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「袴田事件」は決して他人ごとではない 冤罪は身近な交通事故でも多発している #専門家のまとめ

柳原三佳ノンフィクション作家・ジャーナリスト
高知白バイ事故。止まっていたはずのバスのブレーキ痕にねつ造の疑いが(片岡氏提供)

 静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人放火事件で、否認しながらも死刑が確定していた袴田巌さん(88)。9月26日、静岡地裁は再審(やり直しの裁判)で、「証拠がねつ造された」と指摘し、袴田さんに無罪を言い渡した。捜査機関による証拠のねつ造や決めつけ、再捜査の放置……、あってはならない行為だが、これは決して他人ごとではなく、交通事故など身近な捜査においても起こり続けている。過去の冤罪事案をもとにまとめた。

ココがポイント

暴走白バイに激突されたスクールバスの運転手だった片岡晴彦氏が(中略)出所後に再審請求している事件。高知県警の捏造工作が疑われる中、県警が隠蔽に躍起になっている。
出典:週刊金曜日 2013/2/19(火)

誤認逮捕や自白強要、そして私の息子の事故のような不適正な捜査も、本音を言えばそれを行った本人にまず謝罪してもらいたい
出典:JBpress 2019.8.5(月)

大半の「もの言えぬ被害者」たちは、事故の事実認定に納得できないまま泣き寝入りを強いられています。
出典:Yahoo!ニュースエキスパート 2019/4/11(木)

エキスパートの補足・見解

 気の遠くなるような長い年月、死刑を恐れながら無実を訴えてこられた袴田巌さん。昨日、やっと無罪を勝ち取られましたが、奪われた人生を取り戻すことはできません。この過酷な仕打ちの裏側に捜査機関による証拠のねつ造があった……、あまりのことに怒りと恐ろしさを感じている方も多いでしょう。

 しかし、捜査機関によるこうした行為は私たちの身近なところでいまも起こり続けています。例えば交通事故。被害者が死亡、または意識不明になると、捜査らしき捜査もされないまま「死人に口なし」的な捜査が独り歩きしてしまうことが珍しくありません。

 一方当事者が警察であった場合はさらに厄介です。私はかつて、愛媛白バイ事件、高知白バイ事件の取材を続けてきました(相手はいずれも白バイ)。両ケースとも捜査機関によるあからさまな証拠のねつ造、隠ぺいが行われました。

 愛媛の男子高校生はお母さまの頑張りでなんとか「無罪」を勝ち取ることができました。しかし、高知のバス運転手さんは実刑判決を受け、刑務所に収監されました。なんとか再審の扉が開くことを祈るばかりです。

 冤罪は「死刑」のような重大事件だけではなく、身近なところでも数多く発生しており、いまも多くの人が苦しんでいます。

ノンフィクション作家・ジャーナリスト

交通事故、冤罪、死因究明制度等をテーマに執筆。著書に「真冬の虹 コロナ禍の交通事故被害者たち」「開成をつくった男、佐野鼎」「コレラを防いだ男 関寛斉」「私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群」「コレラを防いだ男 関寛斎」「自動車保険の落とし穴」「柴犬マイちゃんへの手紙」「泥だらけのカルテ」「焼かれる前に語れ」「家族のもとへ、あなたを帰す」「交通事故被害者は二度泣かされる」「遺品 あなたを失った代わりに」「死因究明」「裁判官を信じるな」など多数。「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」はNHKで、「示談交渉人裏ファイル」はTBSでドラマ化。書道師範。趣味が高じて自宅に古民家を移築。

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