去年は慶応、今年はワセダ? 横綱・大阪桐蔭にセンバツワンツーの健大、報徳! 超豪華な夏の甲子園出場校
夏の甲子園(8月7日開幕)の出場校が出揃った。例年以上に、強豪や有力校が地方大会を順当に突破し、豪華な顔ぶれとなった。現在、日本列島はオリンピック一色だが、開幕が待ち遠しい。
去年の慶応から、今年はワセダに?
昨夏は、慶応(神奈川)の107年ぶり優勝に沸いた。残念ながら神奈川大会5回戦で慶応は敗れ、連覇は夢と消えたが、今年は西東京の激戦を、早稲田実が勝ち抜いた。近年は苦戦が続いていて、夏の出場は、清宮幸太郎(日本ハム)が1年生スラッガーとして活躍した2015年以来、9年ぶりとなる。また現3年生は、「ハンカチ王子」こと斎藤佑樹(元日本ハム)と駒大苫小牧(南北海道)の田中将大(楽天)が二日間にわたる死闘を演じた2006年生まれと、話題には事欠かない。30回目の出場は今大会最多で、「紺碧の空」がアルプススタンドに鳴り響き、甲子園を大いに盛り上げてくれるだろう。
健大高崎、報徳など春夏連続は9校
今大会は、センバツのワンツーが春夏連続出場を決めるなど、実力校が揃った。春の王者・健大高崎(群馬)は、投手陣が苦しんだものの、チームが土壇場で底力を発揮した。2年連続センバツ準優勝の報徳学園(兵庫)も、準決勝でタイブレークに持ち込まれるなど楽な戦いではなかったが、自慢の投手陣がさらに厚みを増している。同4強の星稜(石川)と中央学院(千葉)は敗退したが、青森山田、関東一(東東京)、広陵(広島)、神村学園(鹿児島)、明豊(大分)、京都国際が、前評判通りの実力を発揮した。春夏連続出場は9校で、例年よりやや少なめだが、忘れてはならないのが、やはり大阪桐蔭である。
投手陣が群抜く大阪桐蔭が横綱格
センバツでは2年連続で報徳に惜敗しているが、選手層の厚さやスタッフも含めた経験値の高さは他を大きく引き離していて、今大会の優勝候補一番手で間違いない。何と言っても投手陣がすごすぎる。大阪大会前半に取材した際、西谷浩一監督(54)は「調子のいい者から使っていく」と話していたが、実際に大事な試合で起用されたのは中野大虎と森陽樹の2年生右腕コンビ。エースの最速154キロ右腕・平嶋桂知(3年)や南陽人(3年)らが霞むほどの活躍で、課題だった左腕も山口祐樹(3年)が先発、救援問わず安定した投球を披露した。また川上笈一郎(3年)は、救援で力を発揮する速球派右腕で、「これまでで使える投手は最も多い」と西谷監督が認めるのも頷ける。今季の大阪桐蔭については、野手陣に課題があるとみていたが、それも解消しつつあり、盤石の横綱と断言する。
甲子園優勝経験校も実力十分
また今大会は、甲子園優勝経験校が実力を備えている。激戦の神奈川で横浜に逆転勝ちした東海大相模や、甲子園最多勝(136勝)を誇る中京大中京(愛知)、智弁和歌山なども当然、優勝戦線に割って入るだろうし、興南(沖縄)や花咲徳栄(埼玉)、智弁学園(奈良)、明徳義塾(高知)、西日本短大付(福岡)なども、県内のライバルとの激戦を勝ち抜いた。
石橋、大社、南陽工は、決勝で強豪私学を倒す
公立の名門が、決勝で強豪私学を破った県もあった。石橋(栃木)は国学院栃木との決勝をシーソーゲームの末、9-8で制した。準決勝では作新学院にも3-1で勝っていて、昨春、21世紀枠で初出場し、翌年の夏に「実力」で甲子園に舞い戻るこの優勝はひときわ価値が高い。県下有数の進学校でもあり、創立100周年は甲子園と「同い年」に当たる。大社(島根)は、石見智翠館との接戦に3-2で競り勝った。32年ぶりの出場は、今大会出場校中、最長ブランクだ。かつては島根を代表する名門だったが、近年は強豪私学の壁に阻まれ続けていた。南陽工(山口)も、一昨年の夏の甲子園準優勝校・下関国際に、8回の3得点で鮮やかに逆転勝ちした。「炎のストッパー」と称された津田恒美投手(1993年逝去)で春夏連続出場したのが46年前で、夏の勝利はその時が最後。地元の期待も高まっている。
金足農はあの吉田輝星の弟がエース
強豪私学全盛の中、公立は12校で、昨年より3校増えた。金足農(秋田)は、吉田輝星(オリックス)の大活躍で準優勝して以来、6年ぶりの出場。エースは吉田の弟の大輝(たいき)で、2年生ながら最速145キロと、素質も申し分ない。秋田大会決勝は154球の完投で、9回にも143キロをマーク。無尽蔵のスタミナも兄譲りで、どんな甲子園デビューを果たすか、楽しみしかない。26年ぶりの夏となる掛川西(静岡)や、コロナで無念の不戦敗となった3年前の悔しさを胸に出場の宮崎商にも注目したい。
仙台育英を破った聖和学園と、新潟産大付が甲子園デビュー
甲子園デビューと言えば、今大会、春夏通じて初の甲子園は聖和学園(宮城)と新潟産大付の2校だけ。聖和学園は、宮城大会決勝で、2年連続夏の甲子園ファイナリストの仙台育英を破り、堂々の初出場を勝ち取った。新潟産大付は帝京長岡との、どちらが勝っても甲子園デビューという新潟大会決勝を4-2で制した。帝京長岡は春の北信越大会で優勝するなど前評判も高かったが、得点差以上の完勝で、県勢の5大会連続初戦敗退をストップさせたい。
「朝夕二部制」の本格導入は?
開幕は8月7日で、抽選会は4日に行われる。猛暑対策として「朝夕二部制」が、初日から第3日まで試験的に導入されるが、運用面での課題は山積で、来年以降の本格導入へいかに道筋をつけるか。選手たちはプレーに集中するだけだが、携わる大人たちにとっては、頭が痛い。夏の甲子園は曲がり角にさしかかっている。