原油価格は安値から30%反発、OPECは本当に動くのか?
原油相場が急反発している。NYMEX原油先物相場は、8月24日に2009年2月以来の安値となる1バレル=37.75とまで下落していたが、月末となる8月31日高値は49.30ドルに達しており、ちょうど1週間で30%もの上昇率を記録した計算になる。
直接的な背景としては、中国リスクに対する警戒感が後退していることにある。なお世界の株価は不安定な地合が続いているが、パニック的な世界同時株安には一定の歯止めが掛かり始める中、株価同様に原油価格に対しても安値是正の動きが強まった。特に原油相場は7月以降で20ドル幅の急落相場が実現していた影響もあり、ヘッジファンドがこの機会に売りポジションの整理(買い戻し)に動いた模様だ。
こうした中、原油価格形成のルールが変わってしまうことに対する警戒感が、原油相場の反発傾向をエスカレートさせている。きっかけになったのは、石油輸出国機構(OPEC)が8月31日にウェブサイト上で公開した「OPEC Bulletin(OPEC広報)」という電子版の冊子である。
この冊子はOPECの活動内容を一般向けに広報する役割を担っているが、その冒頭では「適正かつ妥当な価格」を実現するためにあらゆる行動をとるとの基本方針が示された上で、更に「他の産油国と協議を行う用意がある」ことが明らかにされている。
この文言が、マーケットでは協調減産に対する警戒感を著しく高めており、原油相場の反発を後押ししている。国際原油需給の緩みを解消する目処が立たない中、これまでの原油市場は原油価格の安値誘導によって、高コスト原油に市場からの退出を促すことを目指してきた。しかし、仮にOPEC加盟国と非加盟国の協調減産が実現すれば、原油価格の安値誘導なくしても需給の緩みが解消できる可能性も浮上することになり、原油価格形成のルールが変わってしまう可能性もある。
マーケットには、「噂で買って、事実で売る」との相場格言がある。協調減産の「噂(思惑)」で原油価格は急伸したが、これを「事実」に変えていくことができるかが、今後の原油価格の行方を決定付けることになる。具体的には、これまでOPECからの協調減産の要請を拒否し続けているロシアの協力を得られるか否かが、大きな意味を持とう。これまで通りにロシアが動きを見せなければ、原油安によってシェールオイルなどの高コスト原油に生産調整を迫る必要性が再浮上することになる。