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40代女性、今後訪れるであろう更年期の不調についての情報が欲しいです という投稿へのお返事的書簡

國松淳和日本内科学会総合内科専門医, 日本リウマチ学会リウマチ専門医
(写真:アフロ)

先生、はじめまして。こんばんは。

私は40代女性です。

今一番気になることは、更年期障害についてです。今のところ何の症状もありませんが、気付いていないだけなのかもしれません。

そして今後、訪れるであろう更年期の不調についての情報が欲しいです。

はじめまして、投稿ありがとうございました。

更年期障害についてですね。

私は内科医ですが、「それは婦人科の先生に聞いてください」とは言わないのが國松先生です。

なぜなら、更年期障害というのは、さまざまな体の症状を感じて医療機関にやってくるからです。

今回の参考資料を先に提示しておきます。

池田裕美枝先生の、Q&A方式の回答が一番良いと思います。

私の記事を読むよりおすすめです。

更年期障害というのは、閉経の時期に前後して、閉経を迎える女性に起こる諸症状のことを言います。

閉経は、1年間無月経であることで判断しますが、その平均年齢は50歳前後です。

しかし実際には、閉経の4、5年前から卵巣機能の低下が起こり、いわゆる月経不順になります。

なので平均で40代中盤、あるいはそれより前にさまざまな体調不良が起こりえるため、投稿をくださったかたのご心配も無理もありません。

女性の40代といえば、まだまだこれから。

もっともっと輝こうとしているまさにその時期です。

そんな時期に体調に悩まされるのは、本当につらいことです。

卵巣ホルモンの1つであるエストロゲンの代謝物は、カテコラミンという神経ホルモンに似た作用を持っています。

カテコラミンによって自律神経障害が起こるというのが、更年期障害のメカニズムです。

カテコラミンは、副腎というところから合成・分泌される「神経伝達物質」を指しています。そして、自律神経とも連動して、自律神経を調節する役割も果たします。

カテコラミンが過剰に分泌すると、血圧が上がったりとても汗が出たり、あるいは動悸や頭痛が起きます。

また、精神的にはどちらかというと興奮し、カッカしたり、イライラ、パニック状態になったりします。

カテコラミンが不足すると、意欲の低下が起きたり、力が抜けて活力がなくなったり、憂うつになったりします。

閉経に近づく女性のエストロゲン量は、まず「変動」します。

この「変動」というのがポイントで、つまりカテコラミン作用が強まったり弱まったりするというわけです。

これが更年期障害の症状の多彩さにつながります。

つまり更年期障害では、「あれこれ色々症状がある」というのがポイントです。

ですから私は、更年期障害の初期では、婦人科医だけでなく内科医の役割が重要になるという意見を持ちます。

ただひたすら憂うつなだけというのは、更年期障害ではなく、甲状腺機能低下症やうつ病かもしれません(※うつ病の多くが最初は内科を受診します)。

血圧が高くて息が切れるだけというのは、更年期障害ではなく、心不全かもしれません。

手がこわばるというのは、更年期障害ではなく、関節リウマチかもしれません。

顔がほてって血圧が上下するというのは、更年期障害ではなく、褐色細胞腫かもしれません。

頭痛が続くというのは、更年期障害ではなく、脳腫瘍かもしれません。

要するに、まず病院に行ったほうがいいです(※ちなみにこれらは一例です)。

え?病院?

いきなり婦人科?

違いますよね。わかりますよね。

内科だと思いますよ。

このとき、内科医のように「体を診る医者」のみたてや行動が一番大事になってきます。

  • 血圧を測ったら180/110になってびっくりして循環器内科にかかった →更年期ですね
  • 関節が痛くて整形外科へ行った →更年期ですね
  • ほてって寝付けないので心療内科へ行った →更年期ですね
  • 手がこわばってきたのでリウマチ科へ行った →更年期ですね

「更年期ですね」という医者の言葉は残酷です。

なぜなら、何もしていない。

何もしないならいいのですが、追い詰めています。

先ほどの池田先生のQ&Aにもあるのですが、日本人女性では欧米諸国の女性と比べて身体症状よりも精神症状が前に出る場合が多いそうです。

そして、社会的孤立感、介護疲れや配偶者への不満など、50歳前後の女性が曝される心理・社会的ストレスは更年期障害などないとしても計り知れません。

それなのに「更年期ですね」で終わっては、体の症状を心配して医療機関に行った女性をさらに孤独にします。

更年期の諸症状を、更年期の諸症状だと納得するには、時間がかかると思います。

更年期の体調不良のさなかの、冴えない頭でそれを考えるからだと思います。

医者も患者も、納得するために時間をかけましょう!

実は一番いいのは、「こうねんき」などとふんわりさせて症状を我慢するのではなく、病気だと考えてしまうことです。

更年期。不調。あ、病気じゃん。病院いこ。

本来これでいいんです。

素直に、体の症状を、医療機関で相談するのが一番です。

更年期の年齢帯というのは、ちょうど何か、それとは関係ない医学的問題が発生していることが多いものです。

脂質異常症、糖尿病、脳動脈瘤、頸椎症、がん、うつ病・・・

他、いくらでもありますが、そういう更年期とは関係ない病気が見つかることが多い時期でもあると思いますよ。

まとめますと、

「更年期障害でしょうか?」と受診して”いの一番”に医者に聞くとか、「更年期障害かどうかを確かめてください」と強く訴えるのではなく、純粋に今感じている体の症状を相談しにいくと良いでしょう。

あっ、「人生の先輩」には相談しないほうがいいです。

「あたしはもっと酷かったわよ〜 大丈夫よ〜」とか言われたりします(これを”n=1の根拠”と呼びます)。

隣人は時に一番残酷な存在です。悪意が不在だからです。

人生の先輩である「あたし」が何者か知りませんが、あたしはあたしで結構。

ただし、あたしと自分は違う人間なのです。

人は人、自分は自分、なのです。

良かれと思って、あまり他人を「自分尺度」に当てはめるのは良くないですよね(ここにも悪意の不在という問題があります)。

適切な相談先として、裏技を紹介します。

年下の医師に、冷静に相談することです。

(※ハズレばかりを引くなど、あくまでどうしようもない時の裏技です)

最近の若い婦人科の先生は、優しいです。

経験を振りかざしてこない分、きちんとしたエビデンスやガイドラインで診療されるので、判断に安定感があります。

変な風習・慣習のようなものを勧めては来ませんから、スタンダードなやり方を聞きたい方には非常に良い存在です。

あなたの症状が、穏やかなものでありますように。

國松 淳和

日本内科学会総合内科専門医, 日本リウマチ学会リウマチ専門医

内科医(総合内科専門医・リウマチ専門医)/医書書き。2005年~現・国立国際医療研究センター病院膠原病科, 2011年~同院総合診療科。2018年~医療法人社団永生会南多摩病院総合内科・膠原病内科部長。不明熱や不定愁訴, 「うちの科じゃない」といった臨床問題を扱っているうちわけがわからなくなり「臓器不定科」を自称するようになる。不定, 不明, 難治性な病態の診断・治療が専門といえば専門。それらを通して得た経験と臨床知を本にして出版することがもう1つの生業になっており, 医学書の著作は多い。愛知県出身。座右の銘:特になし。※発信内容は個人のものであり, 所属した・している施設とは無関係です。

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