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【台風直撃の代表選】 国民民主党代表選に見る野党の断末魔

安積明子政治ジャーナリスト
新代表が決まったものの、前途は依然として厳しい(写真:つのだよしお/アフロ)

玉木氏が代表に選出されたが……

 国民民主党臨時党大会が9月4日午後に開かれ、新代表に玉木雄一郎前共同代表が選任された。同党の代表選では、党員・サポーター票と地方自治体議員票、国会議員票、公認候補予定者票をそれぞれポイント換算して積算するが、いずれも玉木氏の得票が対抗馬の津村啓介衆議院議員を圧倒して勝利した。しかしながら、その前途は決して明るいとはいえない。

 今年5月8日の結党大会では、共同代表記者会見を行おうとした時に照明がいきなり消えた。今度は大型台風の襲来だ。非常に強い台風21号は4日正午ごろに徳島県南部に上陸して近畿地方を縦断。日本海に抜けて北上した。関西国際空港を水没させ、大阪府や滋賀県、三重県では死者も出ている。

代表選で危機を叫ぶものの

 今回の台風も、なんらかの“前触れ”とも思えなくもない。希望の党から転じた国民党と民進党が合流して結成されたものの、国民民主党の支持率はその合計に及ばないままだ。

「支持率はゼロパーセント台に甘んじている。このままもし、来年の参議院選挙に突入すれば、全国比例は当選ゼロという事態はありうる。このまま衆議院選挙に突入すれば、比例復活の枠はおそらくゼロだろう。3年以内にこの党の議員は半数以内に激減する。このままの道を行けば、国民民主党に未来はない。この党は消滅危惧政党だ」

 玉木氏より先に演説に立った津村氏は、まず危機感を強く訴えた。そうした危機感を抱くのは玉木氏も同じだ。

「結党から4か月。党勢は低迷を続けたままだ。試行錯誤を行ったが、結果に結びついていない。責任は私にある。お詫びを申し上げたい」

 その上で玉木氏は、強い決意を示している。

「我が党を政権にチャレンジする政党に育て上げるため、火の玉となって取り組んでいきたい」

 しかしいくら玉木氏が火の玉になってその身を焼き尽くそうとも、国民は冷ややかに見るだけではないか。

党員・サポーターの投票率はわずか30%

 実際に代表選は党員・サポーターにさえ関心を抱かれていない。国民民主党の党員・サポーターの数は7万4939人だが、郵送で投票されたのは1万9774票(209票の無効票を含む)で、ネット投票は3770票(85票の無効票を含む)。全有権者のうち30%程度しか投票していないことになるからだ。党員・サポーターですら関心を抱かない政党に、一般国民が関心を寄せる保障はない。

野党全体が体たらく

 玉木氏の口から「政権奪取」という言葉が出てくるものの、野党第2党が政権を獲得する可能性はゼロに近い。では野党第1党の立憲民主党には政権担当の能力や意思があるのかといえば、それも皆無だ。そもそも政権を狙うなら国民に広く門戸を開き、与党以上に「責任政党」をアピールしなければならないが、立憲民主党代表と幹事長の会見は月に1度しか開かれていない。しかも立憲民主党はセクハラ問題を起こした議員を複数人抱えるとともに、東京医大の裏口入学事件で逮捕された業者と関係があると報じられた吉田統彦議員をも擁しているが、政党としてその調査すら行っている様子もない。9月3日の会見で、枝野氏は吉田氏の問題をまるで他人事のように述べた。そうした無責任さが災いしたのだろう、最近の立憲民主党は支持率が低下傾向にある。

 健全な民主政治を実現するためには、規律ある強い野党が必要だが、いまの立憲民主党にも国民民主党にも、それを望むことはできない状態だ。ふがいない野党は存在する意味のない与党と同じ。国民はそれを必要とするはずがない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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