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育児系雑誌の部数動向をさぐる(2020年4~6月)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 子育ては手探りの部分も多い。雑誌は情報源として欠かせぬ存在だが。(写真:アフロ)

育児に関する情報はいくらあっても足りないと感じるもの。情報取得のために雑誌は必要不可欠な存在ではあったが、最近はインターネットに主役の座を奪われつつある。育児系雑誌の現状における部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から確認する。

現在印刷証明付き部数の公開ページで取得できる、該当ジャンルの雑誌は6誌。2018年10~12月期までは7誌だったが、2019年1~3月期にPHP研究所の「PHPのびのび子育て」が休刊していないにもかかわらず非公開化されてしまった。同じPHP研究所のビジネス系雑誌「THE21」も同じタイミングで非公開化されているため、出版社における方針転換があったのかもしれない。

次に示すのは直近にあたる2020年4~6月期における部数の実情と、前年同期比の部数動向。印刷物は季節により販売数の変化が大きく生じるため、季節変動を考慮しなくてもよい前年同期比の方がすう勢を見るのには適している。

↑ 印刷証明付き部数変化率(育児系雑誌、前年同期比)(2020年4~6月)
↑ 印刷証明付き部数変化率(育児系雑誌、前年同期比)(2020年4~6月)
↑ 印刷証明付き部数(育児系雑誌、万部)(2020年4~6月)
↑ 印刷証明付き部数(育児系雑誌、万部)(2020年4~6月)

前年同期比では全誌がマイナス、しかも5誌が誤差領域(5%幅)を超えた大きなマイナス圏との結果となった。

少子化は育児系分野の市場縮小の一要因。しかしその市場動向の多くは子供の人数の減り方をはるかに超えるスピードで縮小している。そして核家族化などを考慮すれば、口頭伝達の教え手となる祖父母が身近にいる育児世帯は数を減らしていき、育児情報の需要は増えることから、切り口次第ではチャンスは多い。もちろん同時に主婦層にもインターネット、中でもスマートフォンやタブレット型端末の普及が進み、子育て層に向けた情報・コミュニティサービスの利用者も増えており、それらのライバルが多い中で雑誌ならではの提案が求められる。例えば蓄積性、専門性、正確性、実物品の提供などが思い浮かぶ。

部数そのものは育児系雑誌の中では第2位を示している「ひよこクラブ」は月刊の育児系専門誌。0か月から2歳児までの子供を持つ保護者を対象とした雑誌となっている。

↑ 印刷証明付き部数(ひよこクラブ、部)
↑ 印刷証明付き部数(ひよこクラブ、部)

育児の情報は目まぐるしい変化を見せる。その変化に対応し逐次新しい情報を提供し育児をサポートする観点では、この類の専門誌は欠かせない存在に違いない。実際、購読者の反応も好印象のものが多いのだが、部数はその評判に連動しない動きが続いている。

「初めてのたまごクラブ」は要注目。

↑ 印刷証明付き部数(初めてのたまごクラブ、部)
↑ 印刷証明付き部数(初めてのたまごクラブ、部)

「初めてのたまごクラブ」は季刊誌で該当発行誌は2誌。「妊娠がわかったばかりの『わからないこと』『不安なこと』を解消する情報をこの1冊にぎゅっとまとめました。医師監修の信頼できる情報満載で、あなたの妊娠生活を応援します」のコピーにある通り、不安を持つことの多い妊娠したばかりの女性にさまざまな観点から情報の提供を行っている、教本的な存在。通常版は電子版も展開し、またハンディサイズ版(B5変型判、内容は同じ。通常はA4判)も存在する。特別付録の母子手帳ポーチやマタニティマークストラップも嬉しいところ。

部数動向の限りでは2016年10~12月期で大きく上昇を示し、それ以降は安定した部数動向に移行している。何らかの方針転換があり、それが功を奏しているのだろうか。掲載情報への評価が極めて高いことから、口コミでよさが広まっているのかもしれない。

少子化だけでなく情報伝達媒体の多様化もあり、紙媒体は多ジャンルで厳しいビジネス環境下にある。しかしながら育児系雑誌ではその特異性もあり、雑誌ならではの付加価値を見出せる構成を示すことで、不調を乗り越える可能性を秘めている。育児情報を求める人たちにとって頼りになる存在となることができるか否か、出版社や編集部の力量が問われるところだ。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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