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元ジャニーズ歌手の性的被害、NHKも報じる。報じたメディア、報じないメディアはどこか

藤代裕之ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

ジャニーズJr.として活動していた歌手のカウアン・オカモトさんが、ジャニーズ事務所に所属当時ジャニー喜多川氏による性的被害を受けたことを日本外国特派員協会(FCCJ)で4月12日に記者会見した。これに対し「大手メディアはなぜ報じないのか」という批判が起きているが、新聞は13日朝刊で全国紙から地方紙まで幅広く報じており、テレビではNHKも遅ればせながら報じている。

■新聞は全国紙とブロック紙を中心に報道

新聞・雑誌記事を横断検索できる「Gサーチ」を利用し、報道状況を確認した。キーワード「ジャニーズAND被害」「ジャニーズAND会見」で1週間分を検索したところ、全国紙・通信社では、共同通信、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞。ブロック紙・地方紙では、北海道新聞、中日新聞、東奥日報(青森)、岩手日報、秋田魁新報、河北新報、神奈川新聞、静岡新聞、中国新聞、愛媛新聞、四国新聞、西日本新聞、熊本日日新聞、宮崎日日新聞、沖縄タイムス、琉球新報が報じていることが確認できた。「Gサーチ」に入っていない日本経済新聞も報じている。

全国紙の記事で最も文字数が多かったのは朝日新聞の1,230字(社会面)、見出しは「「ジャニー喜多川氏から性被害」 元ジャニーズJr.の男性会見」。朝日新聞は1面のインデックスでも紹介しており、重要なニュースと判断したことが伺える。毎日新聞は548字(総合面)、産経新聞は324字(第3社会面)だ。

共同通信は「元ジャニーズ「性的被害受けた」 カウアン・オカモトさんが会見」という777字の本記だけでなく、「性被害は「組織的問題」と識者 元ジャニーズ歌手主張に」という645字の識者談話もある。識者談話にコメントしているのはジャーナリストの松谷創一郎さんと「日本芸能従事者協会」の森崎めぐみ代表理事である。共同通信の配信により、会見が多くの地方紙に掲載されている。地方紙は、社会面、第2社会面で扱っているところが多い。

■新聞はネットも、テレビはNHKが報道

「Gサーチ」により「紙」で報じていると確認された新聞は全社ネットでも報じている。13日段階の「Gサーチ」結果では該当なしだった新聞でも、東京新聞、山形新聞、福島民報、福島民友、茨城新聞、下野新聞、埼玉新聞、千葉日報、新潟日報、北日本新聞、北國新聞(石川)、福井新聞、山梨日日新聞、信濃毎日新聞、岐阜新聞、京都新聞、大阪日日新聞、神戸新聞、奈良新聞、山陰中央新報、山陽新聞、徳島新聞、佐賀新聞、大分合同新聞、などの地方紙がネットで報じている。

NHKは13日16時のニュースで放送、ネットには「元ジャニーズの男性「ジャニー喜多川さんから性的行為」」のタイトルで16時11分に配信された。

元ジャニーズの男性「ジャニー喜多川さんから性的行為」(NHK NEWSEWB)

ジャニー喜多川氏による性的被害を受けたとの会見を報じる「NHK NEWSWEB」(筆者がキャプチャ)
ジャニー喜多川氏による性的被害を受けたとの会見を報じる「NHK NEWSWEB」(筆者がキャプチャ)

筆者はテレビ放送を確認する手段を持っていないため、各局が運営するネットサイトを確認した。14日になり、19時30分にテレ東BIZ(テレビ東京)、22時47分に日テレNEWSが会見を報じた。

TBS NEWS DIG、FNNプライムオンライン(フジ系)、テレ朝news、テレビ朝日とサイバーエージェントによるAbemaTV、では報道を見つけることはできなかった。ラジオの状況は、J-CASTニュースの下記記事が触れている。

元ジャニーズJr.性的被害「黙殺」徐々に変化? 岡本カウアンさん証言、大手紙・全国ラジオでも報道(J-CASTニュース)

■Yahoo!ニュースに配信している媒体は?

ネットメディアは会見をどう扱ったのだろうか。話題への注目度は高く、記事化すればページビューを稼ぐことができるのは確実だろう。ネットメディアの運営者なら記事化し、Yahoo!ニュースなどのプラットフォームに配信するはずだ。そこでYahoo!ニュースの検索枠に「ジャニーズ」と入力して記事を確認した。

既存メディアでは、共同通信、読売新聞、通信社のAFPによるAFPBBNewsとAFP=時事、そしてこの問題を報じ続けてきた文春オンライン、日刊ゲンダイDIGITAL(講談社グループ)、ニューズウィーク日本版が記事を配信している。海外メディアではBBCが、ネットメディアでは、先ほど紹介したJ-CASTニュース、弁護士ドットコムニュース、ハフィントンポスト日本版、プレジデントオンライン、KAI-YOU.net、が報じている。

■スポーツ紙は配信なし、「こたつ」記事もなし

日頃は「こたつ」記事と呼ばれる手法で芸能人などに対するネットの話題を扱っているスポーツ新聞からYahoo!ニュースへの記事配信は確認できなかった。「こたつ」記事を量産している中日スポーツやデイリースポーツ、東京スポーツ(東スポ)だが、各サイトで確認したところ中日スポーツと東スポは報じていなかった。デイリースポーツは共同通信の配信記事を掲載していた。日刊スポーツ、スポーツニッポン(スポニチ)、スポーツ報知、サンケイスポーツも報じていない。芸能ネットメディアのオリコンスタイルも報じていない。

「大手メディア」といっても新聞は幅広く報じ、NHKは放送とネットに記事が出ているなど差がある。民放テレビだけでなく、スポーツ新聞、芸能ネットメディアも「沈黙」していることはもっと知られて良いだろう。芸能事務所の力を前に性的被害について沈黙してきたメディアの責任は重い。NHKが「ニュース7」「ニュースウオッチ9」など主要ニュース番組で扱うのか、民放テレビとスポーツ紙はどう対応するのか注目していきたい。

なお、各社のサイトやTwitterなどを使いできる限り確認したが、見落としている可能性がある。「Gサーチ」のデータ更新やサイト巡回により報道を確認次第追記していく。

本文修正:当初『多くの地方紙が「紙」で報じていないが』と記載していましたが「Gサーチ」結果であると修正した。

ジャーナリスト

徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントで新サービス立ち上げや研究開発支援担当を経て、法政大学社会学部メディア社会学科。同大学院社会学研究科長。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。ソーシャルメディアによって変化する、メディアやジャーナリズムを取材、研究しています。著書に『フェイクニュースの生態系』『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』など。

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