爆笑問題・田中裕二と山口もえのダブル再婚が象徴する「こだわり見直し婚」の時代
福山雅治と吹石一恵の「美男美女の初婚」には何の共感も覚えないが、爆笑問題・田中裕二と山口もえのダブル再婚には親しみを覚え、「自分も幸せな結婚ができるかも」とやる気が出てくる人も少なくないだろう。なぜなのか。
筆者は恋愛や結婚を中心とする男女関係を取材して文章にすることをライフワークとしている。安心して長く付き合えるパートナーが見つからない、と嘆く人に共通するのは何かと改めて考えると、「こだわりが見当違い。もしくは、こだわりがなさすぎる」という答えが見えてくる。
誰もが自分のことを「ちっともモテませんよ」と言いつつも、内心では「いや、けっこうイケているぞ。見た目はともかくセンスはいい」などと誇らしげに思っているものだ。自分を現実逃避気味に買い被っているので、異性に求める条件も見当違いの方向に浮遊してしまう。
見知らぬ異性の身になって自分自身をざっくりと見直してみよう。容姿、年齢、暮らし方、職業、特技、家族などを総合すれば、ガッカリするほど人並みだと感じるはずだ。むしろ人並み以下だと認識するほうが健全かもしれない。そこから謙虚に出発するべきだ。
こだわりがなさすぎるのも問題だ。「誰でもいいから結婚したい」は「誰とも結婚したくない」に通じていると思う。これも相手の身になって考えれば、「あなただけが大好き。あなただから結婚したい」というメッセージがなければ心が動かないことがわかるはずだ。自分が本当に求めているもの、大切にしたいものは何なのか。頭の中だけで知ることはできない。いくつかの恋愛経験が必要だと思う。複数の異性の助けがいるのだ。
筆者はアラサー女性の恋愛状況を聞いてアドバイスを考える連載をしている。先日は、「ミスチルの桜井さんみたいに立派な鼻の男性が好き」と公言する女性と語り合った。自分の鼻が小さいことがコンプレックスになっているようだ。ユニークなこだわりなので、「鼻さえ立派ならば他のダメ要素(レディファーストができない、など)はたいてい許すことにしたらどうか」と筆者はアドバイスをした。彼女は気が楽になったようで、後日に嬉しいメールをくれた。
<最近、ある男性といい感じになりつつあります。決して話上手ではないですし、外見は私の好みの鷲鼻でもないですが(笑)、すごく誠実で優しい人です>
手痛い失恋をしていた彼女は、自らのこだわりを「鷲鼻を持つ男性」から「誠実で優しい男性」へと自然に移行したのだと思う。結婚を見据えるのであれば、正しい移行だと言える。
田中と山口のこだわりは何か。田中のほうはわかりやすい。『週刊文春』10月15日号によれば、結婚会見において「彼女がデビューした時からファンだった」「嬉しい顔をしている時が本当に可愛らしい」などと語りまくったという。おそらく本音だろう。彼のこだわりは「可愛い容姿」。50歳になっても男性の恋愛精神年齢はほとんど変化しないのだ。
ただし、田中が初婚であれば2人の子どもがいるバツイチの山口を選ぶことはなかったと思う。前妻(浮気相手の子どもを妊娠)との不幸な結婚生活を経て、「そこはこだわらない」という結論を出せたのだろう。
山口のこだわりも明快だ。子どもと自分を大切にしてくれる男性、に尽きる。前夫は同世代のイケメン社長である。年齢も容姿も田中とはまったく異なる。山口のほうもハチャメチャな前夫との離婚を経験し、子どもを守らねばならないと痛感して、こだわりを見直したのだと思う。
ちなみに筆者もバツイチ再婚である。離婚した後に身に染みてわかったこだわりは、「おいしい飲食店を見つけたらいつでも真っ先に誘いたい女性」である。ただし、出会った女性は愛知県から離れられない人だった。生まれ育った西東京エリアを出ることは不安だったが、東京へのこだわりは思い切って捨てた。今では、愛知県で飲み食い中心の楽しい共同生活を続けられている。
あなたが本当に譲れない1点は何だろうか。田中や筆者のようなバカバカしいこだわりでもかまわない。それを見つけたら「他のことはたいてい譲る」という姿勢を保つのだ(不潔・DV・卑屈など友人としてもあり得ない異性は当然除外)。肩の力が抜けて、世の中は素敵な異性との出会いに満ちていて、友人知人の中にもすでに候補者がいることに気づくだろう。