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北朝鮮のミサイル呼称で「火星11型」と勝手に略して報道すべきではない理由

JSF軍事/生き物ライター
朝鮮中央通信より火星11(KN-02)と火星11カ(KN-23)

 北朝鮮のミサイル呼称で「火星11型」は報道でよく使われていますが、これは略称としては使うべきではありません。というのも兵器ではほんの少し名前が違うだけで全くの別物というケースが多く、火星11シリーズもまたそうだからです。

 火星11(KN-02)はトーチカUの模倣ですが、火星11カ(KN-23)はイスカンデルMの模倣です。両者は大きさも構造も全く別のミサイルです。

화성-11:火星-11(KN-02) ※トーチカU模倣
화성-11가:火星-11カ(KN-23)  ※イスカンデルM模倣
화성포-11나:火星砲-11ナ(KN-24) ※火星-11カの派生型
화성포-11다:火星砲-11ダ ※火星-11カの拡大型 
화성포-11라:火星砲-11ラ ※火星-11カの縮小型
화성포-11ㅅ:火星砲-11SLBM ※ㅅは水中型の記号と推定
※関連記事:北朝鮮ミサイル名称:火星と火星砲

NTI(核の脅威イニシアティブ)より北朝鮮KN-02およびKN-23
NTI(核の脅威イニシアティブ)より北朝鮮KN-02およびKN-23

※トーチカUは全長6.4m、直径65cm、重量2000kg。4枚の安定翼の後方に操舵翼として4枚のグリッドフィン(grid fin・格子状翼)が装着されていることが外観上の特徴。

※イスカンデルMは全長7.3m、直径95cm、重量3800kg。安定翼は無く最後尾に4枚の操舵翼が装着されている。(KN-23はやや大きく直径110cm)

 ロシア製のトーチカUとイスカンデルMは全く別種のミサイルです。構造も大きさも何もかも違います。それなのに北朝鮮は模倣したミサイルのシリーズ名をごちゃ混ぜにしました。ゆえに火星11(トーチカU模倣)と火星11カ(イスカンデルM模倣)はきっちり分けて呼ばなければなりません。

 「火星砲」の「砲」を省略して「火星」と呼ぶことは別に構いません(火星砲11ナ以降)、ハイフン「-」を省略しても意味は通ります。ですが「カ・ナ・ダ・ラ」のサブタイプを勝手に省略してしまうことは駄目なのです。

 もしも「火星11型」と書いてしまうと、トーチカU模倣のミサイルを指してしまいます。火星11カのつもりで勝手に略して火星11と書いてしまうと、明確に間違いとなってしまいます。なお無印の火星11はまだ退役はしていないものの既にやや旧式化しており、パレードなどでも長らく姿を見せていません。

 「カ・ナ・ダ・ラ」という表記が分かり難いなら、「A・B・C・D」に置き換えてもよいでしょう。意味合いとしては同じです。「甲・乙・丙・丁」でもよいです。

火星-11(KN-02) ※トーチカU模倣
火星-11A(KN-23)  ※イスカンデルM模倣
火星砲-11B(KN-24) ※火星-11カの派生型
火星砲-11C ※火星-11カの拡大型 ※2.5トン弾頭
火星砲-11D ※火星-11カの縮小型
火星砲-11SLBM ※火星-11カの潜水艦発射型 

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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