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笑顔感激サプライズ。西武、ソフトB、楽天、ロッテで活躍の細川亨へ手づくり引退式

田尻耕太郎スポーツライター
引退試合で和田投手からセンター前ヒットを放ち、笑顔で一塁へ駆け出す

 西武ライオンズから福岡ソフトバンクホークス、東北楽天ゴールデンイーグルスを経て最後は千葉ロッテマリーンズのユニフォームを着て今季限りで現役引退をした細川亨さんの引退式と引退試合が、12月13日に福岡県筑後市のタマホームスタジアム筑後で行われた。

 主にホークス在籍時に知り合った福岡県内の有志が中心となり実施されたこの企画。そんなワケもあって、細川さんはホークス時代のユニフォーム姿で球場にやってきた。「上はホーム用があったけど、ズボンが見つからなくて仕方ないからビジター用で来ちゃいました(笑)」。また、ホークスで同僚だった和田毅投手や本多雄一一軍内野守備走塁コーチも駆けつけた。

特別ゲストに恩師の伊東勤さん

伊東さんはこのために名古屋から駆けつけた
伊東さんはこのために名古屋から駆けつけた

 まず思わぬサプライズから始まった。和田投手の開会宣言に続いて行われた始球式。特別ゲストがひょっこりとグラウンドに現れた。登場したのはなんと伊東勤さんだった。

 伊東さんは細川さんが西武に入団した2002年当時、正捕手と総合コーチを兼任。2004年からは監督、細川さんが正捕手という間柄で、プロ野球人としての基礎を築き上げてくれた恩師である。

西武時代の細川さん
西武時代の細川さん写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 細川さんはもちろん、ほとんどの参加者も特別ゲストの登場を知らなかったためにグラウンドは騒然。その中で、細川さんだけは声を上げることもできずただ立ち尽くしていた。

「え、ほんとに、嘘でしょ」

 頭の中は大混乱。その中で急いでホームベースの後ろで構えると、マウンドの伊東さんから1球が投じられた。

始球式の様子
始球式の様子

「涙をこらえるのに、ずっと必死でした」

 その後は参加者全員による引退試合が行われた。もちろん細川さんはキャッチャーでフル出場。打順は1番で、プレーボール直後にさっそく打席に立った。相手チームの先発は和田投手。慣れない軟式球にお互い苦労しながらも、細川さんは見事にセンター前ヒットを放った。

 試合は珍プレー続出。陽が落ちた後は気温もぐっと下がったが、細川さんは体が自然と反応するらしくしっかりベースカバーの動きも行うなどしていたため、やっぱり顔には汗がにじんでいた。

選手人生を締めくくる、ラスト「セカンドスロー」式
選手人生を締めくくる、ラスト「セカンドスロー」式

 試合も白熱した展開となり、最後は同点に追いついたところでめでたく引き分け終了かと思いきや、まさかの延長戦に突入する筋書きのない展開に。ラストシーンでは細川さんの長男がマウンドに立ち、細川さんがマスクを被る親子バッテリーが実現。そして細川さんの長女が打席に立ち最後のワンプレーが行われて試合が締めくくられた。

笑顔の胴上げ
笑顔の胴上げ

 試合後はみんなで細川さんを胴上げした。

「たくさんの土地でお世話になり色々な場所が特別ですが、福岡はやっぱり特別です。西武でプロ野球人生がスタート。伊東さんは僕にとって『一生越えられない存在』だと思っています。西武時代に伊東さんに教わって、鍛えてもらったから今がある。野田(浩輔)さんや(炭谷)銀仁朗とやった練習は、今の選手たちは出来ないと思う。怪我するんじゃないですかね。それくらいやりました。

 西武でも自信をつけさせてもらいましたが、本当の自信をつけてもらったのは福岡に来てから。ホークスに来て勝って、自分のやってきたことを確かめることが出来ました。チームにも人にも恵まれました。たくさんの人に出会えて感謝しかない」

 来季からは、また違うユニフォームに袖を通す。

 新しく立ち上がる九州独立プロ野球リーグに参戦する、火の国サラマンダーズ(本拠地熊本)の初代監督に就任したことが、12月8日に発表されている。

火の国サラマンダーズの初代監督に

「すごく熱心なオファーを頂きました。本当は野球から離れて趣味の釣りに没頭しようと思ったけど(笑)。だけど、結局いろんな人と話をしているときも、何か考える時も、いつも野球のことなんです。やっぱり野球から離れられない。

 サラマンダーズではまず、選手たちに人間性を求めたい。人の内面は野球のプレーに現れます。球団の神田社長も『カッコよくあれ』と言います。私生活でも野球人としても、カッコいいと思ってもらえる選手、そしてチームにしていきたい」

 九州独立プロ野球リーグは、来年3月20日に開幕。火の国サラマンダーズと大分B-リングスの正会員2球団による対抗戦が軸となり、ソフトバンク3軍や四国アイランドリーグplusの4球団、沖縄プロ球団の琉球ブルーオーシャンズなどとの交流試合を含めた年間80試合程度の公式戦が行われる予定だ。

 細川さんの次なるチャレンジにも、大いに注目して期待をしたい。

(※引退式当日の写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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