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アマゾン、次はシンガポールで「Prime Now」開始:赤字の海外事業でも投資は拡大

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 アマゾンは2017年7月27日、2017年第2四半期(4~6月)の決算を発表した。売上高は前年同期から25%増の379億5,500万ドル(約4兆円)。但し、今期は配送センターへの投資や動画コンテンツ、マーケティングへのコストが嵩んだため純利益は77%減の1億9,700万ドル(約220億円)だった。

売上はまだアメリカ、利益はAWS

 アマゾンの売上高構成比は、北米市場(特にアメリカ)での売上が約60%である。この構成比はここ何年間も大きな変更はない。海外市場はイギリス、ドイツ、日本、フランス、中国、イタリア、スペイン、インド、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、オランダ、シンガポールの13か国を合わせても売上高構成比は30%程度だ。また海外市場は売上高としては前年同期比14%増の114億8,500万ドルと売上は伸びているものの、営業損失は7億2,400万ドルの赤字だ。

 アマゾンの業績に大きく寄与し、成長が著しいのは、クラウド事業のAmazon Web Services(AWS)だ。売上高は前年同期比30%増の41億ドル、営業利益は同22%増の9億1,600万ドル。アマゾン全体の売上構成もついに10%を突破。営業利益は北米市場よりも大きく、アマゾンの重要な収益の柱に成長した。

2017年第2四半期の売上と売上高構成比率と特徴 (アマゾン発表資料を元に作成)
2017年第2四半期の売上と売上高構成比率と特徴 (アマゾン発表資料を元に作成)

シンガポールで「Prime Now」1~2時間でお届け

 海外事業では、ずっと赤字続きのアマゾンだが、2017年7月27日にはシンガポールで「Prime Now」のサービスを開始。シンガポールの「Prime Now」は9.99シンガポールドル(約800円)を支払うと1時間以内に配送。40シンガポールドル以上の場合は2時間以内に配送してくれる。配送センターも設立。

 アマゾンにとってもシンガポールは重要な市場だ。シンガポールは共働きが多く、高層マンションで生活している。さらに暑くて毎日の買い物は大変なので、ネットでの買い物は需要がある。既にアリババグループのLazadaも進出しており、現地では人気がある。アマゾン全体でみると、赤字続きの海外事業だが、先行投資を止めることはない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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