飢える北朝鮮「禁断の食肉マフィア」男女9人を公開処刑
北朝鮮では、牛は農耕に欠かせない貴重な国家財産とされており、大切に扱うよう法で定められている。食べるなどはもってのほかだ。もっとも、特権層は専用の牧場で育てられた牛肉を食べており、一般庶民の間でも密売されているのだが、摘発されればただでは済まされない。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
両江道(リャンガンド)の情報筋は、先月30日午後4時から、恵山(ヘサン)飛行場の周りの空き地で、公開処刑が行われたと伝えた。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
当日の朝、朝鮮労働党両江道委員会は「公開暴露の集い」――つまり公開裁判に関する緊急指示を出した。市場は休業して、工場、企業所の従業員、協同農場の農場員、人民班(町内会)の17歳から60歳までの住民すべてが参加せよとの内容だった。
そして、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)特別軍事裁判所の主催で公開裁判が行われた。被告人は男性7人、女性2人の計9人。彼らは、2017年から今年2月まで、2100頭もの国家所有の牛を売り払っていたというのだ。9人の中には、両江道獣医防疫所長、両江道商業管理所の販売員、農場の幹部、平壌の某レストランの責任者、保衛部(秘密警察)の10号哨所(検問所)で軍人として勤務していた大学生などがいた。
安全員(警察官)、保衛員(秘密警察)、軍人、政治学校(警察養成学校)の学生が3メートル間隔で立って警備に当たる中、杭に縛り付けられた9人は、射撃手によって一斉に銃殺された。その光景を、恵山市の人口の1割を超える、2万5000人が見守った。
現地の別の情報筋は、間近で見てしまったようで、「銃殺現場の恐ろしい場面が思い出され、夜になっても一睡もできず恐怖に震えた」と述べた。
今回の事件だが、主犯の商人らは、両江道や他の地方の工場、企業所、農場、軍部隊の副業地(農地)で飼育されていた牛を購入し、平壌市内のレストランなど全土に密売していたというものだ。ところが今年2月、主犯が平壌の入り口にある10号哨所で摘発されてしまったのだ。今までグルになっていた10号哨所に勤務する兵士が、兵役を終えていなくなり、事情を知らない新兵が配属されていたせいだ。
裁判官は、「牛は畑を耕し、農作業を行うのに、(それを密売して)国の穀物生産を阻害し、社会を混乱させる目的で牛を屠畜した」と、あらぬ罪までかぶせ、「この者どもは、わが国(北朝鮮)の天にも地にも葬るべきところのない大逆罪人で、三代を滅ぼしてもなお余りある」と、罵詈雑言を浴びせかけたという。