寿司、天ぷら、かまぼこ、ペペロンチーノ……淡路島ハモ料理はこんなにすごい!
京都の祇園祭や大阪の天神祭には欠かせない食材のハモ。ハモ料理といえば、 “落とし”(湯引き)が有名ですが、兵庫県の淡路島では、タマネギと煮込み、ほろほろの食感を楽しむ郷土料理「はもすき」が人気です。2019年6月10日、神戸市内のホテルで行われた「淡路島はもキャンペーン」で、その魅力を探ってきました。
温めた割り下に、大きめに切った淡路島特産のタマネギとハモのあらをイン。タマネギの甘みが割り下に移ったころ合いを見て、骨切りされたハモの身を入れます。しばらくして、ぱっとハモの花が咲くと食べごろです。甘いだし汁が絡んだ身が、口の中でほろほろととろけます。なんとも上品で奥深い「はもすき」の味わいです。
「はもすき」のだいご味はこれにとどまりません。柔らかいハモの子(卵巣)や肝の味わいも絶品です。仕上げに島特産の手延べそうめんを入れ、最後のだしまで食べきるのが“淡路流”。だし汁のうま味を吸っためんはコクがあります。筆者は以前、締めにハモの子(卵巣)を入れ、卵でとじた「ハモの子丼」を食べたことがありますが、そちらもつぶつぶ食感のハモの子とご飯がよく合い、なかなかのお味でした。
江戸時代の書物には「淡路島の鱧」の表記が
温暖な海を好むハモは、国内では西日本の海を中心に生息しています。淡路島も、名産地の一つ。兵庫県南あわじ市などによると、鳴門海峡近くの主な漁場、沼島近海の海底は、速い潮流によって新鮮な水が供給され、えさとなる甲殻類や魚が豊富なことから、肉質、コク、色合いなどのバランスが取れたハモが育つそうです。
島で水揚げされるハモのほとんどはメス。小顔で身が引き締まり、スタイルが良いことから「べっぴんハモ」とも呼ばれています。魚体の傷が少ないのも特徴です。これは、沼島近海の海底は、ドロ地や柔らかい砂地となっていて、腹の皮がこすれないことに加え、「はも延縄」という漁法で1匹1匹を釣り上げるからだとか。
生命力の強いハモは、古くから滋養食として重宝されてきました。その歴史は安土桃山時代までさかのぼり、江戸時代、1697年に発刊された書物『本朝食鑑』には「淡路島の鱧(はも)」と書かれています。交通網が発達しておらず、保冷手段の乏しかった時代でも、生きた状態で兵庫から大阪や京都に届けられたといいます。
淡路島では、毎年5月下旬、沼島で豊漁などを祈願した後、海に丸々としたハモを放流する「鱧供養祭」が営まれるとシーズンの始まりです。7月初めには、祇園祭のさなかの京都・八坂神社にハモを奉納し、はもすきを振る舞う「はも道中」が行われます。
秋の産卵時期に向けて脂がのってきたハモの食べごろは、体長70~80センチ、重さ700~1000グラム程度。凶暴で、多くの固い小骨を処理する「骨切り」が大変ですが、それさえクリアできれば、淡白な身は、幅広い料理に使えます。
淡路島では約100軒でハモが食べられる!
メディア関係者にハモ料理を食べてもらうことで、そのおいしさをPRしようと始まったキャンペーン。今年も、湯引きやはもすきはもちろん、はもすきのだしで加熱したハモを小さく切り、かまぼこに載せた「淡路島のっけかまぼこ」、ハモのかば焼きを用いた「はも寿司」、天ぷらなどが提供されました。筆者の推しは、新鮮なハモを高温でさっと焼いた「あぶり」。脂がのった身は食べごたえがありました。
また、キャンペーンでは、島がPRに力を入れている「淡路島なるとオレンジ」のジュースや酒、デザートも登場。さわやかな酸味とほろ苦さが特徴で、昭和前半ごろまで島内で多く栽培され、首都圏にも出荷されていましたが、その後は生産量が激減。しかし、最近になって、復活を目指すプロジェクトが進められています。
そのまま食べると苦いですが、料理やデザートの味を引き締めるアクセントにはぴったりです。ジュースや酒はさわやかな大人の味で、デザートのジェラートは、島の牧場でしぼった牛乳の優しい味わいと、淡路島なるとオレンジのピリッとした酸味、苦味がよく合っていました。
地元の漁業者らによると、今年は水温が高かったため、ハモの成長が早いそうです。淡路島では、初夏から秋にかけて、ホテルや旅館、民宿、飲食店約100軒でハモ料理を提供。「鱧カツバーガー」や「鱧のペペロンチーノ」といったカジュアルなメニューも増えました。島ならではの味を楽しんでみてはいかがでしょうか。
撮影=筆者