中央銀行デジタル通貨(CBDC)が、PayPayなどの民間のスマホ決済などには驚異となる理由
中国は昨年10月にハイテク都市の深センを皮切りにデジタル人民元の大規模な実証実験をスタートさせた。デジタル人民元とは、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency、CBDC)と呼ばれるものとなり、それ自体が法定通貨となる。
カンボジアの中央銀行は昨年10月28日に、中央銀行デジタル通貨システム「バコン」の運用を開始した。中央銀行デジタル通貨はカリブ海の島国バハマでも本格的な運用が始まった。
日銀は現時点で中央銀行デジタル通貨を発行する計画はないとしているが、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくとしている。
米国の次期財務長官に指名されたイエレン氏は1月19日の議会公聴会で、暗号資産(仮想通貨)に関わるマネーロンダリングやテロリストの利用等、犯罪に利用される点が課題だと指摘した。
さらにビットコインなどの暗号資産の価格の動きからも、それが通貨として利用できるものではないことは明らかである。
これに対し、民間のデジタル通貨の発行機運も一時高まっていたが、今年1月に発行予定となっていたはずのリブラ改めディエムは、いまだ発行されていない。
中国は4大国有商業銀行を保護することも目的として、アリババなどのIT企業の金融事業に対して徐々に規制を強めた。
インドはビットコインといった民間の仮想通貨を国内で禁止し、公的なデジタル通貨を創設する枠組みを提供する法律を今国会の予算会期中に導入する予定と伝えられた。
これは既存の金融システムそのものを壊しかねないとの懸念から、既存のものを保護したいとの意向とともに、民間デジタル通貨に対するリスクも意識されたものと思われる。 この動きからみると民間デジタル通貨が波及するにはハードルが高いのではないかと思われる。
そして、もし中銀デジタル通貨が発行される場合には、中央銀行は金融仲介機能の維持、信用創造機能への影響、既存業態のビジネスモデルへの影響、などを注視する必要があると指摘されている。
金融仲介機能の維持、信用創造機能への影響は既存の金融システムを保護する必要からとみられるが、注意すべきは既存業態、例えば資金決済業のビジネスモデルへの影響である。
つまり、中銀デジタル通貨が普及するとPayPayなどの資金決済業に大きな影響を与えかねない。中銀デジタル通貨には手数料は発生しないが、資金決済業には手数料が発生する。また信用度も違うため、影響は免れない点も意識しておく必要があろう。