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「ホーム・アローン」マコーレー・カルキンが父に。2021年を彼はどう過ごしたか

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
先月、グッチのショーでモデルを務めたマコーレー・カルキン(写真:REX/アフロ)

 今年もまたクリスマスがやって来た。この時期になると、マコーレー・カルキンをつい思い出してしまう。

 オリジナルの公開から31年が経っても、「ホーム・アローン」はクリスマス映画の定番。この大ヒット作でカルキンが演じたのは、家族旅行に出かけようとしている時、出発のどさくさでひとりだけ家に取り残されてしまう少年ケビン。そこに留守宅を狙った泥棒がやってきて、ケビンは必死に家を守る。

 この映画が公開された時、カルキンは11歳。これをきっかけにハリウッドで最高の売れっ子となったカルキンは、この後、「マイ・ガール」「ホーム・アローン2」「マコーレー・カルキンのくるみ割り人形」などに立て続けに出演した。スケジュールが常に埋まっているため、20世紀フォックス(当時の名称)は、マコーレーに合わせて「危険な遊び」の撮影開始を9ヶ月も遅らせている。当時、スタジオのトップだったジョー・ロスは、「マコーレーほどチケットを売ることができる11歳の俳優はほかにいない。彼に主役をやってもらうのは作品にとって大事なことだ」と語っていた。

 そしてカルキンは、1994年の「リッチー・リッチ」で、800万ドルという、子役としては破格のギャラを手にするまでになる。しかし、その映画を最後に、カルキンは、14歳で事実上引退してしまうのだ。普通の役者ならばこれからキャリアを築いていこうとする若さで、彼は一線を退く決意をしたのである。

出演したテレビドラマが大好評

 そんなカルキンも、もう41歳。子供の頃、自分の意思に関係なく、がむしゃらに働かされた彼は、今、自分のペースで、のんびりと、自分が興味を持てる仕事をしている。今も推定1,800万ドル(およそ20億円)の資産があるとされるカルキンは、やりたいと思う仕事があればできる程度の、そこそこの名声がある状況が心地良いようだ。

 彼の現在のメインの仕事は、彼が立ち上げたウェブサイトとポッドキャスト「Bunny Ears」の運営。風刺、ジョークを中心としたサイトで、最近だと、たとえば「どの愛猫に遺産を残すか決める方法」などといった記事が掲載されている。

 だが、俳優としてもまだ活動中で、今年は、テレビドラマ「American Horror Story Double Feature: Red Tide」に出演した。ずいぶん長いこと姿を見ていないカルキンがこの人気ドラマに登場するということで、当初、ファンや批評家は疑心暗鬼だったが、初回が放映されると、彼はたちまちみんなのお気に入りとなっている。「Screenrant」のジョーダン・ウィリアムズは、「カルキンの演技は非常にリアル。彼は、このドラマに欠けていたヒューマニティを持ち込んだ」「彼はまるで子犬のように愛らしい。それはこのドラマのほかの登場人物にはないもので、だから彼がベル(フランシス・コンロイ)からひどい扱いを受けると、視聴者は彼を守ってあげたくなってしまうのだ」と、彼の魅力について書いた。

 そして今月22日には、彼が出演するシットコム特別番組「All My Friends」がAmazonプライム・ビデオで配信になった。これは、Amazonミュージックがプロデュースする「LCD サウンドシステム/ホリデースペシャル」の一部として企画されたもの。90年代ふうのシットコムで、登場するキャラクターは、LCDサウンドシステムのメンバー。カルキンは、ドラマーのパット・マホーニーを演じる。

 さらに、先月、カルキンはモデルとしてグッチのキャットウォークに登場し、人々を驚かせた。このショーが行われたのは、L.A.のハリウッド・ブルバード。カルキンのほかに、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」で注目が集まっているコディ・スミット=マクフィー、リドリー・スコット監督作「ハウス・オブ・グッチ」でパオロ・グッチを演じるジャレド・レト、映画監督ミランダ・ジュライなどが、ランウェイを歩いている。カルキンが身につけたのは、ハワイアンシャツにカラフルなプリントのジャケット、ベージュのワイドパンツ、サングラスというコーディネート。彼のリラックスした人柄にぴったりの装いといえそうだ。

 ステージ上だけでなく、客席も、グウィネス・パルトロウ、ビリー・アイリッシュ、セリーナ・ウィリアムズ、マイリー・サイラスなど、セレブでいっぱいだった。それらの人々とまるで引けを取らないのは、カルキンのスターパワーがまだ衰えていない証拠。最近、あまり人前に出ていないとはいえ、彼が出てくると、そこにはやはり特別な何かがあるのだ。

恋人との間に赤ちゃんが誕生

 しかし、今年、カルキンには、人生で最大にやりがいのある仕事が訪れている。彼と、一緒に暮らす恋人ブレンダ・ソングの間に、赤ちゃんが生まれたのだ。誕生日は4月5日、体重は3168グラム。男の子で、ダコタ・ソング・カルキンと名付けられた。ダコタは、カルキンの姉の名前。2008年、悲しくも交通事故で亡くなった姉に、カルキンはオマージュを捧げたのである。息子の誕生に際して、カルキンは米「Esquire」誌に対し、「とても嬉しい」というシンプルな声明を送った。

 カルキンとソングの出会いは、2019年の映画「Changeland」での共演。ふたりが一緒に購入した一軒家には、柴犬、鳥、魚、3匹の猫がいる。一番新入りの猫は、2年前のクリスマス、カルキンからのソングへのプレゼントとしてやって来た。名前は、サンタだ。

2019年、スポーツ観戦をするカルキンとソング
2019年、スポーツ観戦をするカルキンとソング写真:Splash/アフロ

「Esquire」は、ほかにも、愛し合うカップルの穏やかな日常について紹介している。家の門からドアまで続く置き石に黄色のペンキを塗ったのは、カルキン自身。一方で、ソングはしょっちゅうパンを手作りする。パンデミックのロックダウン中、アメリカではパンを焼くことに挑戦する人が増えたが、ソングはその前からやっていたそうだ。ガンの治療に通うソングの母がふたりの家に立ち寄った時には、カルキンが彼女のために野菜スープを手作りしたという。ベジタリアンである彼女のために、スープストックも野菜だけのものを使った。帰り際には、これまたカルキンお手製のポテトチップをお土産に手渡している。このポテトチップは、カルキンのご自慢とのことだ。

 そんな彼らは、今年、家族として初めてのクリスマスを迎える。毎年クリスマスが来るたびに、テレビの画面を通じてアメリカ中の家庭を楽しませてきたカルキンは、自分の家族のためにどんな特別なことを用意しているのだろうか。手作り好きな彼らのことだから、食卓にはふたりが作った美味しそうな料理の数々が並ぶのかもしれない。そして部屋には、サンタという名の猫をはじめ、たくさんのペットもいる。

 それは、絵に描いたような、幸せな状況。今、彼は、人生のそんなところにいるのだ。彼とご家族へ、メリークリスマス!

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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