東証から大証に変わる債券先物
債券先物と呼ばれている取引は、東京証券取引所に上場されている長期国債先物取引のことを指す。東京証券取引所と大阪証券取引所は、平成26年3月24日(予定)にデリバティブ市場を統合する。このため、3月24日以降は長期国債先物を含めて、東証のデリバティブ市場は大証のデリバティブ市場に統合される。
日本初の金融先物取引として1985年10月19日に東京証券取引所に長期国債先物が上場された。1985年には国債のフルディーリングが銀行に認可されたことも相まって、債券ディーリングが活況となる。当時、証券会社の債券部に所属していた私は債券先物の上場の動きが出たことを知って果然、興味が沸いた。会社に必死にアプローチして念願かなって債券ディーラーとなったのが、債券先物の上場後1年目の1986年10月であった。そこから今に至るまで、債券先物とその原資産である国債とのつきあいが始まった。
私事はさておき、この長期国債先物は限月と呼ばれる一定の受け渡し期日が設定されており、その期日は3月、6月、9月、12月と3か月毎になっている。日本の債券先物の特殊性のひとつとして、売買が中心限月に集中するということが挙げられる。ほかの金利関係の先物などは、期近と呼ばれる受け渡し期日が近いものだけでなく、期先と呼ばれる受け渡し期日が3か月以上先のものも、ある程度の売買高があるが、債券先物は最終売買日と呼ばれる取引最終日近くまで期近物が中心限月に売買が集中してしまう。
各限月の受け渡し期日の7日前(休業日を除外する)が、取引最終日となる。この日までに反対売買されなかった先物の売りや買いは、受け渡し期日までに国債の現物を渡したり、引き取ったりする必要がある。この現引き、現渡しはそれほど多くはなく、通常は反対売買で決済してしまうものが多い。ただし、ヘッジ売りをしていた市場参加者はその売りを継続したければ、たとえば3月限の最終売買日の3月11日までに3月限の買い戻しと6月限の売りを行う必要がある。これについては限月間スプレッド取引というものがあるため、これを利用することで、スムーズに売り玉を3月から6月に移せることになる。
東証に上場していた債券先物としては、3月11日で最終売買日を迎える3月限が最後となり、6月限は途中で大証に変わる。その3月11日が近づき、債券先物は中心限月の移行を意識した動きが中心となる。中心限月の移行日は厳密にはやや異なるが、市場参加者は当日の売買高が逆転した時点で、中心限月が移行したと認識している。来週、10日か11日にその中心限月が6月に移行する。
意外に中心限月が変わると債券の相場が変わることも多い。3月限は昨年12月は下落したものの、今年に入ってからはじりじりと切り返している。ただし、動きそのものは極めて鈍くなってしまった。6月限は消費増税による影響も加わり、それなりに動きを見せる可能性はある。少しは動いてくれないと日本の債券市場はこのままじり貧となりかねない。大証に変わる6月限に少し期待してみたい。