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世界一ハッピーな動物や絶景に感動。直行便就航のパース&西オーストラリアが面白い!

寺田直子トラベルジャーナリスト 寺田直子
世界一ハッピーな動物クオッカと出会えるのは西オーストラリアだけ/筆者撮影

西オーストラリア州は豪州大陸の約1/3を占める最も広い州。その州都がパースだ。パースはインド洋に面した西海岸線に近く、自然と都市がゆるやかに調和した美しい街。故・兼高かおるさんが「世界で最も美しい街、一番住みたい街」と絶賛したこともあるほど。そのパースに今年2019年9月1日からANAがデイリーで直行便を就航する。日本~パース間の直行便はかつてカンタス航空が週3便で成田から運航していたが、2011年に運休。今回、8年ぶりの直行便再開となる。

パース沖合に位置するロットネスト島。遠くにパース市街を見る近さだ。一般の車利用は不可。滞在中はレンタサイクルかバスツアーに参加して島内めぐりを楽しむ/筆者撮影
パース沖合に位置するロットネスト島。遠くにパース市街を見る近さだ。一般の車利用は不可。滞在中はレンタサイクルかバスツアーに参加して島内めぐりを楽しむ/筆者撮影
インド洋に面し、島の周囲には感動するほど美しいビーチや入り江が点在。これもロットネスト島の魅力だ/筆者撮影
インド洋に面し、島の周囲には感動するほど美しいビーチや入り江が点在。これもロットネスト島の魅力だ/筆者撮影
グランピングが楽しめるテント式の客室がユニークなディスカバリー・エコビレッジ・リゾートはロットネスト島最新の宿泊施設/筆者撮影
グランピングが楽しめるテント式の客室がユニークなディスカバリー・エコビレッジ・リゾートはロットネスト島最新の宿泊施設/筆者撮影
これが話題のクオッカ。普通に撮ってもかわいいが下からカメラを向けて撮ると笑ったような表情になる。大きなカメラよりiPhoneなど携帯で撮影したほうがうまく撮影できる/筆者撮影
これが話題のクオッカ。普通に撮ってもかわいいが下からカメラを向けて撮ると笑ったような表情になる。大きなカメラよりiPhoneなど携帯で撮影したほうがうまく撮影できる/筆者撮影
島内にはセルフィー時の注意看板が。人に慣れているが野生動物なので触ったりエサをあげるのは厳禁。近づいて鼻や顔を噛まれる観光客も多いので気をつけたい/筆者撮影
島内にはセルフィー時の注意看板が。人に慣れているが野生動物なので触ったりエサをあげるのは厳禁。近づいて鼻や顔を噛まれる観光客も多いので気をつけたい/筆者撮影

オーストラリアといえばシドニーやウルル、ケアンズなどが有名だが、パースもとても魅力的だ。パース、さらに足をのばした西オーストラリア州内でしかできない、出会えないユニークな体験も多い。たとえばロットネスト島(Rottnest Island)。パース近郊フリーマントルからボートで行く日帰りツアーも楽しめるリゾートアイランドだが、有袋類クオッカがインスタ映えすると世界的に大ブレイク中。オーストラリア本土の小さなコロニーを除けば、クオッカが群生するのはロットネスト島だけ。撮る角度でまるで笑っているかのような表情になるため、「世界で最もハッピーな動物」とも言われる。島のいたるところで見かけるので遭遇率も高い。ロットネスト島を訪れたクリス・ヘムズワース、ヒュー・ジャックマンなどハリウッドスターやテニス選手ロジャー・フェデラーたちもクオッカとのセルフィーをインスタグラムで公開し話題になっている。パースから日帰りのツアーで行くのもいいが、クオッカは本来夜行性の動物。夕方になるとあちらこちらから出てくるのでクオッカ狙いならぜひ1泊したい。島内にはオーシャンビューのグランピング的なエコロッジなど数軒の宿泊施設がある。

