「袴田事件」は決して他人ごとではない 冤罪は身近な交通事故でも多発している #専門家のまとめ
静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人放火事件で、否認しながらも死刑が確定していた袴田巌さん(88)。9月26日、静岡地裁は再審(やり直しの裁判)で、「証拠がねつ造された」と指摘し、袴田さんに無罪を言い渡した。捜査機関による証拠のねつ造や決めつけ、再捜査の放置……、あってはならない行為だが、これは決して他人ごとではなく、交通事故など身近な捜査においても起こり続けている。過去の冤罪事案をもとにまとめた。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
気の遠くなるような長い年月、死刑を恐れながら無実を訴えてこられた袴田巌さん。昨日、やっと無罪を勝ち取られましたが、奪われた人生を取り戻すことはできません。この過酷な仕打ちの裏側に捜査機関による証拠のねつ造があった……、あまりのことに怒りと恐ろしさを感じている方も多いでしょう。
しかし、捜査機関によるこうした行為は私たちの身近なところでいまも起こり続けています。例えば交通事故。被害者が死亡、または意識不明になると、捜査らしき捜査もされないまま「死人に口なし」的な捜査が独り歩きしてしまうことが珍しくありません。
一方当事者が警察であった場合はさらに厄介です。私はかつて、愛媛白バイ事件、高知白バイ事件の取材を続けてきました(相手はいずれも白バイ)。両ケースとも捜査機関によるあからさまな証拠のねつ造、隠ぺいが行われました。
愛媛の男子高校生はお母さまの頑張りでなんとか「無罪」を勝ち取ることができました。しかし、高知のバス運転手さんは実刑判決を受け、刑務所に収監されました。なんとか再審の扉が開くことを祈るばかりです。
冤罪は「死刑」のような重大事件だけではなく、身近なところでも数多く発生しており、いまも多くの人が苦しんでいます。