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「新型コロナウイルスに花崗岩が効く!」デマはどのように拡散したのか? 効くと思われた理由とは?

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
花崗岩(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 新型コロナウイルスへの感染対策に花崗岩(かこうがん)が効くというデマが広がり、フリマアプリで高額販売される事態が起きています。

 なぜ、新型コロナウイルスに花崗岩なのか?

 デマが発生した流れと、新型コロナウイルスに花崗岩が効くと言われて理由――デマの内容を調べました。

デマの発信元はmixi日記か

 花崗岩デマについて書いてある個人ブログを追っていくと、いずれもひとつのブログに辿り着きます。2月1日に書かれたとあるmixi日記です。

 日記のタイトルは「新型肺炎。2月4日頃日本はパニックになるだろう(日刊ゲンダイ)。対策を徹底的にチェックしましょいう。」(原文ママ)。

 日記の内容は

新型コロナウイルスには免疫力を高めることがただひとつの対策であり、そのために「テロメアの足を長くする」ことが必要(おそらくテロメア長を延ばすの意味。テロメア長で寿命がわかる)。

テロメアを長くする方法は自然界の放射線(自然放射線)を受けること。そのためにはラジウム石やラドンをふくむ花崗岩が良い。また、ラドンは肺に直接入るので新型肺炎にはとくに効く。

出典:問題のmixi日記より。内容は筆者がまとめたもの。

 というものです。

 この日記を信じた人たちが、自分たちのブログを通じて「新型コロナウイルスに花崗岩が効く!」とのデマを拡散させていきました。

転売商法のためではなく、本当に信じてのもの

 先日のトイレットペーパーデマの件では、「転売目的のためだ」との批判もありました(トイレットペーパー不足デマの件で叩かれた人物は「転売はしていない」と後日の謝罪で語っている。プロフィールにメルカリについて書いていたが、マスクなどの転売は確認されていない)。

 しかし、この日記を書いた人物は本当に「花崗岩が良い」と信じて発信を行っているようです。

 当初はこの人物が『自然放射線vs人工放射線』といった書籍を出していたため、商売目的のためかと思いました。けれども日記のなかで「いますぐニニギ石を拾ってくるか、ホームセンターで売っている庭用の花崗岩のブロックや板を部屋中に置く」などと案内しており、転売目的ではないと考えられます。

コロナ感染が広がっている韓国は花崗岩地層

 まあ頭から信じ込んでいる人が、花崗岩を良いものだと拝むのは個人の自由だと思います。

 ただ、不安に思っている人が騙されるのは良くないので、いま起きている事例から花崗岩を持っていても新型コロナウイルスへの対策にならないことを紹介します。

 2月末から、韓国南部の大邸(テグ)を中心に感染が爆発的に広がっています。

 その韓国が位置する朝鮮半島は、花崗岩が非常に多い地層です。

 つまり、デマを流した人物が信じる「自然放射線」の量が多い場所なのです。

 このことは過去にニュースでも報道されており、いまも在大韓民国日本国大使館が放射線量を発表し続けているため知っている人もいることでしょう。

 ちなみに3月4日12時時点の放射線量は東京が0.038マイクロシーベルト、いわき市が同0.059、福島市が同0.130に対し、韓国ソウルは同0.119です。韓国ソウルの自然放射線量は東京の約3倍です。

 念のため大邸市の放射線量も、韓国原子力安全技術院のホームページで調べてみました。3月4日23時時点の放射線量は同0.108でした。

 つまり生まれたときから花崗岩による自然放射線を日本人より浴びているにもかかわらず、新型コロナウイルスは花崗岩パワーで殺菌されず、高まっているはずの免疫力も勝てず、感染が広がっているという事実だけがあります。

 不安でいろいろなものにすがりたい気持ちは理解できますが、デマにすがるのではなく手洗い・うがい・マスク・風通しの悪い場所に行かないといったことを心がけるようにしてください。

3月5日16時23分追記

 記事の内容とは関係ないのですが、「花崗岩」のイメージ写真をべつのものと差し替えました。白いと映えないなと思いあまり花崗岩っぽくない写真を選んだ結果、「えっ、これ花崗岩?」と気にされる方が一定数いましたので……。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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