こんな角度で撮るとピンク色のハートのよう。セスナは何度か旋回してくれるので左右どっちに座っても確実に写真を撮ることができる/筆者撮影
こんな角度で撮るとピンク色のハートのよう。セスナは何度か旋回してくれるので左右どっちに座っても確実に写真を撮ることができる/筆者撮影

もうひとつネットで話題になっているのがピンクレイク。正式名称はヒリアー湖(Lake Hillier)。西オーストラリア州南部エスペランスという海沿いの街から約130キロ。沖合に浮かぶミドル島にある湖だ。陸や海路で行くことができないため見るためにはエスペランスから発着するセスナによる遊覧ツアーで行くことになる。水中に生息する藻やバクテリアの影響によりピンク色に変化するといわれているが、筆者がツアーに参加した際は曇っていたからかややグレーがかったピンク色に見えた。写真をうまく切り取るとピンクのハートに見えるのもインスタ映えする。

鮮やかなブルーの海とピュアホワイトのビーチは「オーストラリアで最も美しい」と賞されるラッキーベイ/筆者撮影
鮮やかなブルーの海とピュアホワイトのビーチは「オーストラリアで最も美しい」と賞されるラッキーベイ/筆者撮影
カンガルーと美しすぎるビーチとのツーショットはオーストラリアでも極めて珍しい/筆者撮影
カンガルーと美しすぎるビーチとのツーショットはオーストラリアでも極めて珍しい/筆者撮影
ラッキー・ベイを含むエスペランスの大自然を満喫できるツアーを催行するエスペランス・エコ・ディスカバリー・ツアーズ。4WDで砂丘やビーチをぐいぐい進んでいく/筆者撮影
ラッキー・ベイを含むエスペランスの大自然を満喫できるツアーを催行するエスペランス・エコ・ディスカバリー・ツアーズ。4WDで砂丘やビーチをぐいぐい進んでいく/筆者撮影

また、エスペランスから4WDツアーで訪れることができるケープ・ル・グランド国立公園(Cape Le Grand National Park) も必見!中でも公園内のラッキー・ベイ(Lucky Bay)はオーストラリアで最も美しいビーチと多くの人(含む筆者)が絶賛&感動するまぶしすぎるほど真っ白なビーチとクリアブルーの海が延々と続く絶景スポット。さらにユニークなのが、ビーチに野生のカンガルーが出没すること。カンガルーの多くは内陸部で多く見かけるが、ラッキー・ベイのようにビーチにいるのは珍しい。これもまた西オーストラリアならではの珍光景だといえる。

長年の浸食によって誕生したウェーブ・ロック/筆者撮影
長年の浸食によって誕生したウェーブ・ロック/筆者撮影
ウェーブ・ロックの近くにあるもうひとつの珍風景、カバのあくびと名付けられた「ヒッポズ・ヨーン」/筆者撮影
ウェーブ・ロックの近くにあるもうひとつの珍風景、カバのあくびと名付けられた「ヒッポズ・ヨーン」/筆者撮影

エスペランスへはパースから小型の国内線で約1時間40分。時間があればレンタカーを借りてセルフドライブで行くのも楽しい。距離にして約700キロ。車での所要時間は8~10時間。オーストラリアの道は日本同様に左側通行で、郊外は車も少なく普段運転しているのであればそれほどハードではない(ただし、夕方から夜になるとカンガルーや小型の有袋類などが道路に飛び出してくるので夜間の運転は避けること)。

パース~エスペランス間にはもうひとつの珍風景、まるで巨大な波のように深くえぐれたウェーブ・ロック(Wave Rock)や、カバのあくび(Hippos Yawn)と名付けられたなんとも力の抜けたゆるい観光ポイントもある。近くにモーテルがあるのでそこで1泊、のんびりゆっくり西オーストラリアの広大さを実感しながら自分のペースでセルフドライブを楽しんでほしい。

