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Bジェイズ移籍の青木宣親 新天地での見通しは厳しいが、残留していても降格か戦力外?

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

日本の多くのMLBファンにとって、7月末のトレードデッドラインでのドラマへの注目はダルビッシュ有のドジャース移籍に集中しがちだったが、ここでは青木宣親のアストロズからブルージェイズへのトレードについて評して見たい。

青木自身は現地メディアとのインタビューで「まさか自分がフラッグディールに巻き込まれるとは思っていなかった」とその驚きを語っていた。しかし、この移籍はある意味必然で、もしトレードなかりせば、青木はマイナー降格かDFAと呼ばれる事実上の戦力外通告を受ける可能性も十分だったのではないか。

というのも、アストロズは7月25日に期待の若手外野手であるダグ・フィッシャーを3Aから昇格させていたからだ。このこと自体は、主砲のジョージ・スプリンガーの故障者リスト入りに伴うものだが、パンチに欠ける青木とは異なり、トッププロスペクトのフィッシャーはパワー&選球眼、そして高い身体能力を活かした守備力を誇っており、来季からはレギュラーとして起用されることがほぼ確実視されいた。

フィッシャーはこれが今季2度目のメジャー昇格だが、前回の昇格時にもしっかり結果を出しており、もうマイナーで証明すべきものは何もないと評価されている。したがって、スプリンガーが戦列に復帰した際には降格させるべきではなく、むしろレギュラーとして起用し続けるべきだとの意見が強い。そうなると、アストロズの外野陣は、レギュラーがスプリンガー、フィッシャー、そして今季4年5200万ドルで受け入れたジョシュ・レディックとなり、バックアップにも現在13ホーマーのジェイソン・マリゼニクと19ホーマーで内外野とも守れるマーウィン・ゴンザレスが控える。そうなると、外野しか守れずパワーのない青木は戦力的に浮いてしまう。さらに言えば、契約が1年550万ドルの青木の来季に関しては、球団が600万ドルの選択権を握っている。年齢的にこれ以上の飛躍が望めない彼に、アストロズが今季以上の金額を払うとは考え難く、今回放出されていなかったとすれば、前述の通り降格か戦力外、そうでなくても来季の契約はオファーされない、というシナリオが待っていたと考えるべきだろう。

では、なぜブルージェイズは左腕のフランシスコ・リリアーノの交換相手として青木を受け入れたのか。

ブルージェイズはア・リーグ東地区最下位で、プレーオフ進出の望みは限りなく低い。したがって、今季年俸が1300万ドルのリリアーノを抱えている理由はあまりなく、彼を放出すれば今季の残年俸約448万ドルが浮く。リリアーノを受け入れてくれるアストロズが、「青木を取ってくれ」と求めてきたとすると、それを承諾しても青木の今季年俸残の189万ドルとの差額は、ブルージェイズにとって「経費節減」となるはずだ。

実際、ブルージェイズが戦力的に青木を求めたとは考え難い。同球団の外野は、センターがメジャー有数の守備の名手ケビン・ピラーで、ライトには今季は不調だが主砲のホゼ・バティスタがいる。レフトには左打ちのエゼクュエル・カレーラと右打ちのスティーブ・ピアースをプラトーニングで起用しており、かつ2人とも今季は好調だ。どう見ても、外野の半レギュラーとして青木を必要としたとは思えない。恐らく、オフには青木はそのままリリースとなるだろう。

もちろん、好漢青木には新天地で大いに存在感を見せて欲しいが、ブルージェイズにとってはリリアーノの引き取り手を見つけたら「付いてきた」存在かもしれず、決して求められての加入ではないのではないか。また、彼自身は日米通算2000本安打祝ってくれたアストロズには大いに愛着を感じていたのだとは思うが、このトレードがなく、アストロズがポストシーズンで勝ち進んだとしてもても、青木が10月にワールドシリーズという夢舞台には立つ可能性はかなり低いと考えるべきだろう。メジャーの冷徹なビジナスライクな側面を感じさせた今回の青木の移籍だった。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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