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日本馬13頭が出走を予定。明日の香港国際4レースを占う

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

今年は4レースに13頭の日本馬

  現地時間12月10日、香港シャティン競馬場で香港国際レースが行われる。香港ヴァーズ(GⅠ)に出走を予定していたシャフリヤール(栗東・藤原英昭厩舎)は残念ながら回避となったが、それでも1200~2400メートルの4つのレースに、13頭の日本馬がスタンバイ。JRAでは馬券も発売されるので、ごく簡単にではあるが、日本勢の可能性を探りつつ、有力馬の情報を記してみよう。

香港ヴァーズ

 まずは幕開けとなる香港ヴァーズ(GⅠ)。2400メートルが舞台となるこのレースには、日本のゼッフィーロ(栗東・池江泰寿厩舎)、ジェラルディーナ(栗東・斉藤崇史厩舎)、レーベンスティール(美浦・田中博康厩舎)の3頭が出走を予定している。
 ジェラルディーナは近走、ゲート難を見せている。今回はゲートボーイを付ける予定で、練習もクリア。これで好発を切れれば面白そうだ。
 ゼッフィーロは日本でのGⅠタイトルこそないものの、それは当レースを2度制したグローリーヴェイズも同様なので、現在の充実度合いと安定感を考慮すればチャンスがありそうだ。

ゲートボーイを付けるジェラルディーナ
ゲートボーイを付けるジェラルディーナ

 一方、レーベンスティールはスクんでしまったとの事。その影響で最終追い切りがレース2日前の金曜になってしまった点も気になる。陣営は「大きな症状ではなく、それ以外は元気一杯で、見ている分には調子は良さそう」との事だが、果たして……。
 最近は欧州からの遠征馬が少なくなって来た事もあり、日本馬が活躍しているが、本来は欧州勢に分のある傾向にあるレースだけに、ジュンコらヨーロッパからの使者は軽視出来ない。中でもウォームハートの競ってからのしぶとさは秀逸。欧州では斤量を背負ってGⅠを勝って来ているだけに、53キロという負担重量も好材料。全4レースに1頭ずつを送り込むA・オブライエン調教師は、他にもリードホースの役割だけの現役馬を1頭わざわざ連れてきており、これらの効果があれば、日本勢にとっては最も怖い存在になりそうだ。

Aオブライエン厩舎勢。最後方がウォームハート
Aオブライエン厩舎勢。最後方がウォームハート


香港スプリント

 続いて行われる香港スプリント(GⅠ)。この1200メートル戦にはマッドクール(栗東・池添学厩舎)とジャスパークローネ(栗東・森秀行厩舎)が挑戦する。
 ここは地元香港得意のカテゴリー。今年も春の短距離チャンピオンであるラッキースワイネスやディフェンディングチャンピオンのウェリントンらが出走。また、短距離戦線で常に好勝負を演じるサイトサクセスもいて、香港勢の壁は高そうだ。
 中でも個人的に注目しているのはビクターザウィナー。快速馬揃いの香港勢にあってもスタート後のスピードはピカイチ。逃げてどこまで粘れるか、この馬が作る流れがカギとなりそうだ。

地元の最有力馬ラッキースワイネス
地元の最有力馬ラッキースワイネス


香港マイル

 1600メートルの香港マイル(GⅠ)にはダノンザキッド(栗東・安田隆行厩舎)、セリフォス(栗東・中内田充正厩舎)、ソウルラッシュ(栗東・池江泰寿厩舎)、ナミュール(栗東・高野友和厩舎)、ディヴィーナ(栗東・友道康夫厩舎)と、5頭もの日本馬がエントリー。流れ次第でいずれの日本馬にもチャンスはありそうだ。
 しかし、地元香港勢も簡単には椅子を明け渡してくれそうにないメンバー構成だ。歴史的名マイラーのゴールデンシックスティは休み明けだが、しっかり仕上がっていれば当然、最有力だろう。また、昨年はこの馬より早めに動けると踏んで◎を打ち、見事その期待に応えてくれたカリフォルニアスパングル。こちらも依然、有力候補だ。また、そのカリフォルニアスパングルを、前走で力でねじ伏せたビューティーエターナルや、一度はビューティーエターナルをかわすシーンのあったビューティージョイも一発がありそうだ。

ゴールデンシックスティ
ゴールデンシックスティ


香港カップ

 メインとなる香港カップ(GⅠ)は日本馬得意の2000メートル戦。プログノーシス(栗東・中内田充正厩舎)、ローシャムパーク(美浦・田中博康厩舎)、ヒシイグアス(美浦・堀宣行厩舎)の3頭の日本馬が出走する。過去にはウインブライト、エイシンヒカリ、ルーラーシップ等、日本でGⅠを勝っていない馬でもシャティンの2000メートルでGⅠを勝った例が散見されるだけに、今年もチャンスはありそうだ。
 プログノーシスは今春、同じ舞台のクイーンエリザベス二世カップ(GⅠ)を2着。2度目の遠征で更なる前進が見込めそうだ。
 ローシャムパークも充実ぶりに目が離せないだけに、面白い。また、ヒシイグアスは一昨年の当レースで2着。当然、目の離せない存在だ。

プログノーシス(前)とセリフォス
プログノーシス(前)とセリフォス

 これら日本勢を迎え撃つのがロマンチックウォリアー。昨年のこのレースの覇者であり、春のクイーンエリザベス二世カップの勝者。日本馬がいずれもまかされてきた香港のチャンピオンホースだ。今回はオーストラリアでコックスプレート(GⅠ)を勝利した後のレース。輸送の影響がどう出るか?がカギだが、順調に力を発揮されると、当然、日本勢にとっても脅威の存在だ。
 また、ヨーロッパでの実績なら太刀打ちしておかしくないルクセンブルクも注目だが、穴っぽいところでは地元のソードポイントと、フランスからの遠征馬オリゾンドレだが、日本勢を含め、好メンバーが揃っているだけに、馬券圏内まではどうだろう?
 当方の馬券的な印や買い目などはグリーンチャンネルやスポーツニッポン、東京スポーツにも記しているので参考にしていただきたい。

ディフェンディングチャンピオンでもあるロマンチックウォリアー
ディフェンディングチャンピオンでもあるロマンチックウォリアー

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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