Yahoo!ニュース

自治会の都合を理由とした市全域での投票時間の繰り上げは許されるのか。

原田謙介政治の若者離れを打破する活動を10年以上
(写真:アフロ)

全国3割以上の投票所で投票時間の繰り上げの現状

18歳選挙権に関して、各自治体が色々な仕掛けをして、なんとか若者を中心に投票率をあげることができないかに腐心しているわけですが、それとは逆の動きもある。今に始まったことではないのですが、投票時間を短縮する自治体が多くある。

投票日は基本的には夜の8時まで投票所を開けておくという定めがあるが、各自治体ごとの判断で投票時間を繰り上げすることもよしとされている。

日経新聞の調査によると、

全国4万7905カ所の投票所のうち、34.6%の1万6594カ所が終了時刻を前倒しする。

出典:日経新聞

そうだ。選挙の執行にかけられる予算が減っているからという状況は理解しつつも、19時とか18時に投票所を閉めることはどうなのかと感じる点もある。総務省によると、午後6時~8時に投票した人は全体の1割ほどいるそうで、決して無視できない割合。

群馬県の都市部でも全投票所での投票時間の繰り上げは納得できない

選挙のたびに同様の記事を投稿しているのですが、群馬県は特殊。今回の選挙において、全県内935カ所のうちなんと約90%の846カ所で投票時間が繰り上げとなっています。なんでしょうかこの横並びな感じ・・・

たしかに、いわゆる町村部のような田舎であれば、夜間に出歩いて投票に行く人がかなり少なく、投票率も高い状況であるということであれば、投票時間繰り上げとう判断に合理性がないとはいえないかもしれませんが。。。

しかし、問題なのは前橋や高崎のような都市部においても全投票所が1時間繰り上げとなる19時に閉まるということは納得いかない。

議会や自治会からの要請は理由になるのか?

前橋市議会の中で、この投票時間の繰り上げに関してのやり取りがあり、行政側が以下のように述べている。

議会及び自治会連合会から合理性のある選挙の執行という要望をいただきまして、検討を重ねた結果、平成21年に執行しました県議会議員補欠選挙から投票時間の一斉繰り上げを実施いたしました。

出典:前橋市市議会議事録

さらに答弁は以下のように続く

議会は当然市民を代表するものと考えております。また、自治会のご協力なくして選挙は成り立ちませんものですから、自治会のご意見ということは住民のご意見だというふうに理解しているところでございます。

出典:前橋市市議会議事録

これは正直納得いかない。議会が市民の代表ということはまあよしとしよう。ただ、その議員を選ぶ選挙は45.54%の投票率であるということを何とかしようという気はないのか?

前橋市では国政選挙だけでなく市議会議員選挙においても投票時間の繰り上げを行っている。

また、自治会の意見が住民の意見であり、その理由が選挙の執行にあたって自治会の協力が必要だということも納得いかない。

おそらく選挙の際の立会い人などの係員としての自治会を介して、人を集めており、その自治会から不満が出たということなのだろう。

人を選挙のために集めること、あるいは高齢の方が長い時間座り続けることなどは正直大変なのだと思う。

自治会の方のおっしゃることはよくわかる。

だからといってそれをうけて「はい、投票時間を繰り上げます」というのはあまりにも安易。

行政として新たな発想や努力はないのか

自治会の構成割合の減少や高齢化はどの自治体でもあるのだろう。そのような状態があるうえで、どのような策をとるかが大事なのではないのだろうか?それを考えずに中心部の投票所も含めて全投票所を19時に閉じるなんてことがよいわけがない。

例えば、大学生や高校生を立会い人へと巻き込むなどの動きは全国的に起こっている。前橋にも群馬大を初め多くの大学があり、高崎にも高崎経済大学などがある。また、求人サイトなどを通じて立会い人を集めている自治体もある。

これは選挙管理委員会事務局だけの問題ではなく、市としての問題だ。市としてこのあたりの努力をやる気はないのだろうか?

繰り上げの自治体が減ったことは唯一の救い

最後にポジティブな話を書いて終わりにする。実は2014年の衆議院選挙の際にはみなかみ町以外の全自治体で投票時間の繰り上げがおこおなわれていたのだが、今回は他にも県内7自治体にて投票時間の繰り上げがなくなった。

英断をくだした各自治体に勝手ながら感謝をしたい。

若者と政治をつなぐNPO法人YouthCreateとしても引き続き頑張ります!

政治の若者離れを打破する活動を10年以上

1986年生まれ。岡山在住。愛媛県愛光高校、東京大学法学部卒。「学生団体ivote」創設。インターネット選挙運動解禁「OneVoiceCampaign」。NPO法人YouthCreate創設。「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動。大学非常勤講師や各省有識者会議委員などとして活動を広げていく。18歳選挙権を実現し、1万人以上の中高生に主権者教育授業を行う。文科省・総務省作成「政治や選挙等に関する高校生向け副教材」の執筆者でもある。2019年参議院選挙・2021年衆議院選挙、2024年衆議院選挙に立候補しそれぞれ次点で敗れる。

原田謙介の最近の記事