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無名のコロナファイターたちを、知っていますか?「お前らもすげーわ」

國松淳和日本内科学会総合内科専門医, 日本リウマチ学会リウマチ専門医
(写真:アフロ)

私は東京都の都心の外れ・八王子市というところにある総合病院に勤務する内科医、國松淳和です。

突然ですが皆さん、これをみてください。

【#最前線のあなたへ】医療従事者へ思いやメッセージを書きませんか?

という、Yahoo!内のコーナーがあります。

私はこれを読んでいてふと思ったのですが、なんだか最近医療従事者ばかり目立っていますね。

臨床の現場に実際にいれば誰でもわかるのですが、医療は医者だけでやっているのではありません。今日はこのことをまとめようと思います。

「無名のコロナファイター」たち

この新型コロナの医療を支える、オモテには出ない立役者たちがいます。

医者や看護師だけでなく、その人たちもコロナと戦っているのです。

「最前線にいる医療従事者」だけではないことを、わかっていただきたいと思います。

(※ちなみに医療従事者とは)

こちらの厚生労働省のサイトのリンク先「医療関係従事者数」のところの項目見出しをご参照ください(エクセルファイルのようです)。

■保健所職員・各自治体役所の職員

保健師さんも定義上は医療従事者かもしれませんが、医療機関ではない場所で活躍しています。

たとえば保健所の職員は、診療とは別の場面で新型コロナの医療を支えています。

主に陽性者との緊密なやりとり、追跡など(業務は数えきれません)が今回の業務になっているのですが、本当にお疲れさまです。

保健所の皆さまの仕事なしにはこのコロナ禍の医療、ひいては社会を支えることができません。

こういうコロナに関わる人たちにも、私は「すげーわ」と言いたいです。

東京都で言えば都庁のコロナ患者入院調整本部のような、役所で様々なことをコーディネートしている人たちも、本当にありがとうございます。皆さんもすげーわですよ。

■医療機関の事務の皆さん

この1年「発熱外来」と言えば、「わかりにくい熱の原因を精密検査する外来」ではなくて「新型コロナ対応ができる外来(=最初のゲート)」という意味で私たちはやっているのですが、この「発熱外来」には医者と看護師だけがいるわけではありません。

発熱外来には、まさにそこで受付業務・医事関係の事務をしている職員もいます。

この人たちは、患者さんに処置や医療行為をするわけではありません。

しかし、新型コロナが疑われる患者さんと接するわけです。かなり近いところで。

こういう職員なしでは、そもそもその日の診療自体が成り立ちません

はい、ここでも失礼します。

コロナに関わる事務の皆さん、お前らもすげーわ

もっと言えば、この発熱外来に誘導する前に、病院の前で「トリアージ」なるものをしていることが多いです(コロナ感染の疑いがあるか、ないかを受診を受け付ける前に”振り分ける”ことをここではトリアージと呼びます)。

ここ最近熱や咳など、かぜ症状がなかったか、かぜの人やコロナ陽性者との接触はなかったか、などを聴き取るのですが、こういう仕事も一部は事務員がかり出されることがあります。

こういう人たちがいるから、我々医療従事者、あるいは一般の人たちが無用な危険に晒されることが最小限になっているんですよね。

本当にありがとうございます。本当に皆さんもすげーわですよ。

■病院の清掃をする皆さん

このコロナ禍で、病院を清掃するという業務はどう考えても精神的に大変です。

感染に気をつけ、病院の中をいつも通りの状態になるように仕事をしてくれています。

本当にありがたいことです。

そのへんの廊下だけではありません。

例えば新型コロナの患者さんが入院している病棟(病室)の清掃もするわけです。

そちら方面に明るくないので軽率な発言ですが、こういう人たちに手当ては発生しているのでしょうか。

とにかく、「コロナに関わる、お前らもすげーわ」です。

患者さんの状態をコンディショニングするのが看護師や医師であるならば、清掃あるいは病院警備にあたる人たちというのは病院の状態をコンディショニングしているのですね。

感謝を通り越して、誇らしい気持ちになります。皆さんもすげーわです。

■患者転送の運転手さん

まだまだ立役者は無数にいます。

皆さんは、自宅待機のコロナ陽性者が、いざ具合が悪くなって病院に移動するときにどのような交通手段で行くと思いますか?

車です。

「電車やバスじゃないの? おれ車ない」と思われた方おりますか?

コロナ陽性者が電車やバスに乗ってはいけません(タクシーもです)

じゃあ救急車で行けばいいじゃんと思いましたか?

救急車はもうパンク状態(※比喩です)ですし、「搬送」だけを目的とするには今は使用が難しいのが現状です。

すると大体次の2つです。

・陽性者の家族や知人などが運転する自動車

民間救急車(患者搬送に特化した業者)

それでもふーんとしか思いませんか?

いいですか。コロナ陽性者を乗せて運転するんですよ?