このほか、西オーストラリア州を代表する観光スポットとして、「荒野の墓標」と呼ばれる砂丘の上の奇岩群ピナクルズ(Pinnacles)、世界遺産に登録される地球の生命体の起源となる原始的な藻類ストロマトライト(Stromatolite)が現存するシャーク・ベイ(Shark Bay)、オーストラリア最後の秘境とされる北部にあるバングル・バングル(Bungle Bungle)、かつてのゴールドラッシュの町カルグーリー(Kalgoorlie)など広大な州には一度は訪ねたい絶景、感動空間が点在する。

ジャラーと呼ばれる背の高いユーカリの並木が美しいキングスパーク。パース市街を一望する絶景ポイント/筆者撮影
ジャラーと呼ばれる背の高いユーカリの並木が美しいキングスパーク。パース市街を一望する絶景ポイント/筆者撮影
開発中のエリザベス・キー。高級ホテル、ザ・リッツカールトンも開業予定となっている/筆者撮影
開発中のエリザベス・キー。高級ホテル、ザ・リッツカールトンも開業予定となっている/筆者撮影
観光スポットのロンドン・コート。お土産屋が並ぶ/筆者撮影
観光スポットのロンドン・コート。お土産屋が並ぶ/筆者撮影
CATと呼ばれる巡回バスは無料で利用できる公共交通機関/筆者撮影
CATと呼ばれる巡回バスは無料で利用できる公共交通機関/筆者撮影

そこまで時間がない。という場合はまずはパースを短期間で満喫するのもおすすめだ。パースの街はコンパクトにまとまっているので市内散策なら徒歩と、誰でも無料で乗れる巡回公共バス通称キャット(CAT)を乗りこなせばほぼ網羅できる。見どころはパースの街を一望する展望ポイントがあるキングス・パーク(Kings Park)、開発されおしゃれなレストランやカフェが集まったベイサイドのエリザベス・キー(Elizabeth Quay)、からくり時計がある英国風のアーケード、ロンドン・コート(London Court)、州の特産品である金をテーマにしたミュージアムとゴールドショップを兼ねたパース・ミント(Perth Mint)など。パース・ミントでは純金を当日のレートで買うことができるほか特別記念コインなども販売している。

日本でも知名度のあるウェスティンホテルも開業/筆者撮影
日本でも知名度のあるウェスティンホテルも開業/筆者撮影
デザインホテル、QTパースはレストランやバー空間がおしゃれで若い層に人気だ/筆者撮影
デザインホテル、QTパースはレストランやバー空間がおしゃれで若い層に人気だ/筆者撮影
「オーストラリアNo.1」となったコモ・ザ・トレジャリーは憧れのホテル/筆者撮影
「オーストラリアNo.1」となったコモ・ザ・トレジャリーは憧れのホテル/筆者撮影

ホテルは2018年オープンしたのがザ・ウェスティン・パース。市内のメインストリートのひとつヘイ・ストリート沿いに位置。368室という規模なのでツアーでも数多く利用されている。前述のエリザベス・キーやロンドン・コート、デパートやスーパーマーケットなども徒歩圏内。デザイン系が好みならばキュー・ティー・パース(QT Perth)がいいだろう。ゴールドコースト、シドニーなどでも運営するシャレたデザイン空間で知られるホテルグループで、ルーフトップバーやレストランは地元でも人気のナイト&ダイニングスポットになっている。そして、ホテル好きならほかの予算を削ってでも泊まってほしいのがコモ・ザ・トレジャリー。「オーストラリア・ベストホテル」に選ばれたパースきってのラグジュアリーホテルで郵便局、裁判所、財務省の19世紀に建てられた3つの歴史的建造物をみごとに融合。外観はクラシックなままに内部は洗練されたコンテンポラリーな仕様は実にエレガント。バリ島やブータン、プーケットなどでリゾートを手がけるコモはアジアンリゾート好きには知られた存在。パースではシティホテルの位置づけだが、インテリアのセンス、秀逸なスパ施設、好感度のあるホスピタリティはゆるぎがない。建物内にはパースで最もいきおいのあるレストランのひとつペティション(Petition)や、「アジアのベストレストラン50」でナンバーワンを獲得したタイ料理シェフ、デビッド・トンプソンによるロン・チム(Long Chim)、先住民族アボリジニの食文化にインスパイアされたモダンオーストラリア料理を提供するワイルドフラワー(Wildflower)などグルメシーンも多様性があり高品質だ。

