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消費量トップは米国で30.28兆立方フィート…世界各国の天然ガス埋蔵・採掘量の実情

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
最近はエコ的な観点からも注目されている天然ガスだが(写真:イメージマート)

化石エネルギーとしては石油や石炭とともに注目を集め、多方面で用いられている天然ガス。その埋蔵量や採掘量などの実情を、アメリカ合衆国のエネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)による提供値を基に確認する。

天然ガスは環境負荷が小さいこと、埋蔵量が原油と比べて多いこと、そして技術の進歩によってこれまで「採掘困難、採算が取れない」とされてきた「非在来型ガス」(例えばシェールガス…泥岩の一種である頁岩(シェール)に含まれる天然ガス)の多くが採掘可能となり、「確認埋蔵量」(現在の技術で経済的に採掘できる量。採掘そのものは可能でも採算が取れないものはカウントされない)が増加していることなどから、大いに注目を集めている。

それではまず天然ガス埋蔵量トップ10。EIAでは天然ガスに関して、採掘可能量では2020年分まで世界各国のデータを収録している。そこで2020年を含む5年間の推移グラフを作成した。

↑ 天然ガス埋蔵量トップ10(採掘可能量、兆立方フィート)
↑ 天然ガス埋蔵量トップ10(採掘可能量、兆立方フィート)

トップはロシア、次いでやや下がってイランやカタール、さらに下がってアメリカ合衆国、トルクメニスタン、サウジアラビア、中国が続く。この上位陣は長年変わりがない。

あまり聞きなれない国名として目にとまるのがトルクメニスタン。同国は位置的にはイランやアフガニスタンと国境を接しているが、(今件グラフでは領域外だが)2009年から2010年にあたり3倍近くの増加が確認されている。これは天然ガスそのものが突然増殖したのではなく、採掘可能な量が増えたことを意味する。同国では元々天然ガスを豊富に有していたが、昨今ではロシアだけでなくその他の周辺国(特に中国)との関係を深め、天然ガスの積極的な採掘・輸出を行っている(【外務省のトルクメニスタンのレポート】)。この積極的な開発意欲が、埋蔵量≒採掘可能量を増加させたと考えられる。

また今データは国単位での区分だが、仮に地域別で再構築すれば、ロシアの次に中東地域が位置する。原油同様にこの地域での埋蔵資源の豊富さを裏付けることになる。

次いで年間の生産量、そしてその生産量上位の国において同国の消費量を重ねたもの。エネルギー政策は国によってまちまちなため、消費量の大きさがエネルギー関連の技術の先端性を意味するものではないことに注意しなければならない。なお生産量は現時点で2015年分、消費量は2021年分までが収録されている。

↑ 天然ガス生産量トップ10(兆立方フィート)
↑ 天然ガス生産量トップ10(兆立方フィート)

↑ 天然ガス生産量トップ10(2015年)における、その国の消費量(兆立方フィート)
↑ 天然ガス生産量トップ10(2015年)における、その国の消費量(兆立方フィート)

埋蔵量トップのロシアは生産量では第2位に後退。代わりにトップにはアメリカ合衆国が入っている。このままでは早晩アメリカ合衆国の埋蔵分が底を突いてしまうのではないかとの懸念もあるが、先のレポート「世界の天然ガス埋蔵量の急増」にもある通り、「非従来型天然ガス」の開発が進んでおり(アメリカ合衆国の場合はいわゆるシェールガス)、これが需要を大いにカバーしている。また、このタイプのガスにより国内需要分のかなりを充足できる状況となりつつあり、同国のエネルギー政策に変化が生じていることにも注目したい。

あくまでも天然ガスのみ、しかも単純計算ではあるが、上記10か国において生産量から消費量を引いた結果をグラフ化したのが次の図。単純試算ではあるが、プラスならば天然ガスが余っている、マイナスならば足りない計算になる。

↑ 天然ガス生産量トップ10(2015年)における、その国の天然ガス過不足単純試算(生産量-消費量、兆立方フィート)
↑ 天然ガス生産量トップ10(2015年)における、その国の天然ガス過不足単純試算(生産量-消費量、兆立方フィート)

ロシアがヨーロッパ各国にガスを輸出している事情、中国が外交的良識を無視してまでガス田に執着する理由、アメリカ合衆国のエネルギー政策の変化、アルジェリアの外交的立ち位置の向上が透けて見えてくる数字ではある。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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