Yahoo!ニュース

増加する真夏日・猛暑日、「昔も今も暑さ変わらない。騒ぐのは根性不足」は精神論(2024年版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
夏場は列島各地で猛暑日を観測している。昔もこれほど暑かったのか(写真:アフロ)

真夏日と猛暑日をカウントすると

先日 【東京や大阪の気温は上昇中…100年以上の推移をさぐる(2024年版)】で解説の通り、夏の気温は確実に上昇の傾向を示している。例えば東京では150年近くで3度ほどの上乗せが確認されている。数字の上では1度や2度は、大したことはないように思えるが、実際の体感温度としては、1度違うだけでも大きな差となる。

↑ 平均気温(東京、度)(7月・8月)
↑ 平均気温(東京、度)(7月・8月)

気温上昇の原因は複数考えられるが、人口の増加や都市化に伴うヒートアイランド現象の影響が強くなったこと、人間の行動様式がより熱量を放つスタイルに変化をしている(自動車の利用率上昇、機械化、工業化)ことなどが主要因として挙げられる。豊かな、科学的に進歩した社会生活を送るためには、相応のエネルギーが必要で、エネルギーを消費すればそれなりの熱量が発生するからだ。

一方、「昨今の夏の暑さへの対応は騒ぎ過ぎ。昔も今も暑さは変わっておらず、現代人の根性が足りないだけ」とする意見も耳にする。就学中、特に部活動などの屋外活動時における熱中症の発生事案が伝えられた際や、教育施設へのエアコン導入の是非に関する論議ではよく聞く話ではある。

そこで気象庁の公開データベースを基に、真夏日(一日の最高気温が30度以上の日)、猛暑日(同35度)の年次ベースの日数を抽出し、本当に暑さは昔も今も同じなのかを検証することにした。すでに平均気温は明らかに上昇しているのだが、ピークとなる暑さの温度がどれだけ高いのか、その機会が多いのかを推し量るのには、真夏日や猛暑日の数の変化を見るのが分かりやすい。

観測対象地点は東京と大阪、そして消防庁の熱中症に関する公開データではよく救急搬送者数の上位に顔を見せる神戸を対象とした。ある程度カウントされるべき日が存在しないと、値そのもののぶれが大きくなり、傾向の検証が難しくなるからである。なお2024年分は9月頭までの値のみ反映となっている。

↑ 東京・大阪・神戸の真夏日の日数(年ベース)
↑ 東京・大阪・神戸の真夏日の日数(年ベース)

↑ 東京・大阪・神戸の猛暑日の日数(年ベース)
↑ 東京・大阪・神戸の猛暑日の日数(年ベース)

真夏日と猛暑日の数は当然大きな差が出るため、縦軸の区分が異なる形となったが、どちらのグラフでもイレギュラーな動きはあるものの、確実にその数を増やしているのが分かる。数年でいきなり数倍といった劇的な増加ではないが、増えていることがグラフを見たときの印象でも、容易に把握できる。特に赤線で記した大阪の動きが大きなものであることは、感覚的に理解できよう。

近似曲線で確認すると

「増えていることがグラフを見たときの印象でも、容易に把握できる」としても、分からない人もいるだろう。そこでそれぞれのグラフに線形近似曲線(点線)を引き、元のグラフの表示を薄くして、線形近似曲線を目立たせる形にしたのが次のグラフ。要は点線部分が横ばいなら、真夏日・猛暑日は増えていない、右肩上がりならば増えている、右肩下がりなら減っていることになる。

↑ 東京・大阪・神戸の真夏日の日数(線形近似曲線込み)(年ベース)
↑ 東京・大阪・神戸の真夏日の日数(線形近似曲線込み)(年ベース)

↑ 東京・大阪・神戸の猛暑日の日数(線形近似曲線込み)(年ベース)
↑ 東京・大阪・神戸の猛暑日の日数(線形近似曲線込み)(年ベース)

今回観測対象となった東京・大阪・神戸ではいずれも増加傾向にある。特に大阪(赤い点線)は増加の勢いが強い。

もう少し検証対象地域を増やし、さらに人口の増加率と掛け合わせれば、ヒートアイランド現象との相関関係性も一層確かなものとなりそうだが、よほどの観測地点でなければ真夏日や猛暑日の有意な値は期待できないので、今回は省略する。ともあれ、真夏日・猛暑日の観点で見ても、日本の夏は確実に暑くなっている。

なお気象庁の特設解説ページ【ヒートアイランド現象】によれば、都市部において長期的な気温の上昇傾向がみられ、特に都市化が進んでいる地点ほど気温の上昇率が大きいと言及している。他に、冬日の減少や熱帯夜・猛暑日・真夏日の増加、日中最低気温の上昇、乾燥化の進行が進んでいるとのこと。また、東京では1950年代後半から1970年頃にかけて、気温が大きく上昇したと説明している。

「昔と気温があまり変わっていないように見える、少なくとも自分の記憶ではそう判断できる。だから夏の暑さに騒ぐことはない。夏が暑いと訴える、教育施設にエアコンを求める、暑さの中で活動をひかえるべきとの意見は甘えに過ぎない」という話は戯言として捨て置き、無理をせずに体調管理を万全に、そして適切な生活環境における温度管理を心がけてほしい。

それでもなお「甘えだ」とする意見があるのなら、それを語る当事者ご自身が、その環境に同一条件で時を過ごすことをお勧めしたい。実情を肌身で感じ取れるはずだ。

■関連記事:

【熱中症についてまとめてみる】

【熱中症経験者は1割足らず、予防対策は「水分補給」に冷房、帽子や日傘使用】

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事