しかもそれなりに病院まで急がなくてはなりません。

感染に気をつけ、安全運転をして、そしてさらに急いで送り届けなければならないんです。

本当にいつもありがとうございます。

患者搬送に関わる皆さん、お前らもすげーわです。

私ここで懺悔すると、陽性患者さんの受け入れ要請があったとき、保健所の職員に「搬送の人に、なるべく早く連れてくるように伝えてください!!」と強く言ってしまったことがありました。

あの時は本当にすみませんでした。

反省しています。

医者はよくないです。自分が中心になってやってるような感覚になってしまうことがたまにあります。

「運ぶ」と言えば、運ぶものは患者さんだけではありません。

医療資材、生活物資、あとは皆さんですね。つまり移動手段としてのバスや電車など、さまざまな形で、必要なものを安全と感染に気をつけて運んでくださる皆さま、お前らも本当すげーわです。

■お店を営業してくれている皆さん

私は毎日出勤の時に、コンビニエンスストア(略してコンビニ)を利用します。

1日の食べ物・飲み物を購入します

コンビニは、四季折々あるいはクリスマスやハロウィンなどの催しに際して、さまざまな工夫を凝らした品物が発売され、楽しいです。

少々割高ですが、体に悪いどころか、むしろヘルシーな食べ物も最近は多いですし何より美味しいです。

そんなコンビニやコンビニの店員さんにまず僭越ながら申し上げたいと思います。

このコロナ禍で、いつも通り営業を続けてくれて「お前らすげーわ」です。

私はこの20年間かなりの頻度でコンビニを利用していますが、皆さんは冬に「あんまん」などのホット商品を購入したことがありますか? 私はあります。

冬と言えば普通、かぜ・インフルエンザが流行します。ではコンビニの店員さんはどうしているかというと、あんまんを注文すると、まず後ろの水道で手を洗っています。そしてそのあとあんまんをトングで取って包んでくださいます。そして会計して無事私は私のあんまんを食べられます。

これは「コロナ前」からです。私は知っています。

コロナな今では、会計に並ぶ1人1人の接客のたびごとに手指消毒をしている様子がみて取れます。もちろん手袋をしていません

おかげでこちらも安心してコンビニを利用できます。もちろんこちらの手洗いも忘れません。

コンビニだけではありません。

ちょっと立ち寄りたいコーヒーショップ、そして知的充足とステイホームをはかどらせてくれる本を売っている本屋さん、そして客足が減ったなかオンラインでの接客時間を増やしてでも営業を続けてくれる服屋さん。

こういう、不便ななか、なるべくいつも通りの営業を続けてくれるお店の皆さん、ありがとうございます。みんなすげーわです。

不要不急ではないのに、不要不急だと言って自主的に休業・開店時間短縮をしているお店の店主の皆さん。尊敬します。そういうお店があることを知っています。

■すべての若者たちへ

なんか人間って「嫌なところ」ばかり気になる生きものらしくて、ダメな若者ばかりが伝えられることが多いと感じます。

・無防備な若者が感染を広げている

・こんな時になぜ学校なんてやってるんだ

・遊んでいる場合じゃない

こういうのは本心で言っておられるんでしょうか。

私はこれらの真偽、是非を問うたり検証する立場にないのでやめときますが、私は、遊ぶのを我慢したりして「自粛を頑張ってる若者」がいるのを知っていますよ。

自粛を頑張り、その上で勉強したり、あるいは工夫して楽しみを見つけて遊んだりしていますね。

素晴らしいです。どうか未来をよろしくお願いします。

先日、「ピンク色の髪の毛をしたピアスだらけ」の若者が、前日から高熱が出たといって病院にやってきました。咳もしていました。

聞くと、最近仕事で都外遠方へ出張、会食もしているとのこと。

あーあ、と思うでしょうか。

しかしその患者さんは、夜間は学校に行って勉強しているそうです。

マスクや手洗いは頑張っていて、会食も友人とはせずに我慢していたと。

そして中学生からタバコを吸っていることも、ちゃんと正直に申告してくれました。

そもそも体調が悪くなって仕事をちゃんと休んで、きちんと病院に受診しているところが素晴らしいですよね。えらいです。

こういう、不自由ななか、感染に気をつけながら毎日を自分なりに生きてる人や、自粛を頑張る若者たちもコロナファイターだと私は思ってますよ。

今回は以上になります。

コロナに直接関わるお前らも、

そういう人たちを支えるお前らも、

みんなすげーし、あなたもすげーよ、なんです。

そんな人を見つけて行きましょうよ。

あなたの周りには無数の無名のコロナファイターがいるんです。

コロナな社会を支えるお前ら、みんなすげーわです。

経済か?医療か?じゃねーわ と個人的には思います。

医療を支えているのは経済だし、経済を支えているのは医療です。

どっちか、ではなくそもそも1つなんだと思うんですけれどね。

とにかく皆さん、お疲れさまです。

手洗い・マスク・三密回避を、これまで通り、よろしくです!

そして外での家族以外との会食は「今はやめとこーぜ」のスローガンで、引き続き、よろしくです!

日本内科学会総合内科専門医, 日本リウマチ学会リウマチ専門医

内科医(総合内科専門医・リウマチ専門医)/医書書き。2005年~現・国立国際医療研究センター病院膠原病科, 2011年~同院総合診療科。2018年~医療法人社団永生会南多摩病院総合内科・膠原病内科部長。不明熱や不定愁訴, 「うちの科じゃない」といった臨床問題を扱っているうちわけがわからなくなり「臓器不定科」を自称するようになる。不定, 不明, 難治性な病態の診断・治療が専門といえば専門。それらを通して得た経験と臨床知を本にして出版することがもう1つの生業になっており, 医学書の著作は多い。愛知県出身。座右の銘:特になし。※発信内容は個人のものであり, 所属した・している施設とは無関係です。

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