業界最大手の渋谷・人気風俗店「スッキリ」を摘発 なぜ男性客まで逮捕された?
グループ全体で年間数十億円を売り上げるなど、ピンサロ業界最大手とされる東京・渋谷の人気風俗店「スッキリ」が警視庁に摘発された。経営者や店長、女性店員らに加え、男性客までもが逮捕される事態に至っている。
ピンサロに対する風営法の規制
ソープランドやファッションヘルスは風営法で「性風俗関連特殊営業」に分類され、公安委員会への届出が義務付けられている。両者に共通するのは、個室を設け、そこで客に接触する性的サービスを提供しているという点だ。
これに対し、ほとんどのピンサロは、キャバクラやホストクラブなどと同じく「接待飲食営業店」としての営業許可に基づいて営業されている。「性風俗関連特殊営業」だと営業できる地域が限られ、規制も厳しいからだ。
そのため、「飲食店」であるピンサロは、ボックス席が仕切りなどで完全に囲まれておらず、さほど高くなく、通路から見通せる状態となっているし、客にドリンクなども提供される。あくまで女性店員と男性客との自由恋愛の延長線上で性的サービスが行われるという「建前」となっているわけだ。
公然わいせつの巣窟
今回のピンサロも「接待飲食営業店」の営業許可に基づいて営業されていたが、実際にはボックス席で女性店員と男性客が全裸になり、性的サービスが行われていた。9つあるボックス席には扉はなく、隣の席との仕切りも低いから、性的サービスの様子が周囲から丸見えの状況だった。
所属している70人ほどの女性店員は18歳から25歳で、警視庁による立ち入りが行われた11月5日も15人が働いていた。指名料はなく、料金は昼間なら30分7000円で、学割やコスプレイベントもあり、多い日で1日200人近くもの男性客が訪れる人気店となっていた。
経営者らは12月5日に風営法違反でも立件されているが、基本となる罪名は店を舞台にした公然わいせつの容疑にほかならない。そのため、警察による摘発当日には、性的サービスを提供していた女性店員だけでなく、サービスを受けていた男性客までもが公然わいせつ罪で現行犯逮捕されている。
今後も摘発は続く
既にこの客と女性店員は処分保留で釈放されており、検察による最終的な刑事処分も起訴猶予かせいぜい略式罰金で終わるだろう。それでも、今回のように性的サービスを行っているピンサロに警察の手入れがあれば、一網打尽で客までもが逮捕される可能性が高い。
1997年には過激な性的サービスで評判だった神奈川のピンサロが、2016年には大阪のピンサロチェーンがそれぞれ公然わいせつ罪で摘発されているものの、ピンサロ業界全体としては警察が「グレーゾーン」として黙認する状況が続いていた。業界側も、店内の照明を暗くして視認性を低めるとか、全裸を禁止するといった自主規制を行う店も多かった。
流れが変わったのは、東京五輪に向けた浄化作戦として行われた警視庁による2021年5月の上野「マジックバナナ」に対する摘発だ。ここも全裸による過激な性的サービスが行われていた。以後、7月には巣鴨「曙」、2022年7月には蒲田「レッドダイヤ」など、五輪とは全く無関係に次々と人気ピンサロ店が公然わいせつ罪で摘発されている。今回の渋谷「スッキリ」の立件もその一環にほかならない。
これは、ピンサロを「グレーゾーン」から「完全な黒」と認定した上で、積極的に立件していこうという警察の強い姿勢のあらわれと言える。こうした摘発は、ほとんどの場合、同業者による情報提供が端緒だ。今後も折を見て、目立つピンサロに対する警察の摘発が続くことだろう。(了)