新型コロナワクチンを接種したあと、入浴してもいいですか?
新型コロナワクチンの接種数は急速に増加しており、すでに日本でも1000万回を超えてきています(※1)。接種を実施に努力されている方々、接種を受ける方々、多くの方々のご尽力の賜物と思っています。
さて、私も集団接種会場に赴き接種を担当する機会があるのですが、受ける質問のひとつに『今日、入浴してもいいですか?』というものがあります。
なぜ、入浴に関しての質問が多いのでしょうか?
新型コロナワクチン接種後に、入浴をしてもいいのでしょうか?
今回は、このテーマに関して簡単に解説したいと思います。
(※1)Share of people who received at least one dose of COVID-19 vaccine
以前は実際に、『予防接種後の入浴を控えるように』という指導が行われていました。
このテーマに関しては、歴史をひも解く必要があります。
年配の方は昔、実際に予防接種の際に入浴を避けるようにと指示を受けていたと思います。
というのも、1994年の予防接種法の改正前には、予防接種のマニュアルと言える予防接種実施要領に『入浴については、接種当日、できればその翌日も避けること』と記載があったからです(※2)。
ですので、年配の方は、『ワクチンを摂取した後の入浴は控えたほうが良い』というイメージが強く残っているのかもしれませんね。
そして1994年からガイドラインが改定され、『予防接種当日の入浴は差し支えない。入浴は,従来避けることとされていたが,今後は,入浴は差し支えないものとして指導する』とアップデートされました。
さらに現在のガイドラインには、『入浴は差し支えありません。これは生活環境の整備によって、入浴時に注射部位又は全身性の感染を受ける可能性は極めて低くなっており、即時型アレルギーが予想される接種後1 時間を経過すれば、入浴は差し支えないと考えられるためです。』と記載されています(※3)。
(※2)松島 宏. 小児内科 2013; 45:199-200.
ではなぜ、以前は『予防接種時に入浴をひかえるように』という記載があったのでしょう?
いくつかの理由が考えられています。
1つ目に、昔は、予防接種の製造技術が低かったため、ワクチン接種時の発熱などの副反応が多く、十分な観察が必要と考えられたからとされています。
しかし現在のワクチンは安全性が向上し、発熱の頻度も大きく低下しています。
2つ目に、公衆浴場を利用する方が多かったからです。接種した箇所の清潔を保つ、という意味があったとされています(※4)。
(※4)横田 俊一郎. 小児内科 2015; 47:1106-7.
しかし…ワクチンの接種後の健康状態に配慮も必要です。
新型コロナワクチンの接種後も、入浴は構わないとされてますし(※5)、私もそのようにお話しています。ただ、新型コロナワクチンは比較的発熱や頭痛、だるさなどが出現しやすいワクチンです(※6)。
以前、ワクチン後の発熱などの頻度が多かったことから、入浴に対して注意喚起が行われていたとお話しましたね。ワクチン接種後の発熱や頭痛などに対し心構えが必要であることも確かでしょう。私も、特に2回目の接種の翌日は頭痛や倦怠感が強くて、外来での仕事がやや辛かったです。
ですので、長湯はご自身の体調みながらにしておく、接種翌日に大事な仕事や用事をいれないようにする、万が一を考えて休暇がとれるような体制にしておいてもいいだろうと考えています。
今後、協力しあって接種率がスムーズに増加していくことを願っています。