Yahoo!ニュース

「劇場版 呪術廻戦 0」がアメリカで好調なスタート。批評家受けも抜群

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
L.A.のショッピングモールにある広告ポスター(筆者撮影)

「劇場版 呪術廻戦 0」が、現地時間18日、北米公開を迎えた。上映館数はIMAXを含む2,336で、本格的な規模での公開だ。このうち2,003館では17日に先行上映が行われ、予想を上回る288万ドルを売り上げている。今週末の売り上げは1,000万ドルあたりというのが、業界の予想。昨年春に北米公開された「鬼滅の刃」の2,100万ドルには劣るが、十分立派な数字である。

 批評家たちの評も、とても良い。この映画についての批評を掲載したメディアが限られており、全体数が少ないというのもあるものの、Rottentomatoes.comによると、現段階で100%の批評家が誉めている。今後、数が増えていけば下がってくる可能性もあるとはいえ、お見事だ。

 それらの批評の多くが触れるのは、原作やテレビ版を知らなくても大丈夫なのかどうかということ。たとえば、「L.A. Times」のマイケル・オルドニャは、ファンである娘さんに基本的な情報を聞いてから映画を見たと述べる。そして、「この映画は元ネタを知らない人も楽しめるということを、僕自身が証言する。前からのファンが喜ぶ奇妙で血まみれのシーンもたっぷりあるということを、僕の娘が証言する」という結論に達した。とりわけ、「背景はとても美しく描かれている。レイアウト、光、影、色などもすばらしい。クリーチャーのデザインはクリエイティブで、時に笑えるほど奇抜」と、ビジュアルを賞賛。「アニメーターたちは想像力豊かで過激なバイオレンスを楽しんで描いているようだが、そういうのが好きなら(そうだからこそこの映画を見ているのだろうけれど)、『呪術廻戦 0』はあなたを裏切らない」とも書く。「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」を思い出させるなど、見たことがある要素も所々にあったりするが、「これはこれで自分の世界を持っている。異様で、時にファニーで、とても美しい世界を」と、今作を評価した。

 一方、業界サイト「TheWrap.com」のサイモン・エイブラムスは、見出しのすぐ下のリードで「テレビアニメと原作漫画を知っている必要はない。でも、知っていればもっと良い」と述べている。この映画は「テレビ版同様、(原作に)忠実で、満足できる、ティーンエイジャーのホルモンに満ちた」作品だというのが、彼の感想だ。ファンサービスと思える部分は当然、ビギナーにはピンとこないだろうが、クライマックスの大規模なバトルシーンはこのシリーズを最も良く象徴するもので、この世界をもっと知りたいと思うかどうかはここで決まるのではと彼は考える。

「Cinemadebate.com」のシェラズ・ファルーキも、「アニメーションのクオリティも、声優たちの演技も優れている。キャラクターは好感度たっぷりで、ストーリーは面白い。無駄がない展開と、国境を越えたテーマを持つ今作は、日本のアニメにそれほど馴染みがない人たちでも楽しめるだろう」と書いた。彼の今作の評価は、5点満点中の4点。とくにビジュアルについては、「最近見た日本のアニメの中で最も美しい」とまで絶賛。ストーリーについても、「テレビ版の話ほどの緊迫感はないと感じるところも時々あったりはするものの、十分引き込まれる」とし、「ここ2、3年の日本のアニメでは最も大胆な作品」と、高く評価した。

「劇場版 呪術廻戦 0」は、今週末、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドでも公開される。ドイツ、ラテンアメリカでも、数週間以内に公開となる予定だ。それらの国々の観客や批評家にどう受け止められるかも、興味が持たれる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

猿渡由紀の最近の記事