダウンにより、各車の間隔は一気に縮まった。
そして黄旗解除のレース再開時に、それは起こった。SPコーナーで3ワイドの状態、一番外側にいたMAZDA3は他車から接触されてコースアウト、スピン…。コース幅の狭いSUGOというリスクが表面化した瞬間だった。
幸いにして再スタートを切れたMAZDA3は、ピットに辿り着くことができた。そしてボディの応急措置とタイヤ交換、ダメージの有無を確認して再スタート。ほぼ変わらぬペースで再び走り続けることができたのは幸運と言えるだろう。
グループ2は結局、昨年の王者52号車の埼玉グリーンブレーブス スープラGT4が勝利を収め、2位に26号車のラフィーネ日産メカニックチャレンジNISMO Zが入り、3位にはテクノファーストR8LMS GT4が入った。その後ろにはポルシェ・ケイマンGT4RS、メルセデスAMG GT GT4などが続き、レース中もそれぞれ異なった速さや排気音を奏で、観客を刺激してくれた。
日曜日のグループ1もエントラントのレベルの高さを感じさせてくれる展開をみせた。GT3車両で争われるST-Xクラスは2台のAMG GTとレクサスRC、日産GT-Rが白熱したトップ戦いを繰り広げ、昨年の覇者ゼッケン1の中升 ROOKIE Racingが勝利を収めた。
ルーキーレーシングがAMG GTで参戦しているのは、近い将来レクサスのスーパースポーツで参戦するための準備と噂されているが、それはいつ頃になるのか。すでにチャンピオンを獲得したのだから、ノウハウは十分とも言えるので、あとはマシン次第じゃないだろうか。
SPOONのS耐への復帰とオーリンズNATSがマツダ・ロードスターからシビック・タイプRへとマシンチェンジを行なった結果、今シーズンはエントリーが増えた現行シビック・タイプRもS耐を盛り上げてくれる新たな要素となった。これは嬉しい!
けれども開幕戦は欠場したスバルの社内チームSDAは、今後マシンをWRX S4にスイッチするらしいのでGR86/BRZが減ってしまうのがちょっと惜しい。
またスーパー耐久選手権を主催しているS.T.O(スーパー耐久機構)が、この6月から組織変更して未来を考えたSTMO(スーパー耐久未来機構)へと発展することが発表された。今後はレースはもちろん、サーキットを飛び出して、モータースポーツやクルマ社会の未来に貢献する活動を行うらしい。これはトヨタがパワートレイン関連で行っている全方位開発に近い、広がりを感じさせる構想だ。
そもそもの発端が、ST-Qなど自動車メーカー参入によりS耐が賑やかになって、従来の運営母体では対応が難しくなってきたことだから、自動車メーカーやサプライヤーが運営にも力を貸すというのは自然な流れなのかもしれない。
ともあれ開幕戦は2つの決勝とも見応え十分で、白熱したバトルを各クラスで繰り広げてくれた(開幕戦SUGOの結果はこちら)。
さあ、次戦は富士24時間耐久の、富士スーパーテック24時間レースである。15歳以下の子供連れなら、超お得なチケットも用意されているのは素晴らしい。一昼夜を走り切る狂乱のレースを楽しもう。