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【大阪市北区】奇想天外でユーモアたっぷり!「歌川国芳展ー奇才絵師の魔力」がはじまりました。

草葉はるねライター(大阪市)

中之島美術館(大阪市北区)にて、12月21日(土)より「歌川国芳展ー奇才絵師の魔力」が開幕しました。武者絵や美人画、動物画、風景画など、幅広い題材の浮世絵版画や肉筆画が約400点も展示される大規模な個展です。

今回、記者内覧会を訪れる機会をいただきましたので、展示会の様子や私が感じた魅力をお伝えします。

「武者絵の国芳」によるダイナミックな世界

歌川国芳 (1797-1861) は、江戸時代の末期に活躍した浮世絵師です。歌川広重と同じ年に生まれました。幼い頃から絵が好きで、7、8歳の頃から人物描法を学んでいた国芳は、12歳のときに描いたものが歌川豊国に評価されて豊国に入門します。しかしそれから長い下積み期間がつづきました。

30歳代になった頃、当時江戸の庶民のあいだで流行っていた中国の小説「水滸伝」の英雄たちを描くと、これがブームとなり、人気の浮世絵師に!美人画や役者絵、風景画などが主流だった浮世絵界に、「武者絵」を人気ジャンルへと押し上げたことから、「武者絵の国芳」と呼ばれています。


そんな国芳の得意ジャンル「武者絵・説話」から、今回の個展ははじまります。

第1章 武者絵・説話の展示コーナーにて
第1章 武者絵・説話の展示コーナーにて


展示室に入るやいなや、迫力があって躍動感たっぷりの絵がずらーり!バチッと目が覚めました。

描かれた武者たちの表情はほんとうに男前です。英雄たちはもちろんですが、鬼や妖怪までもが生き生きしていて、なんとも言いがたい良い表情をしています。

《坂田怪童丸》天保7年(1836年)頃 個人蔵
《坂田怪童丸》天保7年(1836年)頃 個人蔵


金太郎が踏ん張って大きな鯉を抱える《坂田怪童丸》という絵も展示されています。これがまた見応え抜群でした。

思いのほか早い段階で有名な絵が並ぶコーナーにたどり着き、ワクワク感が高まります。

第1章 武者絵・説話 の展示コーナーにて
第1章 武者絵・説話 の展示コーナーにて


《相馬の古内裏》(左)と《宮本武蔵の鯨退治》(右)です。

《宮本武蔵の鯨退治》弘化4年(1847年)頃 個人蔵
《宮本武蔵の鯨退治》弘化4年(1847年)頃 個人蔵

3枚つづきの大画面にどどーんと描かれたこれらの絵は大迫力で、繊細な描写と色使いが美しい。かなりの満足感がありました。

元気があって美しい女性たち

「武者絵・説話」の次は、「役者絵」、「美人画」とつづきます。ダイナミックで勇ましい絵を見たあとに、穏やかな人物画を味わう流れは心地が良いです。

第2章 役者絵 の展示コーナーにて
第2章 役者絵 の展示コーナーにて


役者や遊女の姿の絵は華があって、とっても素敵。町娘の絵は、普段の飾らない日常を感じ取ることができます。本当に動き出しそうなほどに元気な姿です。国芳が描く女性たちは魅力たっぷりでした。

第3章 美人画 の展示コーナーにて
第3章 美人画 の展示コーナーにて

人物が主役の絵であっても、その脇に猫がいる絵が少なくありません。国芳は猫が大好きなのです。リラックスしきった猫の姿を見るたびに、心が和みます。

第3章 美人画 の展示コーナーにて
第3章 美人画 の展示コーナーにて

国芳の実家は染物屋ということがあって、国芳が描く着物も見どころの一つと言われています。

役者絵や美人画の展示では、着物の美しさを強く感じました。さまざまな柄・模様・色使いで繊細に描かれています。

笑いを誘う「戯画」の数々

国芳の得意ジャンルのひとつ「戯画」は見れば見るほど面白く、ずっとここにいたくなるほどでした。

第6章 戯画の展示コーナーにて
第6章 戯画の展示コーナーにて


得意ジャンルになったきっかけは、当時の社会状況。天保13年(1842年)に江戸幕府によって役者絵や遊女の絵が禁止されたことが影響しています。国芳ならではの反骨精神から、擬人化した動物たちの絵が多く描かれました。

展示室にも猫や鳥、狸、狐、金魚など、たくさんの擬人化した動物たちの絵が並んでいて、笑いを誘うものがたくさんあります。

《黒すゞめねぐらの借宿》 弘化3年(1846年)個人蔵
《黒すゞめねぐらの借宿》 弘化3年(1846年)個人蔵

遊郭に集うのは人間ではなく、すずめ。
すずめたちの着物・袴姿が味わい深く、こういう人いるよなあ…なんてことを思わせてくれます。


金魚を擬人化した絵では、金魚たちが尾ビレを足のようにして直立していました。これが滑稽で愛くるしい。胸ビレを手のようにしてうちわを持っていたりもします。金魚が描かれたうちわに馴染みがあるからか、絵を見たときになぜかしっくりくるのです。

国芳が描く猫はとびきり可愛い!

第6章 戯画の展示コーナーにて
第6章 戯画の展示コーナーにて

「歌川国芳展ー奇才絵師の魔力」は第1章 〜 第7章と特別展示(肉筆)から構成されていますが、その多くの場面で動物が登場します。中でも特に、猫が登場する絵をたくさん見ることができました。国芳は常に猫に囲まれて暮らしていたと言われますので、国芳の絵の中で当たり前のように猫が生き生きと暮らしていることに頷けます。

やっぱり猫が大好きな人が描く猫って、良い表情をしていて、とびきり可愛いなあと。たくさんの猫を愛でながら大勢の弟子の面倒を見ていたというストーリーにも魅力を感じ、国芳の人柄に親しみが湧きました。


会期中は、前期と後期で9割もの入れ替えがあり、前期と後期のそれぞれで約200点もの国芳作品を鑑賞することができるとのことです。これは楽しみですね。

遅咲きと言われながらも、武者絵や役者絵、美人画、動物、風景、戯画などあらゆる画題で才能を発揮した国芳の絵は、とてもユニークで刺激的でした。奇想天外なアイデアとユーモアであふれる歌川国芳ワールドを味わいに、ぜひ行ってみてください。

歌川国芳展ー奇才絵師の魔力
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
会期:2024年12月21日(土) 〜 2025年2月24日(月・休)
   前期:2024年12月21日(土) 〜 2025年1月19日(日)
   後期:2025年1月21日(火) 〜 2025年2月24日(月)
休館日:月曜日、12月31日、1月1日、1月14日
    ※1月13日(月・祝)、2月24日(月・休)は開館

ライター(大阪市)

純喫茶・大衆酒場・銭湯など、ノスタルジックな空間が大好き。懐かしくてときめく何かを求めて、西へ東へ散歩しています。

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