地元生まれのマイケルがガイドするフリーマントル・ツアー。ローカル目線の味のあるポイントを歩きながら教えてくれる/筆者撮影
地元生まれのマイケルがガイドするフリーマントル・ツアー。ローカル目線の味のあるポイントを歩きながら教えてくれる/筆者撮影
醸造見学後はもちろんビールの試飲!/筆者撮影
醸造見学後はもちろんビールの試飲!/筆者撮影

パース滞在中、ぜひ訪れたいのはフリーマントル。インド洋に面した潮風を感じる風光明媚な港町だ。電車で約30分、スワン川をゆくフェリーなら約1時間。日本語ガイドによるパース市内からの半日~1日ツアーなどもある。今回は地元生まれでフレオ(フリーマントルの略称)をこよなく愛するマイケルが立ち上げたこだわりスポットを訪ねる英語のウォーキングツアーに参加した。

フリーマントルに行くなら金~日曜の週末のみ開催するフリーマントル・マーケット(Fremantle Market)はやはりハズしたくない。なんと1897年から続く歴史あるマーケットで、内部にはフルーツや野菜などの生鮮品からハチミツ、ジャム、チョコレートなどホームメイドアイテムやTシャツ、ぬいぐるみなどお土産までさまざまな店がズラリと並ぶ。またラーメン、ピザ、アイスクリーム、スムージーなどスナック類も食べられるので終日にぎわっている。マーケット周辺もシーフードレストラン、ハンバーガーショップ、カフェなど週末をのんびり過ごすのに最適の場所が並び、こちらも楽しい。地元の常連客や観光客両方で大繁盛するのがリトル・クリーチャー・ブリュワリー(Little Creatures Brewery)。パース生まれのクラフト系ビールブランドの醸造所で巨大なヨット倉庫だった跡地を改装。店内でフレッシュなフレーバービールを味わうことはもちろん毎日行われる見学ツアーに参加することもできる。

ANAのフライトスケジュールは成田発NH881が11:10、パース着同日20:15、帰路パース発NH882が21:45、成田着が翌日08:25。パース&フリーマントルのみ弾丸であれば金曜出発、土曜終日現地滞在、日曜に出発(月曜朝戻り)などでもしっかり楽しめる。ロットネスト島も加えるともう1日欲しい。ピナクルズやエスペランスなど広範囲に旅する場合は1週間~10日間は最低でも確保したいところだ。パース空港からは西オーストラリア州内はもちろんメルボルンやシドニーなど主要都市への国内線も充実している。広大な分だけ何度も訪ねることで深く、豊かな思い出が刻まれるのがオーストラリアの旅のだいご味。その一歩をパースからはじめてみてはどうだろう。

<データ>

オーストラリア政府観光局(日本語)

西オーストラリア州政府観光局(日本語)

トラベルジャーナリスト 寺田直子

観光は究極の六次産業であり、災害・テロなどの復興に欠かせない「平和産業」でもあります。トラベルジャーナリストとして旅歴40年。旅することの意義を柔らかく、ときにストレートに発信。アフターコロナ、インバウンド、民泊など日本を取り巻く観光産業も様変わりする中、最新のリゾート&ホテル情報から地方の観光活性化への気づき、人生を変えうる感動の旅など国内外の旅行事情を独自の視点で発信。現在、伊豆大島で古民家カフェを営みながら執筆活動中。著書に『ホテルブランド物語』(角川書店)『泣くために旅に出よう』(実業之日本社)、『フランスの美しい村を歩く』(東海教育研究所)、『東京、なのに島ぐらし』(東海教育研究所)

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