日米豪印「クアッド」サイバーセキュリティの連携も強化:サイバー同盟で「弱い環」を作らない
サイバースペースにおける平和と安定を推進
米国、日本、オーストラリア、インドの4か国の枠組み「クアッド」は2022年2月11日にオーストラリアのメルボルンで外相会談を開催し、共同声明を発表した。米国のブリンケン国務長官、オーストラリアのベイン外相、インドのジャイシャンカル外相、日本の林外相が参加。今回の外相会談でクアッド4か国は、新型コロナウィルス感染対策、インフラ整備、途上国支援、テロ対策、海洋安全保障など幅広く連携を強化していくことを確認した。インド太平洋地域で台頭してきている中国の覇権主義的な行動をけん制することが狙い。
クアッド外相会談では、4か国でのサイバーセキュリティでの連携も確認した。共同声明の中でも、クアッドは地域間でのサイバーセキュリティの強固なインフラ整備と誤情報などへの対策も連携していくことを明らかにした。またインド太平洋地域で多発しているランサムウエアを用いたサイバー犯罪の脅威にも対抗していけるように各国でのサイバーセキュリティを強化して、4か国で密接に連携していくことを発表。そしてクアッド4か国でサイバースペースにおける国際社会の平和と安定性を推進していくことを明らかにした。またサイバーセキュリティでの連携強化として人材育成などキャパシティビルディングにも注力していく。
同盟国で「弱い環」を作らない
国家のリアルな安全保障と同様にサイバーセキュリティも国家の安全保障において重要である。サイバー攻撃による情報窃取は経済の安全保障において危機であり、重要インフラへの攻撃によるブラックアウトや原発事故などが発生した場合は国家の安全保障においても非常に危険である。
「安全を確保するためには自己強化が、それが不可能な場合、同盟の形成が必要になる」と政治学者のケネス・ウォルツは指摘しているが、サイバースペースの安全保障の維持と強化は一国だけの問題ではない。サイバー攻撃はどこから侵入してきて自国のサイバースペースから情報窃取されるかわからない。自国のサイバースペースを強化するのは当然のことだが、自国だけを強化していてもネットワークでより緊密に接続されている同盟国や他の国々を踏み台にして侵入されることがある。そのためにも、安全保障協力の関係にある同盟国の間でサイバースペースにおける「弱い環」を作ってはいけない。
同じ価値観を共有し、同等の能力を保有している国同士でのサイバー同盟は非常に重要である。日本もサイバー攻撃の脅威として中国、ロシア、北朝鮮を名指ししているが、これらの国々は日本とは同じ価値観は共有していない。そして特にサイバーセキュリティの能力の高い国家間でのサイバー同盟は潜在的な敵対国や集団からのサイバー攻撃に対する防衛と抑止能力を強化することにつながる。防衛同盟において重要なのは、リアルでもサイバーでも対外的脅威に対する安全保障だ。
そのため多国間で協力しあいながら、相互でネットワークの強化、サイバー攻撃対策の情報交換、人材育成に向けた交流などを行っていく必要がある。マルウェア情報やサイバー攻撃対策の情報交換だけでなく、平時においてもパブリックでの議論を行うことも信頼醸成につながるので重要である。