「ファンの後押しと兄・由規の言葉」で野球を続けた元ヤクルト貴規、トライアウトで4安打!
11月10日に静岡・草薙球場で「2015年 日本プロ野球12球団合同トライアウト」が行われ、今季限りで戦力外通告を受けた選手を含め、日本野球機構(NPB)に所属した経験のある47名が参加。東京ヤクルトスワローズの由規投手の実弟で、昨年まで育成選手として自身もヤクルトでプレーしていた佐藤貴規選手(22歳、BCリーグ福島ホープス)が、3本の二塁打を含む4安打を放ちました。
4安打、3二塁打は参加選手の中で最多
これまでは年に2回開催されていたトライアウトも、今年はこの日限りの“一発勝負”。NPB12球団の編成担当に加え、BCリーグ、四国アイランドリーグplus、メジャーリーグ(MLB)、中華職棒(CPBL)の関係者も見守る中、ある者は現役続行を、ある者はNPB復帰をかけた闘いの場に臨みました。
投手34人、野手25人が参加した昨年の第1回トライアウトは、グループごとに1人の投手がシート打撃で4人の打者と対戦する形式でしたが、今年は野手の参加が14人と少なかったため、グループごとに1人の投手が3人の打者と対戦。昨年は時間を考慮して、各打者ともボールカウント1-1からのスタートでしたが、今年は0-0から始められました。
総勢47名の参加者で筆者が注目していたのは、やはりヤクルトでプレーしたことのある選手。その中でも唯一の野手である佐藤選手は、バットで大いにアピールしました。最初の打席で元横浜DeNAベイスターズの菊地和正投手(BCリーグ群馬ダイヤモンドペガサス)から右中間に二塁打、3度目の打席では北海道日本ハムファイターズの森内壽春投手からセンター前ヒット。4度目の打席で埼玉西武ライオンズの田中靖洋投手からレフトオーバーの二塁打を放ち、5度目の打席では千葉ロッテマリーンズの矢地健人投手に対し、詰まりながらもセンター前に運んだ飛球がポテンヒットになると、その間に二塁を陥れました。これで4安打、うち二塁打3本は、いずれもこの日の参加者では最多となりました。
「オレを奮い立たせてほしい」心に響いた兄・由規の言葉
ちょうど1年前の記事でもお伝えしたとおり、昨年のトライアウトでは「これで最後になっても悔いはないです」と話していた佐藤選手は、一度は野球から離れることも考えたそうです。それでも、結果的にBCリーグで野球を続けた背景にはどんな心境の変化があったのでしょう?
「僕の中ではあの時は本当に悔いがなくて、もう次(の道)に向かおうと思ってたんですけど、そのあと家族で話し合って、そこでもう1回野球に挑戦してみようと思って始めました。あと、僕はツイッターをやってるんですけど、僕が野球をやめるかやめないかで迷ってる時にファンの方たちが僕のツイッターに書き込んでくれて……そういうのを見て、(ファンを)裏切れないなっていう気持ちにだんだん変わってきたところで兄の由規から連絡をもらって、いろいろと話してそこで決断しました」
佐藤選手はそう話してくれましたが、最も心に響いたのは兄・由規投手のこんな言葉だったそうです。
「『オレを奮い立たせてほしい』って言ってもらって……兄からそんな言葉が出てくると思ってなかったので、それが一番響きました」
現役続行を決意した佐藤選手は、今年はBCリーグに新たに誕生した福島でプレー。リーグ6位の打率.326、同5位の23盗塁をマークし、チームの後期地区優勝に貢献しました。それでも昨年に続くトライアウト受験に関しては迷いもあったといいますが、決め手となったのは今年のNPBドラフトでした。
「僕の今のチーム(福島)からも何人か指名候補として名前が挙がっていた選手がいたんですけど、結局は誰も指名されずに終わってしまったっていうのがあって……。目の前でショックを受けている選手を見ていたので、そこで自分がトライアウトを受けて、その人たちの分まで上(NPB)に上がりたいなっていう気持ちになりました。それで、次の日にトライアウトを受けるっていうことを家族に話しました」
したがって、佐藤選手が目指すのはあくまでもNPB復帰。たとえ、それがまた育成選手としてのオファーだったとしても「行くと思います」と言います。しっかりと結果は残しました。それでも、もし仮にオファーがなかったら……。
「また同じ(福島の)ユニフォームを着ます、はい」
もちろん吉報が届くことを願うばかりですが、トライアウトの結果がどうあれ、佐藤選手の野球人生はまだまだ続いていきます。