ジェコにロナウドやイブラの影響力なくても…ローマ、勝者ペドロの加入で「3大テノール」完成?
王者ユヴェントスにはクリスティアーノ・ロナウドがいる。対抗馬インテルはロメル・ルカクが大黒柱だ。今季好調のミランをけん引するのは、ズラタン・イブラヒモビッチ。セリエAのいわゆるビッグ3には、リーグを代表する顔でもある絶対エースが存在する。
ローマの攻撃陣を引っ張る選手といえば、キャプテンマークを巻くエディン・ジェコだ。だが、今季はここまで上記の顔ぶれほどのインパクトではない。公式戦10試合の7試合に出場して3得点。チーム総得点の3割以上のゴールを決めている3選手に対し、ジェコはわずか13%だ。
セリエAでは、5試合に出場して3得点。148分あたりに1ゴールというペースだ。『スカイ・スポーツ』による7節終了時のランキングで、1得点に要した時間が最も短いC・ロナウドからルカクまでのトップ6は、1試合1得点ペース。ジェコはこのランキングで21位だ。
- C・ロナウド(ユヴェントス/48.33分)
- ルイス・ムリエル(アタランタ/54.25分)
- ズラタン・イブラヒモビッチ(ミラン/56.25分)
- アンドレイ・ガラビノフ(スペツィア/70.67分)
- フェリペ・カイセド(ラツィオ/74分)
- ロメル・ルカク(インテル/88.2分)
それでも、ローマはリーグで3位タイの16得点を挙げている。PKキッカーのジョルダン・ヴェレトゥ(4得点)、そしてヘンリク・ムヒタリアンと新戦力ペドロ・ロドリゲス(各3得点)の貢献が大きい。公式戦でヴェレトゥ、ムヒタリアン、ペドロは合計12得点。総得点23の半分以上を占める。
中盤の要として絶対不可欠な存在のヴェレトゥは、すでに高く評価されてきた。今季特に株を上げているのが、2年目のムヒタリアンと新顔ペドロだ。
フィジカルの問題もあり、昨季は安定できなかったムヒタリアンだが、今季は公式戦10試合で4得点、5アシスト。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の平均採点で6.53点を記録している。リーグ前節ではハットトリックを達成した。なお、1試合2得点の経験なくハットトリックを達成したのは43人目という。
一方、10試合で4得点、3アシストのペドロは、リーグ戦の直近5試合連続でゴールに絡んでいる。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の平均採点は6.5点。『TUTTOmercatoWEB』による「今季のベスト新戦力」アンケートでは、5000人弱のユーザーのうち約22%の得票率で、アルバロ・モラタに続く2位だった。
しかも、ローマはほとんど支出なしでムヒタリアンとペドロを手に入れている。前者は昨シーズンのレンタル料のみ。後者はフリーで加入だ。その2選手がこれだけの活躍を見せているのだから、フリードキン新体制となった経営陣は、してやったりというところだろう。
加えて、ローマはすでに10選手がネットを揺らしており、ミランのヨーロッパリーグ予選を除けば、セリエAで最も多くのスコアラーを記録しているチームだ。ジェコに依存することなく、総合力で得点を生んでいるといえる。パウロ・フォンセカ監督の手腕が評価されている一因だ。
その指揮官との関係悪化が騒がれ、夏の去就騒動や新型コロナウイルス感染など、順風満帆といえないシーズンを過ごしているジェコだが、もちろん重要度に変わりはない。
『メッサッジェーロ』のステーファノ・カリーナ記者は、プレーの面でお互いを補完し合っているジェコとペドロ、ムヒタリアンは「3大テノール」だとし、「楽しませ、楽しんでいる」と称賛した。
ローマは首位に勝ち点3差の3位タイと好発進した。開幕戦での選手登録ミスによる不戦敗がなければ、昨季からリーグ戦15試合連続無敗を誇る。優勝候補ユヴェントスとインテルがスロースタートぎみとあり、今季のセリエAは混戦もようだ。コロナ禍で異例のシーズンだけに、スクデットを期待する声もある。ブックメーカーがオッズを大幅に下げたとの報道もあった。
優勝を狙うには戦力でユーヴェやインテルから一段劣ることは否めない。加えて、ローマの課題のひとつは、シーズンを通じて安定することだ。
だからこそ、経験やいわゆる「勝者のメンタリティー」が重要となる。特に期待されるのが、バルセロナやチェルシーで数々のトロフィーを手にしてきたペドロだ。そして、そのペドロは当初からスクデットを狙えると主張してきた。
ジェコ、ペドロ、ムヒタリアンは、いずれも30歳を過ぎている。だが、セリエAはそんなベテランたちが熟練の味を出すことの多いリーグだ。ローマの「3大テノール」は、どのようなハーモニーをつくり出していけるだろうか。